小さな子と一緒に憲法を学ぶ サークル「けん・けん・ぱ」の挑戦

投稿者: カテゴリー: 暮らし文化 オン 2016年2月3日
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「憲法カフェ」のチラシ

 西東京市には6つの公民館があります。そのうち5つに保育室があり、各館それぞれの内容で保育付きの講座を行なっています。2015年に田無公民館で行なわれたひとつが「毎日を楽しんでいますか?〜憲法を通して、今を考える〜」でした。全10回のうち、弁護士とともに学ぶ回では、判例を憲法の観点から考え、時には自分の意見を抑えて反対の立場からディベートする、といった形で、互いに意見交換しながら学習が進められました。私も参加していましたが、途中で何度も見過ごしていた問題点に気づき、はっとしました。

 非常に楽しく、深い学びのある講座だったので、終了後にも学ぶ場を続けてゆきたいと考えた10人のメンバーと共に「けん・けん・ぱ」というサークルを作りました。「憲法のけん・喧々囂々のけん・ぱっと笑顔になる→憲法を下地に、笑顔で意見交換する」という意味が込められています。

 しかし、公民館が組んでくれたプログラムに沿って学ぶのではなく、自分たちで学ぶ形を考えるというのは、なかなか大変でした。憲法について学ぶというと、改憲問題や戦争放棄についてを学ぶのかと思われそうですが、そうした大きなことより、くらしの中にあることについて学んでみたい、と私は思いました。これはメンバーも同意見だったようです。そして、メンバーが他市の市民サークルが行なった憲法カフェに行った話を聞いたりしながら、どんな形が「けん・けん・ぱ」らしいのかを探しました。憲法カフェにはスタイルがいろいろありますが、お茶やお菓子を手に憲法について話し合う、という点が共通なようです。

 まずは、一緒に参加する子どもがすごしやすく、親も話し合いやすい部屋を借り、幼稚園のお迎え時間までに話をまとめるなどの工夫が必要になりました。ふだんは幼稚園に通っている私の子も、冬休み中の打ち合わせには同席。自分の子どもが遊んでいる中での話し合いは気が散るものだと知りました。

 そうした中で、講座でお世話になった湯山花苗弁護士に来ていただき「マイナンバー」をテーマとした「憲法カフェ」をやろうと決まりました。そして、私たちと同じような、お子さんを持っている人に参加してもらいやすいように「ママパパ憲法カフェ・マイナンバーと憲法」とタイトルをつけました。

 しかし、チラシ・ポスター配布が年末年始にかかったこともあり、参加希望をいただけるかどうか、本当に気をもみました。メンバーが直接お誘いした方が来られたり、公民館の方が有給を取って参加してくださるなど、ありがたかったです。

 

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ママパパ憲法カフェ:ホワイトボードにまとめていくことで、意見の相違点が一覧できました。(提供=けん・けん・ぱ)

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ママパパ憲法カフェ:子どもたちはおもちゃを広げて遊んでいました。時々、ここを離れて、お母さんの膝の上に来る子もいました。(提供=けん・けん・ぱ)

 

 田無公民館の集会室で迎えたその日・1月22日は、インフルエンザの洗礼を受けての欠席などもありましたが、参加者は18名、子どもは3人となりました(サークルメンバー含む)。子どもも大人も同じ部屋でしたので、保育ボランティアの方もお願いし、メンバーが持ち寄ったおもちゃや絵本を用いて子どもたちをみていただきました。

 まずは「憲法とは何か」について、〈明日の自由を守る若手弁護士の会〉が作成した紙芝居を上映。講座中にも見せていただいたものですが、改めて「憲法とは、国を戒めるための法」であると学びました。

 その後、3つのグループに分かれて、テーマである「マイナンバー」について、各自の持っている疑問をまとめ、グループごとに発表。ホワイトボードに書かれた点について、湯山弁護士がそれぞれ憲法から考えた場合の問題点をあげてゆきました。たとえば「マイナンバーを教えないと給料を振り込みません、という会社は、憲法25条の生存権で問題がありますね」といった具合です。

 私が講義を受けていたときに惹き付けられ、学び続けたいと思ったのは、こうして憲法と日常生活を結びつけて説明されたときでした。憲法は日常生活の中にも生きている、と、ただ言われても、ぴんとこないけれど、具体的な場面と憲法との関係をこうして示していただくと、なるほどと思えるからです。法律のプロの視点になるほど、と思う事もしばしばでした。初めてこうした考え方に触れた参加者にとっても、新鮮な驚きと発見があったようです。

 続いて「諸外国でのトラブル」「マイナンバー占いが違法とは?」「災害時に役立つと言われるが?」という3点について、資料を確認したりしながら、意見を出し合いました。最後には「自分の考えを押さえて、グループごとに賛成・反対の立場で意見を出してもらいます」というディベートタイム。さまざまな意見が飛び出し、事後のアンケートにも「自分では考えもつかなかった意見が出て勉強になった」「グループで自由に意見が出せて良かった」等、好評でした。

 子どもたちが途中で泣き出したり叫んだりという賑やかな中での学習となりましたが、それについての苦情はなく、嬉しく思いました。お茶やお菓子と共に話そう、というカフェのスタイルも良かったのだと思います。今後のテーマについても多くの意見をいただけましたし、また開く時には連絡が欲しいという方も多く、ほっとしました。

 

打ち合わせ風景:子どものおもちゃは必需品です。(提供=けん・けん・ぱ)

打ち合わせ風景:子どものおもちゃは必需品です。(提供=けん・けん・ぱ)

 

 小さな子と一緒の毎日は、ゆっくりじっくり考える時間を取ることが難しい状況です。でも、誰かと一緒に学ぶ・話し合うということで、ひとりでは気付ない視点や、到達できない深い学びへの足がかりを得ることができます。その場を私はとても大切に思いますし、今後も、少しずつでも学び続けて行きたいと思っています。そして、共に学べる仲間と出逢えたことに、感謝しています。
(徳丸由利子)

 

【筆者略歴】
徳丸由利子(とくまる・ゆりこ)
 茨城県勝田市(現・ひたちなか市)に生まれる。西東京市に住んで10年近く。息子の誕生をきっかけに、子どもがいるからこそ気づくことを活かそうと、母親によるライターチーム「ままペンシル」に参加している。現在、息子は市内の幼稚園へ通っている。

 

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