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森永卓郎著『消費税は下げられる!』

By in 書評 on 2017年3月19日

さらば緊縮財政・消費税!の号砲
師岡武男(評論家)

 アベノミクスの行き詰まり打開の決め手が「財政出動」であることが、よやくクローズアップされつつある。
 経済大国・軍事大国アメリカの復活を目指すトランプ大統領が、大型のインフラ投資や軍備拡大の積極財政を打ち出し、ヨーロッパでは反緊縮政策のうねりが高まっている。しかしわが日本のアベノミクスは、まだデフレ脱却、景気回復の目途が立たない。一部に人手不足の産業・企業はあるが、国民生活は所得や雇用の不安感に包まれている。

 経済の回復に成功しなければ、憲法改正という本陣に攻め込めないのだから、安倍首相としては、いよいよ経済決戦の時である。それには何よりも、財務省主導の緊縮財政の壁を突破しなければならない。

 海外の動きに応じてか、財政出動を促す言論も目立ってきた。アメリカのノーベル賞経済学者が二人(シムズ氏、スティグリッツ氏)、今年日本に来て財政出動を勧告した。なかでもスティグリッツ氏は、政府の経済財政諮問会議に出席して、「金融政策は限界に達している」と言い、財政危機論に対しては「消費税増税は逆効果、財源は炭素税で。政府債務は日銀保有の国債と相殺すればその分は瞬時に減少する」などの提言までしている。

 森永氏のこの本は「借金1000兆円の大嘘を暴く」と副題がついている。財政危機論と消費税増税の二つを標的として徹底的に反論したもので、スティグリッツ氏の提唱と趣旨は同じだが、中身はさらに過激である。はしがきには冒頭で「私が強調したいことは、たった一つ『日本の財政は世界一健全』ということだ」と切り出している。そのうえで、日本経済がバブル崩壊以降、四半世紀以上にわたって続く低迷を抜け出す経済政策として、消費税の引き下げを強く主張する。

 日ごろ政府とマスコミから注ぎ込まれる財政危機論や消費税必要論になじんだ耳には、とんでもない暴論と聞こえるかもしれない。しかし、この主張は最近の世界と国内の動きに連動したものであり、アベノミクスの進路修正の号砲の役割を担うかもしれない。

 森永氏は自称「経済アナリスト」で現職は独協大学経済学部教授。かねてからデフレ経済からの脱却を主張しながら『年収300万円時代を生き抜く経済学』(03年)『年収120万円時代を生き抜くための知恵と工夫』(07年)など、まさか、と思わされるような「貧困化」先読みの生活対策実用書も書いてきた。この本は、生活対策ではなく政策・制度対策の提唱である。

 政策は、積極財政推進の障碍となっている財政危機論の「大嘘」と消費税の二つの壁を突破することに集中されている。そのうえで財源の作り方の具体策が提案されている。財源の使い方についてはほとんど書いてない。まずは障害物排除に全力を注いだのだろう。

 アベノミクスも、この二つの壁を突破すれば展望が開けるかもしれない。しかし国民経済のゴールは、安全、安心で豊かな生活の実現である。森永氏に財政支出の具体策も聞きたいものだ。

 

 

【書籍情報】
書名  消費税は下げられる!
著者  森永卓郎
出版社  角川書店
定価   864円(税込)
出版年   2017年3月
ISBN  978-4-04-082124-5-C0233
新書   角川新書 184ページ

 

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 


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