柳泉園長期包括契約の取消しを 3市の住民が新たに監査請求
記者会見で住民監査請求を発表した3市住民ら（西東京市イングビル会議室）
西東京市、東久留米市、清瀬市のごみを共同処理する一部事務組合「柳泉園」（管理者・並木克巳東久留米市長）は昨年4月、焼却炉など処理施設（クリーンポート）の運営管理事業を15年間、総額約133億8600万円で任せる長期包括契約を民間企業と結んだ。しかしこの契約が「請負」なのに「委託」契約の手続きで進められたとして、3市の住民13人が2月13日、契約の取消しを求める住民監査請求を柳泉園組合に提出した。
組合議会の議事録などによると、2年前の2016年8月に入札公告し、2社が応札。昨年（2017年）3月13日に「住重環境エンジニアリング」が落札して3月28日に仮契約を結んだ。ところが同社は4月1日付けで「住友重機械エンバイロメント」に吸収合併され、4月28日の本契約の相手は同エンバイロメントだった。
本契約が迫った4月20日、柳泉園組合の臨時議会が急遽開かれ、長期包括契約の議会議決が求められた。何があったのか。
柳泉園クリーンポート（東久留米市下里4丁目）
組合管理者らの説明によると、これまで議会の承認を必要としない「委託契約」とみて手続きを進めてきたが、「関係機関へ確認したところ、本事業（クリーンポートの長期包括運営管理事業）は、委託契約であっても事業の内容に工事請負に該当する事業が含まれていることから、地方自治法第96条（議決事件）の規定に該当し、議会の議決に付するべき契約であることが判明した」（並木管理者）という。住民らはこれらの経過を見て「この契約は、請負契約と位置付けた」と指摘する。ごみ処理の管理運営だけでなく、多額の費用がかかる焼却炉の大規模改修工事などが問題になったとみられている。
契約などを定めた組合の条例は「議会の議決に付さなければならない契約は、予定価格1億5千万円以上の工事または製造の請負」となっていた。
しかも契約の承認を求める議案と同時に「関係市のみなさまに迷惑をかけた」として、事務局のトップである森田浩助役を1ヵ月10％減給の処分とする議案も提出された。議論の末、長期包括契約と助役処分の議案はともに可決された。
監査請求した清瀬市の阿部洋二さん、清瀬市議の布施由女さん、西東京市議の森輝雄さん、東久留米市の川井満さんらはこの日開いた記者会見で、「請負契約なら組合は入札の際、設計図書や工程表など『成果物』を示さなければならない」と指摘。「しかし組合は委託契約を前提に手続きを進め、大規模改修工事に必要な設計図面や設計書、構造計算書などを示さなかった」と言う。このため契約は「当初の入札に立ち返ってやり直す必要がある」のに、契約の議会承認と助役の処分だけで済ませたのは「明らかに契約手続きの瑕疵に相当する」と訴えた。
住民監査請求の記者会見
監査請求ではそのほか、仮契約と本契約が別会社だった点に関連して、仮契約した「住重環境エンジニアリング」の定款には、請負工事契約に必要な「廃棄物処理施設に関する事業」や「建設業」の記載がない、と指摘。そもそも「環境エンジニアリング」には仮契約する資格がなく、その仮契約を引き継いだ「エンバイロメント」との本契約も無効、と主張する。
落札の問題点も取り上げている。
議事録などによると、別の会社の入札金額は、落札した環境エンジニアリングより低かった。一般競争入札の場合、地方自治法によると、条例で定めた以外は、安い価格を提示した事業者との契約を定めている（第234条）。ところが組合の条例には、今回組合が進めてきた総合評価一般競争入札方式の規定や位置付けがないのに、価格の高い方を落札決定した。「これは実質的に随意契約であり、地方自治法に違反する」としている。
柳泉園組合総務課は「総務課は契約事務を担当しているが、監査事務局も兼ねているので立場上、監査請求に対するコメントはできない」（新井謙二課長）と述べている。
住民監査請求は地方自治法（第242条）によると、請求してから60日以内に結果を通知することになっている。
阿部さんら3市の住民は2016年11月に「契約締結の差し止め」を求めて監査請求。棄却された後、東京地裁に住民訴訟を起こして係争中。今回は2度目の請求となる。
（北嶋孝）
【関連リンク】
・柳泉園クリーンポート長期包括運営管理事業について（柳泉園組合）
・柳泉園組合クリーンポート長期包括委託審査委員会について（柳泉園組合）
・柳泉園クリーンポート長期包括運営管理事業の事業者選定に係る入札公告（柳泉園組合）
・平成29年第1回柳泉園組合議会臨時会（平成29年4月20日、PDF）（柳泉園組合）
