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安全、安心、今年はどうなる―戦争とアベノミクス―

By in コラム・百音風発 on 2018年1月1日

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第19回

師岡武男 (評論家)
 
 

 地球上どこに住んでいても、人々の何より先の願いは安全と安心の生活の確保だろう。日本という国の私たちにとっても、新年の計の基礎は先ずそれではないか。今年はその点でどうか。

 心配事の第一は「戦争」だろう。言うまでもなく、北朝鮮絡みである。もし戦争が起こるとすれば、米国による先制攻撃以外にはない。朝鮮側が、自滅戦争を始めるとは考えにくい。自滅戦争の愚かさは、旧日本軍閥の失敗でよく分かっているはずだ。

 米国の先制攻撃は、イラク戦争などで多くの実績がある。しかもトランプ大統領はしばしばそれをほのめかしている。もし実行すれば、今度は米国も「自滅」の道をたどるかもしれないが、暴走するかもしれない。

 日本にとって最大の問題は、安倍政権がその米国の暴走に相乗りする姿勢を示していることだ。安保条約で、日本に米軍基地がある以上、米朝戦争となれば米軍基地が攻撃されることは必然だが、相乗りするとなれば日本全土が攻撃対象になる。

 日本政府が、日本の安全のためにやるべきことは、米国の先制攻撃に反対し、暴走を制止することしかない。安倍政権に対して、国権の最高機関である国会が、それを要求し約束させることが、緊急の国民的課題だと思う。戦争の場合の対策も当然聞かねばならない。与党がだめなら野党は総力を挙げてそれを追求してもらいたい。そして国民も、国会まかせでなく、大きな声を挙げてもらいたい。

 戦争時代に生きてきた私にとっては、安倍政権の掲げるスローガン「国難」「生産性革命」「働き方改革」「人づくり革命」などは、かつての「非常時」「総動員」「総力戦」「産めよ殖やせよ」などとそっくりに見える。二の舞にならないよう、どうか皆さん、眉にツバつけて政府の言動を監視してください。

 次の心配は、アベノミクスの先行きだ。今年の日本経済は、アベノミクスの正念場になるだろう。

 昨年末、安倍首相は、政権5年の成果を自慢する言葉を並べたが、一方で目標のデフレ脱却、好循環経済へは「道半ば」であることも認めてきた。5年たっても道半ばか、という疑問に、もう決着をつけなければならない。

 自慢の理由は①成長回復の動き②雇用の改善③株高④賃金上昇、などである。たしかにそれらには一理あるものもある。しかし反論の余地が十分にあることも事実だ。一番厳しく批判されているのは成長と賃金の現実だ。エコノミストの植草一秀氏によると安倍政権時代の年平均実質成長率は1.4%で民主党政権時代の1.8%より低い。実質賃金は5%のマイナスになった。アベノミクスは、10年間で年平均2%の実質成長を目標にしているのだからまだ自慢できる材料ではない。

 実質賃金低下に至っては自慢どころではない。評論家の三橋貴明氏は、この点を指摘して「日本の憲政史上、最も国民を貧困化させた首相」と手厳しい。同氏は第2次安倍政権誕生の当初は熱烈な安倍支持者で「デフレに苦しむ日本において、リーダーとして安倍総理以上の適任者はいない」と絶賛した。しかし「今後の展開次第では、今回の成果は単なるうたかたの夢で終わってしまう」とも言っていた。今うたかたの夢になりつつあるのは、財務省の緊縮財政のためだと言う。

 雇用の改善については、「単に人口減少による人手不足」「低賃金の不安定雇用が増えたため」などの批判がある。株価上昇は金融緩和と企業本位の政策の結果であり、利益の多くは富裕層と外国投資家に吸い取られるだけだろう。

 これらの批判は、安倍首相も多分よくわかっているはずである。アベノミクスの成果を本当に誇るためには、批判に答えられる実績を作らなければならない。恐らく9月の自民党総裁選挙を目標に、全力を投入するだろう。

 ではどうすればよいか。国民生活に関する毎年の世論調査での「政府に対する要望」は「医療・年金等の社会保障の整備」「景気対策」「高齢者対策」の3項目がダントツの上位だ。やるべきことは、はっきりしているのである。まとめて言えば「国民生活本位の成長政策」だろう。

 そのためになにが必要か。なによりも「積極財政」である。安倍首相は、年末の経団連の会合で、賃金の3%引き上げなど、デフレ脱却への積極経営を強く訴えた。それは大いに結構だが、まず政府自身が積極財政に転換して範を示すべきだ。(了)

 

 

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 

 

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