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本を読んで感想リレー 東久留米市立中央図書館の「みんなの本棚」

By in 歴史・文化, 交流・共生 on 2016年2月25日
利用者の感想カードが本と一緒に展示された(2月13日撮影、東久留米市立中央図書館)

利用者の感想カードが本と一緒に展示された(2月13日、東久留米市立中央図書館)

 図書館で本を借りて読むだけではもったいない。読んで感想を書き、次の読者が感想をリレーして書き継ぐ-。東久留米市立中央図書館は昨年末から今年2月半ばまでの2ヵ月間、「みんなの本棚」という感想リレーイベントを実施した。利用者が投稿した300件を超える感想を短冊形式のカードに仕立て、蔵書に挟み込んで読者と読者のつながりを手助けしようという珍しい試みだ。

 公開書架のところどころに、「みんなの本棚」と書かれたピンクのカードが頭を出している。手にとってみると「わたしがおすすめするのは、この本です」とあり、書名や著者名のほか、「このほんのここがよかった」と感想やコメントを書くスペースがある。新刊本に差し込まれているスリップ(伝票)の大型判。図書館では「おすすめ本カード」と名付けている。

 

書棚に目立つピンクのカード(東久留米市立中央図書館の公開書架)

書棚に目立つピンクのカード(東久留米市立中央図書館の公開書架)

 

 「20世紀に活躍した報道写真家の撮った、読書する人たち。老若男女、さまざまなところで、さまざまなスタイルで…」と短いコメントが載っているのは、アンドレ・ケルテスの写真集「読む時間」(創元社)。二つ折りのカードを引っ繰り返すと「古い写真の中に一人一人にとって『読むこと』のかけがえのなさが伝わってきます。…ゆっくり一枚一枚見ていくと、じんと涙が出ます」と次の利用者の感想が書き込まれている。写真集だけでなく、読み物や絵本、実用書の書架にもピンクのカードが目に付く。

 「みんなの本棚」活動は2013年に始まった。当初は、読者に好きな本の感想を書いてもらい、みんなの本棚をつくろうという図書館発信のイベントだった。好評で翌14年も続けた。15年度は一歩進んだ。

 東久留米市立図書館の岡野知子図書館長は「夏休みに子ども向けお薦め本の展示や、健康や震災などの特集展示も実施しました。こんな本がありますよ、と図書館が発信する機能は大事です。これまでの『みんなの本棚』も、利用者の投稿を図書館がまとめる形でした。今回はそこから踏み込んで、利用者も加わった双方向の交流事業にしてみたかった」と感想リレー版の狙いを話している。利用者と図書館、読者と読者の交流がキーワードだった。

 利用者の好きな本、イチ押しの書物は分かった。でもまだ、リレーの種が撒かれた段階。岡野さんは「『みんなの本棚』も3回目なので、書き込む市民は年々増えてきました。今回はカードを作成して本に挟み、やっと書棚に戻し始めたところです。その本が貸し出され、感想がどうつながるか。カードを無くす人もいるかもしれません。これから息長く状況を見守っていきたい」とフィードバックの準備も怠りない。

 本の感想はネット上にあふれている。特定の話題で、遣り取りがリレー状になる場合もある。しかし図書館が「感想リレー」を仲立ちする貸出作業は、時間もエネルギーも必要だから、どこでも簡単に出来ることではない。「東京図書館制覇!」サイトを運営し、都内の図書館活動に詳しい竹内庸子さんに聞くと「お薦め文をしおりにする企画は、小金井市や板橋区にも実施している図書館があります。しかし東久留米市立中央図書館のように、『感想を書き足す』仕組みにしている例は珍しいのではないでしょうか」という。

 「みんなの本棚」活動とともに、東久留米市の図書館はテーマごとに3冊の本を入れた「福袋」を年末年始に貸し出した経験がある。昨年5月には中央図書館が、一箱にお気に入りの本をまとめる「ひとハコ図書館」企画を軸に「図書館フェス2015」を開催。今年も「ひとハコ図書館」企画を実施予定で、2月13日にプレ企画として、参加者同士がおすすめ本の情報交換をする会合を開いた。利用者にさまざまな形で読書の機会を提供する試みが続いている。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
東久留米市立図書館
・図書館フェス2015「ひとハコ図書館
・東京図書館制覇!(Webサイト版blog版

 


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