都心部にある強みを生かせ 下野谷遺跡記念シンポジウム

投稿者: カテゴリー: 暮らし文化 オン 2015年12月17日
下野谷遺跡のキャラクター、したのやムラのしーたと のーや

下野谷遺跡のキャラクター、したのやムラのしーた と のーや(筆者撮影)

 今年3月に国史跡に指定された西東京市東伏見にある下野谷遺跡の記念シンポジウム「縄文時代の大集落遺跡を探る・護る・活かす」が12月13日(日) 、保谷こもれびホールメインホールで開かれた。全国でも有数の縄文遺跡「三内丸山遺跡」「御所野遺跡」「馬高・三十稲場遺跡」を持つ各自治体の担当者などを迎え、遺跡の価値や魅力、将来に受け継ぐ知恵と工夫などについて学んだ。

 はじめに西東京市の丸山浩一市長が、下野谷遺跡の活かし方を市民のみなさんと一緒に学びたいと挨拶。その後、早稲田大学名誉教授の菊池徹夫さんの記念講演が行われた。

 菊池名誉教授は「北海道・北東北の縄文遺跡群世界遺産登録推進専門家委員会委員長」で、「縄文文化の人類史的な価値-世界遺産登録をめざして-」をテーマに講演した。日本全国に広がる縄文文化は世界遺産に登録されるべき価値を持つものだと前置きした上で、先人の生活や縄文人の生命を慈しむ豊かな心には、現代人が学ぶべきものが多いと語った。

 続いて各自治体の遺跡の紹介や活動などについて基調講演が行われた。
 まずは、西東京市教育委員会教育部社会教育課主事の亀田直美学芸員が、東伏見6丁目に広がる下野谷遺跡は、関東で有数の集落跡が、都心部で良い保存状態で残っていることが魅力、と説明し「今後どのように育てていくか、下野谷遺跡公園と土器や資料が保存されている郷土資料室が離れた場所にあることについても意見がほしい」などと話した。

 

亀田直美さん講演600

下野谷遺跡を説明した西東京市教育委員会の亀田直美さん(筆者撮影)

 

 青森県にある「特別史跡 三内丸山遺跡」は、広さ約42万平方メートルある日本を代表する縄文遺跡。2000年に国の特別史跡に指定。2003年に出土遺物1958点が重要文化財に指定された。三内丸山遺跡保存活用推進室文化財保護主査の岩田安之さんは、毎年30万人前後の見学者をボランティアガイドが支え縄文体験会などを実施。継続的な発掘調査を重ね縄文文化全体象の研究材料にしている、と説明した。

 岩手県の「史跡 御所野遺跡」は約7万5000平方メートルに1000棟以上の住居跡がある。一戸町教育委員会世界遺産登録推進室長などを兼務する高田和徳さんは、さまざまなボランティアの会が清掃活動やイベントを行い町民一体となり世界文化遺産の登録をめざしていると話した。

 新潟県の「史跡 馬高・三十稲場遺跡」は1990年に重要文化財の指定を受けた「火焔土器」などが有名。長岡市の科学博物館長小熊博史さんは、ガイダンス施設である「馬高縄文館の活用方法などについて紹介した。

 講演会後のシンポジウムでは、文化庁記念物課調査官の水ノ江和同さんが司会を務め、基調講演者4人がパネラーとなり意見交換した。

 下野谷遺跡公園を初めて訪れた自治体担当者3人はいずれも、住宅街の中にある遺跡に驚いたようすで、人が多い場所なので残し方もいろいろあると興味を示していた。

 下野谷遺跡公園と郷土資料室の離れた立地に関しては、公園近くに簡易な資料室を作り、本格的な施設へは専用バスで移動する。反対に資料室は遺跡現場近くにおいて出土品の紹介をする方が見学者が理解しやすい、などの意見もあった。

 下野谷遺跡に必要だと思うものについて、岩田さんはリピーターを増やすために現場や資料館の内容を変えながら興味を育てていくこと。高田さんは石神井川に沿う崖にツルを這わせて、ツル細工体験をするなど、遺跡の中で体験材料を育ててはどうか。都心部にあることを強みに変え、住宅が見える程度に栗の木林など作り栗拾いなどできたら楽しい。小熊さんは都心部周辺では見かけない縄文時代の竪穴式住居を作るとアピールになる。などさまざまな意見を述べた。

 これらの提案を受け亀田さんは、「都心部の遺跡でもアイデア次第でできることがたくさんあることが分かった」と笑顔で語った。

 

会場ロビーに展示された勝坂土器(筆者撮影)

会場ロビーに展示された勝坂式土器(筆者撮影)

 

 丸山市長は「今後作られる下野谷遺跡の保存活用に関する計画を作るのにとても参考になった。市民の意見を聞きながら進めていきたい。『国史跡指定はゴールではない、始まりだ』ということを肝に銘じている」と話した。会場を訪れた約470人の聴取者からは大きな拍手が沸きおこった。

 シンポジウムを終え、参加した男性のひとりは「各地の縄文遺跡の話も聴けて新鮮で興味深かった。これからも下野谷遺跡を応援していきたい」と感想を述べた。
(柿本珠枝)

 

【関連リンク】
・国史跡指定記念シンポジウム『縄文時代の大集落遺跡を探る・護る・活かす』を開催します!(西東京市Web

 

【筆者略歴】
柿本珠枝(かきもと・たまえ)
 旧保谷市で育ち、現在西東京市田無町在住。1998年(株)エフエム西東京開局から携わり、行政や医療番組、防災、選挙特番など担当。地域に根差した記者としても活動している。

 

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