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「やまゆり園」事件の追悼会に出席 受け入れられない「優生思想」

By in 子育て・教育, 交流・共生 on 2016年8月13日
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 神奈川県の障害者施設が7月末に襲われ、多くの入所者が死傷しました。事件の底にどんな見方、考え方があるのか。都内の追悼集会に参加した西東京市新町の斎藤直美さんが、そこで交わされた意見や議論を聞いて考えをまとめました。(編集部)

 7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の障害者が殺害されました。この事件で亡くなられました方々とご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。

 私は自閉症児の母です。私自身も交通事故により、身体障害者となりました。現在は「東京都自閉症協会」、西東京市の「ぶーけ」と「でこぼこ」という発達障害の子供を持つ親の会で活動しています。この事件を知った時、あまりにも衝撃的でテレビの映像を直視できないほどでした。報道の中で最も心に突き刺さったのは、「重度の障害者の人は生きていてもしょうがない」との容疑者の言葉です。

 8月6日午後、東京大学先端科学技術研究センター(東京・目黒区)で開かれた「『津久井やまゆり園』で亡くなった方たちの追悼の集会」に出席してきました。脳性まひの障害がある同センターの熊谷晋一郎東大准教授らの呼びかけで全国から200人を超える人たちが集まりました。障害当事者、福祉医療関係者、研究者、マスコミ関係者など様々な立場の方が参加していました。国内数カ所をインターネットテレビでつなぎ、寄せられた約450通の中から国内外の関係者のメッセージが読み上げられました。

 

東京大学先端科学技術研究センター

東京大学先端科学技術研究センター

追悼集会

追悼集会(写真はいずれも筆者提供)

 追悼の会で「優生思想」という言葉が飛び交っていたことが印象的でした。今回の事件で容疑者は、「(事件前に)ヒトラーが(自分に)降りてきた」と言っていたそうです。ここでのヒトラーとは、ヒトラー率いるナチス・ドイツが推し進めた優生思想のことのようです。意味をネットで調べたところ、「劣等な子孫の誕生を抑制し優秀な子孫を増やすことにより、単に一個人の健康ではなく一社会あるいは一民族全体の健康を計ろうとする思想」とありました。障害者を排除するこのような思想を決して受け入れることはできません。

 この約10年で、日本では急速に障害者支援の政策が進みました。共生社会に向けて前進していると実感しています。それだけに今回の事件はその背景を冷静に、そして丁寧に考えていく必要があると感じています。事件の背景を知るために、是非とも見て頂きたい番組があります。テレビ番組 「NHK-ETV特集 それはホロコーストの“リハーサル”だった〜障害者虐殺70年目の真実〜」(2015年11月7日放送)です。

 「 600万人以上のユダヤ人犠牲者を出したとされるドイツによるホロコースト。しかし、ユダヤ大虐殺の前段階に、いわば『リハーサル』として約30万人の精神や知的に障害のあるドイツ人らが殺害されていた」(NHKホーページより)という歴史的事実がありました。

 ナチス・ドイツの障害者虐殺の実態を知るためドイツを訪れた日本障害者協議会の藤井克徳さんは、「有事の際には、まず障害者にしわ寄せがくる」と強調されていました。NHKの番組制作サイドは、「だからこそ、再び過ちを繰り返さないために番組で考えたかった」と述べていました。

 私はNHKの番組で初めてこうした歴史的な事実を知り、大きな衝撃を受けました。そして、この夏、「津久井やまゆり園」の事件が起きてしまいました。今回の事件で障害者が阻害される風潮が生まれてはなりません。障害児・者を持つ親がどれほどの愛情を我が子に注ぎ、子供の幸せを願って育てていることか。同時に多くの親が障害児・者の生きる権利獲得のために、どれほど身を削って活動をしてきたことか。その思いや苦難の歴史に思いを馳せてほしい、と切に願います。

 繰り返しになりますが、この事件で容疑者が障害者の尊厳や存在価値を抹殺するに等しい行為をしたことは許すことができません。健常者と障害者の共生社会に向けて、これからも障害者の環境づくりの活動を続けていこうと思います。
(斎藤 直美)

 

【関連リンク】
・東京大学先端科学技術研究センター熊谷研究室 >>
・「津久井やまゆり園」で亡くなった方たちを追悼する集会(東京大学先端科学技術研究センター
・ETV特集▽それはホロコーストのリハーサルだった~障害者虐殺70年目の真実(NHKハートネットTVもっとNHKドキュメンタリー「夏ドキュ2016」

 

【筆者略歴】
斎藤 直美(さいとう・なおみ)
 東京都生まれ。2013年3月から西東京市在住、「東京都自閉症協会」、西東京市の「ぶーけ」と「でこぼこ」という発達障害の子供を持つ親の会に所属し活動中。

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