「らい予防法」企画展始まる

投稿者: カテゴリー: 健康・福祉 オン 2016年4月30日
企画展チラシ

企画展チラシ

 らい予防法が廃止されてから今年は20周年に当たる。この節目の年に、国立ハンセン病資料館(東村山市青葉町)が4月29日(金)から企画展「『らい予防法』をふりかえる」を始めた。隔離と入所を強いた「予防法」の内容、病気が治るようになっても廃止されなかった経緯、廃止に立ち上がった人たちの動き、回復者、関係者の証言などが、90点余りの展示資料とビデオ映像で明らかにされている。

 「らい予防法」は1953年(昭和28年)に成立した。戦前の隔離政策を引き継いで患者を療養所に収容。退所規定がなく、生涯閉じ込められることになる。戦後、特効薬が登場し、適切な治療で治る病気になったのに、この予防法に基づいて強制収容政策は続けられた。

 廃止されたのは1996年(平成8年)。その後「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟が提起され、2001年(平成13年)に熊本地裁で原告勝訴の判決が下された。国は控訴を断念。入所者に謝罪し、入所者らの名誉回復、補償、社会復帰などに取り組んだ。

 企画展では、「らい予防法」全文が印刷され、訪れた人が入手出来る。その条文をパネルで分かりやすく解説。問題点をカラー表示するなど工夫されている。

 

企画展示室の入口(国立ハンセン病資料館)

企画展示室の入口(国立ハンセン病資料館)

 

 予防法廃止を受け止めた入所者らの短歌や俳句も展示されている。「星涼し療養の身のかせ解ける」と詠んだ高志秀男さん(星塚敬愛園)、「癒えてなお行く家なき身の法廃止」と綴った平塚美枝子さん(長島愛生園)ら20人の入所者作品が並んでいる。

 入所者や関係者20人が語った証言のビデオ映像(約45分)も会場のコーナーで視聴できる。予防法廃止10年後に収録したものを、今回あらためて編集した。

 企画展は7月31日まで。6月22日から7月3日の期間、国立公文書館から「らい予防法」をはじめ、戦前の「癩予防法」などの原本を特別展示する予定。

 同資料館学芸員で、今回の企画を担当した稲葉上道(たかみちさんは「私たちはふだん、法律を余り意識せずに暮らしています。しかし患者さんにとってこの法律は、生涯を左右しました。法律が間違うと、人生が重大な影響を受けるのです。らい予防法を知ってもらうことで、法律の意味と影響を、少しでも意識していただけたらと思います」と話している。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・2016年度春季企画展のご案内 「らい予防法」をふりかえる(国立ハンセン病資料館
・ハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けての内閣総理大臣談話(平成13年5月25日)(厚生労働省
・らい予防法の廃止に関する法律(平成8年法律第28号)(厚生労働省
・わたしたちにできること~ハンセン病を知り、差別や偏見をなくそう(厚生労働省
・ハンセン病に関する情報ページ(厚生労働省

 

北嶋孝
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