第2回 東大生態調和農学機構(農場)-田無演習林-いこいの森公園


  萩原 恵子(屋敷林の会、下保谷の自然と文化を記録する会)


 

散歩マップ東大生態調和農学機構(農場)

 

 西武新宿線の田無駅から街の喧騒を抜けて北へ徒歩8分。教育研究機関としての東大農場(22.2ha)と演習林(9.1ha)がある。1929(昭和4)年に当時の田無町に開設され、2003年に千葉への移転が発表されながら07年中止に。以来急速にキャンパスの整備が行われている。演習林の正門から東に、農場を南北に分断する形で都道が通る予定。敷地の一部も売りに出されるので、緑地確保のため市に買い取りを願う市民の動きも活発化している。

 現在は、ポプラの並木の下に牛がのんびりと草を食み「町の山里」と呼ばれた数年前の姿はない。しかし水田の上を水鳥が飛び交い、耕作後のヒマワリ畑にカワラヒワやムクドリが群れている様子は、まだまだ山里の風景を思い起こさせる。

 一般の人の見学は平日火~金曜の9時~16時30分(土・日除く)。場所が限定され、見学規則もあるが、この農場と演習林ほど見どころのある緑地は市内にはない。桜の木の下でそよぐ風を感じながら鳥を見て過ごす時間は、贅沢そのもの。

 また、毎週火曜日9~16時、農場博物館がボランティアによって公開されている。明治期の農学校時代から最先端のヨーロッパ製などの農具が持ち込まれたのであろう。一般の郷土資料館の農具とは一味違った展示物だ。

 土日に特別公開される日がある。農場の観桜会、昨年は4月5、6日。観蓮会(ハス見本園の公開)、昨年は7月25、26日。ひまわり迷路、昨年は8月12~28日の水・木曜。

 

  • 東大農場
    東大農場。この数日後に背の高いポプラの木(中央左)が伐採された

 

田無演習林

 

 所沢街道の分岐点六角地蔵前が正門。門の脇にはクスノキの巨木が、外気や騒音をさえぎるようにそそり立つ。この入り口の、天を覆う鬱蒼とした緑の奥にぽっかり空間が見える。そこに進むと古風な庁舎が目に入る。見学の際はまずここで見学ノートに記帳しよう。ここから見学路を行くのだが、木には名札が付いているので、1本1本確かめながら歩くと飽くことはない。林の草本類は武蔵野由来の野草。耳をすませば鳥の声。オオタカが営巣している時は幼鳥の声も。昨年は2羽生まれたそうだが、カラスに襲われ1羽しか巣立たなかったとか。

 ここのお薦めは切り株広場。武蔵野のおもかげを残すアカマツが10本ほど。さらに周囲には、ベニシダレ、イトザクラ、マメザクラ、ヤマザクラなど多種のサクラ。秋はモミジ。イロハモミジ、ノムラカエデ、オオモミジなど、見事な赤に染め上げられる。冬は定点観測すると、群れで来るカラ類が枝を飛び渡る。演習林は季節ごとに発見がある。

 見学は、平日月~金曜の9時~16時30分(土・日除く)。日曜の特別一般公開は、ハンカチノキ、昨年は4月27日。ヒトツバタゴ(なんじゃもんじゃの木)、昨年は5月4日。カエデの紅葉、昨年は11月30日。

演習林の見どころいこいの森公園

 

 2001(平成13)年開園の合併記念公園(4.4ha)。ふれあいの場がコンセプト。西側に武蔵野の風景を再現するクヌギなどの雑木林や梅林。北側にビオトープ。中央が草地の広場で、防災時のヘリポートにもなる。東側にスケート広場やボール広場など若者向けの施設があり、原っぱ広場を取り囲むジョギング走路も。多彩な機能を盛り込んだ公園。

 植栽で特徴的なのは、桜の種類が豊富だということ。公園アプローチにはソメイヨシノとカワヅザクラが交互に。さらに入り口からベニシダレ、カンザクラ、エドヒガン、ジュウガツザクラなど、咲く時期が違うので長く楽しめる。広場のイボタノキ、ザイフリボクなどの木も面白い。

 

【筆者略歴】
 萩原恵子(はぎわら・けいこ)
 宮城県石巻市出身。校正者。屋敷林の会代表。下保谷の自然と文化を記録する会会員。かつて保谷に渋沢敬三や高橋文太郎がつくった日本初の民族学博物館の歴史を掘り起こし、広報活動を継続中。ブログ「西東京市・高橋家の屋敷林」その他。著書『タヌキの伝言』(けやき出版)。

 

【関連リンク】
東大生態調和農学機構
西東京いこいの森公園
・連載 西東京市の散歩道>>目次
・西東京市・下保谷四丁目特別緑地保全地区(旧高橋家屋敷林) (西東京市Web

 

 

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