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滝山農業塾、15年目の春が始まる 資金、作業、収穫も協働で

By in みどり-環境, 交流・共生 on 2018年4月5日

塾生たち。前列右端が榎本塾長、後列左端が金子さん(塾長宅)

 春は畑が活気づく季節。作業に精出す人の姿もよく見かけます。今年15年目を迎える東久留米市の体験型市民農園でも、収穫を思い描きながらの農作業が始まりました。同市内に住む川地素睿(かわじもとえ)さんの報告です。(編集部)

 東久留米市滝山団地の近くに、体験型市民農園「滝山農業塾」がある。畑の持ち主で塾長の野菜農家4代目の榎本喜代治さんが2004年に始めた。専門家が塾生に教えるというより、参加者全員であれやこれや言いながら農作業を楽しむ。平均年齢60歳を大幅に超えた「塾」だ。今年は若い仲間も増えた。3月に雪が降ったり、急に暑くなったりと天候は不順だが、汗を流して収穫したホウレン草が毎週末の家族の食卓をにぎわせている。

 

ホウレン草をたくさん収穫できた

 

 「また、ホウレン草? 収穫するのはこれで3回目だよ」とすこしおどけた声に「贅沢いっちゃあいかんよ。野菜は高いんだから」と笑いながら応じる。そんなやり取りをしながら3月28日にはトウモロコシの種を植え、31日にはトマトの植え替え、キュウリの苗植えも終わった。

 「農業塾」は毎週水曜日と土曜日の開塾が基本。でも、近くの小学校からの依頼で出動することも多い。そういうときは、塾の取りまとめ役金子操さんが塾生に呼びかけて「義勇兵」を募る。

 

小学校の畑―これから植えます

 

 「塾」のモットーは「無理をしない」。「自分もみんなも農業をやったことはない。みんなで種を植え、草をむしり、収穫して、みんなで分け合うのが基本」と金子操さんはいう。

 ここは教科書やレシピはあまりないようだ。榎本塾長がやってみせて、みんなにやらせて、やり方がよくないと文句をつける。鍬の振り方や畝の作り方、ビニールの貼り方などを理にかなったやりかたで教えてくれる。暑い、寒い、疲れると文句を言いながら、みんなでやるのがいいようだ。

 一般の市民農園は一人が区画を借りるシステムだから、作業がつらくなると次の契約をしない人も多い。ここでは、なんでもみんなでやるし、失敗もけっこうある。「それでいいんだよ。どうすればいいか土が教えてくれる」と塾長。

 閉塾の危機もあった。
 相続問題がおこって畑の4分の3を売却することになった。榎本塾長も引っ越して田舎で農業を続けようかと悩んだこともあったが、「応援する」「続けてよ」の周りの声と「せっかく農作業を覚えたのに」「行くところがなくなる」との塾生の熱意に押され、残った150㎡の畑で「塾」を続けることになった。1年後には市内の南沢地区で耕作放棄地だった土地300㎡を借りることができた。いまは2ヵ所で作業している。

 榎本塾長は東京都や市から何度も表彰された野菜農家だった。「農業委員の時に体験型農業が話題になった。誰がやる? の声に、だれも手を挙げる人がいない。で、しょうがないから自分が始めた。どうせやるなら地元の野菜をもっと知ってほしいと、塾にした」

 「はじめは、5年ぐらい続けばいいかなと思っていた。市報で塾生を募集したら、農業を経験したことがない退職者ばかりで、どうなるかと思ったよ。でもいい人たちだったので。みんな集まる場所が欲しかったんだと思う。それで、前歴や肩書の話はしない、故郷の話や子どもの時の話はOKにした。とにかく気持ちよくみんなでやれるようにしたいと思ったんさ」

 今では、塾生が話しあいながら、全員が役割を分担し、資金も毎年更新しながら出し合う。

 

平等に分けて、来られない人に配る

 

 収穫した野菜をみんなで分け合う喜びは特別だ。トマトのネット張りの支柱を立てるとか、暑いときに雑草取りなど辛い仕事もあるが、みんなでやればなんとかなる。やるときはやるが基本はゆるい。塾生の代わりに夫人が来て作業するし、仕事の都合や身体の調子で当日参加できない人には、収穫を自宅まで配達もする。伝統野菜がつくりたいという声があれば、挑戦もしてみる。勉強もする。5月22日には種苗会社への見学会を予定している。

 「今考えると農業塾が自分の地域デビュ―になった。濡れ落ち葉にならなくてすんだねと妻にきついこと言われたけど、いまは野菜が高いので持って帰ると喜ばれる。二人の娘もそれをねらって、家族の分まで取りに来る」と笑う塾生もいる。

 収穫は楽しい。どう食べるのかも大事だと年2回は塾長宅で芋煮会や食事会を楽しむ。野菜を水洗いし、刻み、火をおこし、鍋にかけ、餅職人だった人がご飯を蒸す。それぞれ得意な作業をする。犬も庭を駆け回る。ご夫婦も孫たちも参加する。食べるほどに酔うほどに、歴史好きの榎本さんと坂本龍馬の手紙が発見された話などで盛り上がることもある。
 そんなゆったりとした「塾」だから、10年以上続いているのかもしれない。

 社会貢献もしている。
 「ここで農業やっているんだから、地域へ貢献しよう。近くの第九小学校の生徒にも野菜作りを楽しんでもらおう」と、子どもたちのために大根栽培もしている。収穫体験では、50~60人の小学生が2本ずつ大根を持って帰る。校内でも畑をつくり、塾生が野菜作りの指導もしている。団地内の市民センターで開かれる子ども食堂にも野菜を提供する。

 都市型農業は高齢化と後継者不足が問題と言われているが、自分が住んでいる住宅の近くにも、農地はある。自転車で行けるし、輸送コストもかからない。みんなで収穫して分配する。地域にも喜ばれる。それぞれの条件と得意を生かして資金面でもみんなで支える。そんな農業が、これからの社会の元気を作り出すかもしれない。
(川地素睿)(ひばりタイムス主催「市民ライターになる講座」課題作)

 

【筆者略歴】
 川地素睿(かわじ・もとえ)
 高知県出身。東久留米市在住20年。法律事務所、旅行業を経てNPO法人に参加する。もうすぐ地域に帰ってくる団塊世代。高齢者も含めた多世代が関わるまちづくりに関心がある。

 

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