ニワトリの絵

多摩からアートを発信 心のままに描いた「アールブリュット」展

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2018年5月10日

 街で美術展、作品展を折々見かけます。連休期間中、立川市で開かれた美術展は、企画も作品もともにユニークでした。どこが違い、何がユニークなのか。作品展の成り立ちや背景、作品の魅力を東久留米市の川地素睿もとえさんが報告します。(編集部)(写真は、阿山隆之さんが描いたニワトリ)

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 立川市の永井画廊立川ギャラリーで4月28日から5月6日まで「平和」をテーマした美術展が開かれた。会場には13人が30点近い作品を展示。日替わりで出品者のパフォーマンスも見ることが出来た。多摩エリアからアートを発信したいと設立された永井画廊1周年の企画だった。

 美術展の名称は「Art Brut TAMA2018 LA PAIX」。「Art Brut 」(アートブリュット)はフランス語で、加工されていない、ありのまま、生の芸術の意。学校などで専門的な美術教育を受けたことがない人や障がいをもつ人などが描く絵画や造形のこと。「LA PIX」は「平和」の意味だ。純粋な作品に出合うことで心の平和をとりもどしてほしいと選ばれたテーマだ。ほとばしる心のままに描いた作品は表現の可能性を感じさせ、ヨーロッパを中心に世界でも評価が高い。

 

 

 多摩地域で2015年、アートを通じて「障害ある人もない人も共に生きる社会」をめざして「アールブリュット立川実行員会」(松嵜ゆかり会長)が発足。同年10月には立川駅前の伊勢丹で展示会を開いた。今回は永井画廊(永井龍之介代表)が主催し、アールブリュット立川実行員会などが協力、西立川商店街振興組合が後援した。

 JR青梅線西立川駅から徒歩約7分。ビル4階の永井画廊で5月3日、出品者の阿山隆之さんがパフォーマンスを披露した。厚みのある板に書かれた下絵に焼きペン(バーニングペン)でグイグイと描いていく。熱で焦げた迫力ある線がたちまちフクロウになる。細かい羽毛も書き込んでいく。100色以上ある色鉛筆で青、赤、緑、橙、水色などの色をすばやく置く。いっさい、ためらいがない。多彩で強い色がどんどん置かれて、できあがるとバランスがとれている。

 

ふくろうを描く阿山隆之さん

 

 阿山さんは普段は八王子の障害者通所施設でガラス細工のトンボ玉をつくっている。
 会場に居合わせた阿山さんのお母さんは、「昔から絵が好きで紙に描いていた。材木屋さんが店をたたんで廃材を持ってきてくれた。それに絵を描くようになった。色がつきはじめたのは10年前。どんな木にも絵を描く。色がつくと廃材に命をふきこんでいるようで、わたしもびっくりすることがある」と話す。会場に置かれている丸い木材に描かれた絵は、湾曲をいかして数匹の魚が泳いでいた。

 

太鼓をくり抜いた木にあわせて絵を描く

 

 アールブリュット立川実行員会の諸角知子副会長は美術の教員だった。それを生かしてほしいと松嵜ゆかり会長に誘われて、2015年退職と同時に実行委員会に参加した。「百貨店で展示会を開くのに資金はゼロ。協賛金集めから始まった。でも、びっくりするくらい多くの人が支援してくれて成功できた。展示品を販売することで就労にもつなげたいと会長とも話している」と言う。

 作品についても「一般の展示会は公募が多いが、わたしたちは埋もれている人も掘り起こしたい。いい作品があると聞くと自分たちで探し歩いた。展示作品は障がいがあろうがなかろうが、いいものはいい。感性で選ぶ」「今回は商店街 が後援してくれた。わたしは美術教師なので、まちにアートを広げたい。ワークショップだとか実験工房などをやりたい」と話した。

 

諸角知子さん(左)と坂村宗紀さん(右)

 

 実行委員会の中では、オリンピック、パラリンピックがある2020年に、アートパラリンピック開催につなげたいとの話も出ている。

 この企画を後援している西立川商店街振興組合の坂村宗紀理事長は、「このつながりをきっかけに立川でアートのあるまちづくりをしていきたい。それぞれの商店街は頑張っているが、意見交換できる場がなかなかない。地域全体で交流する企画も一緒に考えていきたい」と話す。
(川地素睿)

 

【関連リンク】
・永井画廊立川ギャラリー 1周年記念 Art Brut TAMA 2018 LA PAIX(永井画廊
・アール・ブリュット立川2017(同実行委員会

 

川地素睿
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