まちづくりフォーラムで「企画部出前講座」 庁舎統合と3館合築を話し合う

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙環境・災害 オン 2016年5月26日

 中央図書館・田無公民館・市民会館の3館合築複合化計画の再考を求めて活動してきた市民団体が5月10日、第4回「まちづくりフォーラム」を開きました。これまで3回のフォーラムでは、市議会に請願や陳情を出した人びとや3館に関係する文化関係者らが意見を述べる場を提供。まちづくりの視点から公共施設の配置やあり方を話し合ってきました。今回は、計画立案の要になる西東京市企画部の「出前講座」。どんな展開になったのか、同フォーラムの田村ひろゆきさん(向台町)と柳田由紀子さん(柳沢)に報告してもらいました。(編集部)

 5月10日(火)、田無庁舎202・203会議室にて「第4回まちづくりフォーラム 公共施設はどうなる? 西東京市企画部出前講座」が行われました。

 「まちづくりフォーラム」は、昨秋表面化した三館合築問題(田無公民館・中央図書館を市民会館の場所に移し合築する計画案)をきっかけとして生れた教育・文化施設のあり方や庁舎問題の検討・提案をする個人・団体の集まりです。

第4回まちづくりフォーラム(田無庁舎市民会議室)

第4回まちづくりフォーラム(田無庁舎市民会議室)

 

 出前講座依頼の経緯

 三館合築の見直しにより、「公共施設等総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~」公共施設の適正配置に関する基本方針・公共施設保全計画策定も先送りされ、平成28年度まで検討継続となりました。

 市民には唐突に浮上した三館合築ですが、経過や中身等を検討する中で、この計画が専ら国の政策に沿った行財政改革の視点から立案されたものであることが分かってきました。今、国の要請で、「公共施設等総合管理計画」を策定中ですが、公共施設総量抑制を推進する国策に沿った中身になっています。

 市は昨年8月に「公共施設等総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~(案)」を公表し、説明会やパブリックコメントを募集し、12月に決定。先立つ11月に、パンフ「みんなで考えよう!西東京市の公共施設」を発行し、市民とともに問題解決に向けた検討を進めると広報しています。

 そこで、庁舎問題を含め公共施設に関する市の説明を聞くことになり、市職員が講師となる出前講座の企画となりました。

 企画部の説明

 雨模様、平日の夜間という条件の中、20数名の市民と企画部職員4名が参加。講師の企画部主幹高橋さんと企画部企画政策課主査直井さんから30分間程説明を受け、その後熱の入った質疑が2時間強続き、午後9時45分に終了しました。

 初めに高橋さんが説明資料のパンフ「みんなで考えよう!西東京市の公共施設」の内容を紹介。合併して公共施設面積が増えたこと、公共施設の劣化が進んでいること、人口・財政・維持管理費の将来推計から、今後の公共施設の考え方として、平成45年に「10%」減らす目標を立て、その方法として、複合化、統廃合、用途変更があると説明。公共施設の一番の課題は庁舎統合整備である、などという内容でした。

 次に、直井さんから庁舎統合に関する検討の経緯と仮設庁舎整備案の検討比較表の説明がありました。

合併時の一市二庁舎体制が平成19年度から検討課題となり、平成22年度「公共施設の適正配置に関する基本方針」、翌23年「同基本計画」策定、24年度「本庁舎整備基礎庁舎報告書」作成、25年度「庁舎統合方針(素案)」作成、26年度「庁舎統合方針(案)」作成、27年度に決定の予定が28年度までに延びたとの経緯と仮設庁舎4案について、場所や利点、課題、整備コストなど簡単な説明がありました。
その後の質疑の主な内容は以下のとおりです。

 保谷庁舎の老朽化とは

 まず、庁舎問題における喫緊の課題とされる保谷庁舎老朽化に関し、建物劣化度を質すことから始まりました。

 状況説明を補って報告すると、保谷庁舎は耐用年数残り2年、庁舎解体後の機能の受け皿として、今年度中に仮設庁舎建設が提示されていることから、庁舎の老朽化は切迫しているようです。しかし、市の簡易劣化診断評価における判定(「西東京市公共施設等総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~」16頁)で、建物の部位(外部、内部、外構、空調機器・電気設備等)の状態を健全度Ⅰ~Ⅴに分け、健全度が悪い評価がどの位あるかで劣化状況をA~Eまで5段階評価しています。諸施設の劣化度は「公共施設保全計画」資料に一覧があり、保谷庁舎の建物劣化度はAです。Aは部分劣化(小)または健全という状況なので、すぐにも取り壊さなくてもよいのではないかとの疑問があり、保谷庁舎の建物劣化状況を確認しました。

 すると、「劣化度Aは平成20年度の調査であり、25年度の見直しでEになった。それに基づき今、公共施設等総合管理計画策定中である。平成25年度の調査は公表されていないかもしれない」との答えでした。5年でAからEになる急落に驚きます。

 急落の理由を尋ねると、調査は職員によるもので、最初の評価が問題だったとの釈明でした。Eとした平成25年度調査内容や結果を公表しない理由は所管が違うので分からないとのことです。平成25年度調査結果に基づき公共施設等総合管理計画策定中であるというのにその調査結果を把握していないということはあり得ず、単に勉強不足なのかもしれあません。建築に明るい方が診断マニュアルは国か東京都のものかと突っ込むと、市独自のものとの答えでした。これでは市民に内緒で、身内で取り壊しを急ぐためにランクダウンしたのではとも思えてしまいます。

 庁舎のような鉄筋コンクリートの法定耐用年数は50年とされています。これは税法上設けられた減価償却資産の耐用年数に基づくもので(総務省独自の改定モデルも同年数)、実際の建物の状態とは異なります。したがって仮庁舎を早急に建てねばならぬほど劣化しているのかどうか、専門家の診断が必要ではないでしょうか。

 合築複合化案は財源確保優先?

 次に、昨年度見送られた三館合築複合化案について。
 三館が抱える施設課題は以前から指摘され、平成23年には合築も選択肢として視野に入れていました。平成25年の本庁舎整備基礎調査報告書では、保谷庁舎統合案と新たな用地統合案の中で、田無庁舎を大規模改修し、そこに中央図書館、田無公民館、市民会館を移転という形が示されています。規模の縮小を図るという方向性は見られません。市民会館の敷地での三館合築複合化は、昨年1月の行財政改革推進委員会の提言の付帯意見に、「総量抑制」の視点から検討すべきと盛られたものでした。

 国は今、国土強靭化政策の一環として、公共施設等総合管理計画の策定を全国の地方公共団体に要請しています。その中で、将来の人口減、公共施設の老朽化、維持管理の財源不足などを理由に、施設の延床面積減少を推進。集約化・複合化で減らす場合には、来年度までという期間限定で、地方債充当率90%、交付税算入率50%という財源上の優遇措置をとることにしています。

 三館合築案は、この制度を利用するためのものではないかとの質問には、そのためではないと否定。検討課題のある三施設であり、市の将来人口予測から推測される人口構成比の変化と財政状況の見通しなどから決めたと説明しました。しかし、少子高齢化による人口・財政の変化は早晩どこの自治体でも迎える事態です。

 三館を合築複合化すれば延床面積3割減となり、財源として国の上記優遇措置を利用できるのは確かです。しかし、財源確保に走るあまり、教育・文化施設の役割や位置づけをないがしろにしてはなりません。

 三館合築関係で、今年度予算に162万円程ついているが何をするのかという質問には、今年度も継続して検討するための予算としか回答しませんでした。国の財源優遇措置の活用を図る方針について質すと、その方針は変わらないということだった。今後、別の計画案、例えば転用案などが出てくる可能性もあり、市の動向を注視する必要があります。

 公共施設面積は低水準

 三館合築案は公共施設総量抑制の方針の下で進められたが、公共施設総量抑制という考え方にも疑問が投げかけられました。

 合併では市の公共施設を増やした、今度は減らすという、整合性が取れないではないかという疑問。さらに、西東京市の公共施設は面積的には低レベルという市のデータがあり(「西東京市公共施設等総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~」9頁)、市民一人当たり公共施設の建物面積は1.65m2で、全国平均3.42m2や都(市町村)2.03m2と比べ、かなり低い水準であることから、このデータに言及し、人口密度が高いのが一因としても、ただでさえ貧弱な公共施設をこの上減らすのは市民サービスの低下になるのではとの問いかけでした。

 市の説明は、市民サービスにもいろいろあるとソフト面のことに話を逸らしました。これからは福祉や医療関係のサービスも増えるので、施設面でのサービスだけで見ないでほしいと。これに対しては、福祉関係に明るい方が、福祉サービス低下の実例をあげ、それは違うでしょという批判をされました。

 公共施設が面積的に充実しているとは言い難い現状でありながら、市は、国の旗振りにしたがい公共施設保有量10%削減を目標に掲げています。市民のために施設の拡充・向上を図ろうという考えはないのでしょうか。

 仮設庁舎の建設場所はどこ

 田無庁舎周辺での「暫定統合」にあたり検討されている仮設庁舎整備案についても質問が集中しました。

 三館合築案の再検討で、田無公民館と中央図書館を市民会館に移動後に保谷庁舎機能を移転させる案が不可能になり、新たに仮設庁舎整備案が提示されています。候補地は、田無庁舎の市民広場(中庭)、同庁舎の来庁者駐車場、南町自転車等保管所と隣接の南町第4児童遊園、田無駅南口自転車駐車場の4箇所でした。

 そこで、「建設場所について4案を3月議会に提出したとのことだが、どの案も実現性がないのではないか」と問いただすと、市は「この4つの中から決めるわけではない。あくまでも検討段階として提示したもの。これ以外も含めて考える」と驚く内容でした。

 出席者からは次々と「市民広場に建てると災害時の逃げ場がなくなる」「仮設を建ててしまうと、もし将来的に統合庁舎の場所を田無にしようとなった時に制約になるのではないか」「結局また図書館・公民館の場所しかないと元の三館合築を復活させるのではないか」「本設に近い仮設はムダ」「仮設ではなく、より敷地の広い保谷に本設として建てたらいいのではないか」などの意見が出ましたが、市の回答は「ご意見として承る」といった対応に終始しました。

 「形にする」前に市民に相談を

 最後に、重要なテーマとして「市民参加の手法」の問題点が指摘されました。
 市が策定した「公共施設等総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~」33頁によれば、「施設の見直しの内容がある程度形となった段階で」市民意見を聴取するとなっているため、形になってからではなく「形にする」段階で市民に相談してほしい、もっと市民を信頼して任せてほしい、という声が相次いだ。

 「三館合築案」は、まさに市民に相談なく唐突に現れ、三館合築することを既定路線として「懇談会」が開かれるといった経緯だったことから市民の大きな反発を買ったのです。

 庁舎統合をはじめ、今後の公共施設の再編においても、市は同じ轍を踏まないでほしい。市民の側も知恵を集めて、市に意見表明・提案をどんどんとしていく必要があると感じました。

 今回の出前講座で分かったことは、市の主体性がないことです。公共施設のあり方、配置の問題が、国の政策に沿った行財政改革の視点だけで考えられています。お金の心配も分かりますが、なにより市民が住み続けたいと思えるまちとはどんなまちなのか市民と共に考えていくことが必要です。国ばかり見ないで、市民を見てほしいと思います。市民が主体的に関わることで、まちの姿は豊かになっていくのです。

 最後に、一言。
 まちづくりフォーラムは、毎回ビデオ撮影を行い、参加者の意見交換を除きフェイスブックで公開しています。ところが今回は市の方から断られてしまいました。講演部分だけの撮影でも前例がないと断られました。市の方で、いくら共に考えましょうと言っても、新しいツールを使うことに後ろ向きでは、市政への関心は広がらないでしょう。開かれた市政へ変えていってほしいものです。
(田村ひろゆき(向台町)・柳田由紀子(柳沢)ともにまちづくりフォーラム賛同人)

 

【関連リンク】
・庁舎統合方針(案)の概要(西東京市Web
・西東京市合築複合化基本プラン策定に向けた提言(西東京市合築複合化基本プラン策定懇談会
・田無公民館・中央図書館の市民会館への「合築複合化」の再考を求める市民の会(facebook
・西東京市公共施設保全計画(西東京市Web
・本庁舎整備基礎調査報告書(西東京市Web
・公共施設等総合管理計画策定にむけた基本的な考え方に関する提言書(西東京市行財政改革推進委員会
・みんなで考えよう! 西東京市の公共施設(西東京市Web
・西東京市公共施設総合管理計画~公共施設等マネジメント基本方針~(西東京市Web

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