紫草の栽培と染色めざす 西東京紫草友の会が発足

投稿者: カテゴリー: 暮らし環境・災害 オン 2017年2月26日

 

紫草の白い花。春日信さん(谷戸町)提供(2008年5月24日撮影、国分寺の殿ケ谷戸庭園)

 白くて小さい、可憐な花を付ける紫草(ムラサキ)。かつて各地に野生し、紫根は生薬のほか染料に使われた。しかしいまは絶滅危惧種(IB)に指定されるほど少なくなってしまった。その紫草の栽培と染色を手掛けようと「西東京紫草友の会」が2月14日、設立総会を開いた。28日に種まき。紫草が根付く自然環境づくりも視野に入れ、仲間の輪を楽しく広げたいとスタートした。

 会場となった西東京いこいの森公園パークセンター(管理棟)のセミナールームに10数人が集まった。設立趣意書は「紫草がいつの日か東京の大地に自生する夢を抱き、仲間と協力し楽しく集いながら絆を深め、広域交流を重ねます」と謳っている。

 

「友の会」の設立総会

 

 具体的には会員が自宅(家庭)で紫草を栽培するほか、共同(集団)栽培も試みる。会員は月1回の「紫草デー」に集まり、栽培、発育情報を交換し、紫根染めも手掛ける。武蔵野地域で紫草栽培を先駆けて実現した近隣の三鷹市グループとの交流、見学会なども計画している。半ばほどで会長に市内中町に住む蝋山哲夫ろうやまてつおさん、副会長に下保谷在住の新田宜子にったのぶこさんが拍手で選出された。

 

会長になった蝋山哲夫さんと(右)副会長の新田宜子さん

 

 紫草はムラサキ科の多年草。初夏から夏にかけて白い花が咲く。「万葉集」や「古今集」にも紫草を詠んだ歌が収められるほど由緒ある植物だが、時代が進むとともに都市開発や化学染料にも押されて衰退の一途をたどった。現在は滋賀県東近江市が「市の花」にしているほか、各地で栽培するグループができている。近隣では三鷹市の「みたか紫草復活プロジェクト」が栽培と染色の経験を積み、西東京紫草友の会の発足に助言を惜しまなかった。

 来賓として挨拶した同プロジェクト事務局長の西村学さん(第一ゼミナール塾長)は「はじめは見学してもらうだけと思っていたけれど、(会長の)蝋山さんたちがあまりに熱心なので、紫草のタネを分けるまでになった」と裏話を披露。「紫草はタネをまいてから早ければ3週間、遅くても2ヵ月ぐらいで咲くのが多い。ある年、私たちが待ちくたびれて『そろそろ咲いてくれ』と紫草に声を掛けたら、翌日一斉に花が開きました。気持ちが大事なんです」と会場をなごませた。

 

三鷹グループの育成畑を見学。中央が事務局長の西村学さん(2017年1月13日)

 

 育てるタネは、三鷹グループの厚意で譲り受けた。家庭栽培は1人30粒ほど。共同栽培用には約100粒を用意する。育てるのは「和種」に限り、最近よく見られる帰化植物セイヨウムラサキとの交雑を防ぐという。

 この「友の会」は、昨年10月から3回続きで始まった谷戸公民館の講座が母体。同館専門員の小幡洋子さんが環境サポーター・はちどりの会代表の柴公倫さんと出会ったのがきっかけだった。柴さんとの話し合いから講座「始動!紫草復活プロジェクト」が生まれた。講座修了後は受講者らが三鷹の育成畑を見学し、準備会を重ねて「友の会」設立にこぎ着けた。谷戸公民館は共同栽培の場所を提供し、紫草復活を積極的に後押しする。

 山野の草花に興味のある人、環境や食品に関心を持つ人、武蔵野の自然と歴史を学ぶ人など、友の会にはさまざまな住民が集まった。会長の蝋山さんは「紫草の栽培と染色を通じて若い人たちにも『紫草ファン』を広げたい」と話している。

 

設立総会後に残った人たちで記念撮影(前列左から小幡洋子さん、蝋山哲夫さん、新田宜子さん。後列中央が柴公倫さん、その右が春日信さん。

 

 会場を見渡すと中高年層が多いけれど、市内の学校も意外な面で「紫草」とつながっている。田無第一中学校や東伏見小学校の校歌には「むらさきそう」や「むらさき」が登場する。特に田無一中の校歌は「むらさきそうの花かおり むさしひろはら清麗の わかくさもゆるまなびやに…」(作詞:原田重久)と始まる。

 都立保谷高校の校歌にも冒頭に「紫草」が出てくる。それだけではない。校章は、紫草の花びらをかたどってつくられた。作者らは、高校のホームページ(校歌・校章)にこう書いている。

都立保谷高校の校章(同校提供)

「『古今集』のよみ人しらずの歌で『むらさきのゆかり』として有名な

 紫の ひともとゆゑに むさし野の 草はみながら あはれとぞみる

に詠まれた『むらさき』が校章のもとなのである。この歌の意は、『紫の草一本があるために武蔵野の草はどれもみなしみじみと趣のある、美しく、いとしいものに思われる』というのである。(中略)目に見える『むらさき』の白い花は、清純で可憐な小さな花である。しかし目に見えないその紫根は地中にあって大きく逞しい。」

 

 花は可憐、根はたくましく。小さく生まれて、大きく育つ。「友の会」は、ステキな言葉と不思議なゆかりに結ばれているではないか。
(編注)校章画像は保谷高校の提供です。同校のご厚意に感謝します。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・東京都立保谷高校 校歌・校章(同校ホームページ
・「紫のゆかり」の由来(京都の染織史家 吉岡幸雄と染色工房の公式サイト「紫のゆかり」
・田無第一中学校校歌(同校ホームページ
・みたか紫草復活プロジェクト(facebook
・東近江市の市の花(東近江市
・万葉集を象徴する植物「紫草(むらさき)」の保存活動(埼玉県小川町、NPO法人仙覚万葉(せんがくまんよう)の会

 

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紫草の栽培と染色めざす 西東京紫草友の会が発足」への3件のフィードバック

  1. 蝋山哲夫
    1

    うーむ、ついに告知記事登場です。
    当会の発足にじたるまでの経緯が「しかと」綴っていただき有難うございました。
    関連リンクまで付帯しているのも秀逸です。
    で、掲載写真のご提供をお願いしたのですが、どうすればよろしいでしょうか。R山。

  2. 2

    別便で写真取り込みのやり方をお知らせしました。出典を付けていただければ幸いです。

  3. 北川 楓早代
    3

     昨日の紫草栽培染色講座の参加させていただきました。私は保谷高校PTA.OB会である「むらさき会」の北川というものです。保谷高校では、初代教頭である小田島哲哉先生が、古今集の和歌から紫草を校章にしたとということで校歌や保谷高校賛歌でも紫草を歌っており、会の総会の最後には、会員で合唱をします。
     そんな縁からの参加でしたが、大河内先生の人柄の良さを滲ませる素敵なスピーチと30年の長きに渡る挑戦に大変感激しました。
     今回の講座を催していただいた西東京紫草友の会の皆様、有難うございました。
     この場を借りて、お礼を申し上げます。
     来週の水曜日の種蒔きには、都合がつかず参加できないのは残念ですが、翌週の第2回の講座には参加しますので、その時にまた、お話出来たらと思います。

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