西東京市の子ども条例策定作業始まる 来年の9月議会上程目指して

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙子育て・教育 オン 2017年10月30日

子どもたちは遊び好き(ひよこ親子教室)

 西東京市が子ども条例制定に向けて動き始めた。丸山浩一市長は8月末に子ども条例(仮称)の内容などを子ども子育て審議会(会長・森田明美東洋大教授)に諮問。同審議会の条例検討専門部会(部会長・荒牧重人山梨学院大大学院教授)が10月に既に2回開かれた。来年5月をメドに審議会答申をまとめ、9月議会上程を目指して急ピッチで議論が進んでいる。

 児童福祉法改正が後押し

 第2回の専門部会は10月23日に開かれ、子ども条例を制定している主な自治体の資料を基に、荒牧部会長がそれぞれの条例の特徴や構成などを説明し、意見交換した。川崎市の2001年4月施行を皮切りに、都内では世田谷区、目黒区、豊島区などが続き、多摩地域では調布市、日野市、小金井市なども子ども条例などを作った。一覧で最も新しいのが長野県松本市が2013年4月に施行した「子どもの権利に関する条例」だった。

 このあと、子どもの実態や意見を明らかにするアンケートやヒアリング調査の対象や人数、方法などを話し合い、次回に事務局がまとめた案をたたき台に決めることになった。

 10月11日の総合教育会議で配布されたスケジュール案によると、専門部会が10月から来年4月までほぼ月2回のペースで計7回~9回開かれ、部会報告を基に5月ごろには審議会の答申をまとめる。6月下旬から7月にかけてパブリックコメントを実施、来年の9月議会に上程予定となっている。荒牧部会長も「スケジュールはタイトだが、関係者の意見を聞き、議論を進めたい」と話した。

 子ども条例制定は丸山市長が9月の西東京市議会第3定例会で明らかにした。
 丸山市長は「昨年5月の児童福祉法改正は子どもの権利擁護を理念として位置付けた」と述べ、「次世代を担うすべての子どもたちが健やかに育つための理念を共有する条例策定を諮問した。来年5月ごろに答申を受け、その後の早い時期の条例制定に向けて努力したい」と強調した。そのうえで「条例制定後の施策の推進が重要と考えており、児童福祉法改正の趣旨を踏まえ、市民のみなさまとともに子育ち子育ての環境整備を進めたい」と強調した。まず「理念」条例を制定し、その後の「施策」で具体化を図るとの考えだった。

 昨年5月に改正された児童福祉法は第1条で「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」として「子どもの権利」を明記した。そのうえで児童虐待の発生予防や迅速・的確な対応、自立支援などを保障するため、国民、保護者、国・地方公共団体の役割や責務を定めている。この法改正が、子ども条例制定の動きを後押ししたと見られている。

 

歌や手あそびを交えて楽しむパネルシアター(ひよこ親子教室)

 

 前市長時代に「子どもの権利条例」凍結

 しかし子どもの権利条例は10年ほど前から数年間、西東京市議会で論議され、紆余曲折を経て凍結された過去がある。市議会議事録をたどると、議会でも市民の間でも、「子どもの権利」をめぐって議論された熱気が伝わってくる。

 西東京市が誕生して間もない2004年、保谷高範市長時代に出来た「子育ち・子育てわいわいプラン」で「子どもの権利に関する条例策定」は「重点施策」とされ、検討が進んでいた。

 その後、民主党(当時)などが支えた坂口光治市長時代となり、2007年に「子どもの権利に関する条例」が子ども福祉審議会(現在の「子ども子育て審議会」の前身)に諮問され、2008年の中間報告を踏まえて2009年には、条例内容を盛り込んだ「要綱」が発表される段階まで進んだ。

 しかし内容が明らかになるにつれ、当時「野党」側だった自民党議員らが強く反対。「子どもを権利主体と認める」「子どもの権利を救済する仕組みとして第三者機関のオンブズパーソン制度を作る」などの考え方に異議を唱えた。

 2010年には子どもの権利条例の「再考を求める」陳情、「制定を求める」陳情がそれぞれ提出されるなど、市民側の意見表明も目立った。2011年3月の予算特別委員会で自民党が「子どもの権利条例にかかる予算の完全撤廃」を求め、坂口市長は結局、予算凍結、条例策定作業の休止に追い込まれた。

 諮問審議の休止を受けて、子ども福祉審議会は2012年2月、坂口市長に「報告」を提出した。その中で「アンケート調査や子どもヒアリングは貴重な資料であり、子ども参加と市民参加の手法とともに高く評価」した上で、「条例要綱は子どもの権利条約の趣旨と内容を生かし…西東京市における子どもの権利に関する条例の原型となるべきであると高く評価します」と述べ、啓発普及のために作成された「子どもの権利条例Q&A」も「子どもの権利や条例要綱の内容を理解する上で大変有益」とする異例の内容となった。

 新しい革袋の中身は

 それから数年。坂口市長のあとを継いだ丸山浩一市長は今年再選されて2期目。自民党は市長を支える柱になった。事務局は今回も子育て支援課だが、担当する職員は変わった。市議も変わったが、当時を経験した議員も少なくない。

 10年前に諮問されたのは「子どもの権利条例」だった。今回は「仮称」付きではあるけれども「子ども条例」となり、「権利」の2文字が消えている。10年ひと昔。2007年当時、子どもの権利に関する総合条例を制定していたのは、民間研究機関によると10自治体余りだった。それが昨年10月現在で44自治体に増えている(「子どもの権利条約総合研究所」調べ)。

 審議休止となった当時の子ども福祉審議会長だった森田教授は、これから条例審議を進める子ども子育て審議会の会長を務めている。しかし、専門部会のメンバーは一新した。それ以上に、子どもを取り巻く環境も変わり、国の児童福祉対策が子どもの権利条約の精神を汲んで具体策を進めている。時代は変わりつつある。西東京市の「新しい革袋」に、どんな中身が注がれるのだろうか。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について(平成28年6月3日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知、pdf
・児童福祉法等の一部を改正する法律案要綱(厚生労働省、pdf
・西東京市子ども子育て審議会(平成29年度第2回)(平成29年8 月23日)(西東京市Web
・西東京市子どもの権利に関する条例の策定について(中間報告、平成21年8月28日)(西東京市Web
・西東京市子どもの権利に関する条例Q&A(西東京市Web
・子どもの権利に関する総合条例一覧(子どもの権利条約総合研究所、pdf

 

(Visited 1,023 times, 1 visits today)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA