第5回 施設に入る(2)


 斎藤澄子(社会福祉士・精神保健福祉士)


 

 今回は、介護保険制度で「在宅サービス」「地域密着サービス」に位置づけられている施設をご紹介します。

 

 有料老人ホーム(「介護保険制度上では「特定施設入居者生活介護」) 

 

 有料老人ホームには、施設職員により介護が提供される「介護付有料老人ホーム」、外部の介護サービスを利用する施設「住宅型有料老人ホーム」、元気な方が入居する「健康型有料老人ホーム」(介護が必要になった場合は退去しなければならない)の3種類があります。介護型で都道府県の指定を受けた施設は、介護保険制度上「特定施設」と呼ばれます。

 介護付有料老人ホームは、自宅での生活が困難で、特別養護老人ホームの順番を待っていられない、という場合の選択肢の1つになっています。

 市町村や東京都の公的なホームページで介護保険指定の有料老人ホームを探すときには(この連載の第2回を参照してください)、「施設サービス」ではなく、「在宅サービス」の分類で検索します。明らかに施設なのに、不思議ですが、そういうことになっています。

 ほとんどが民間営利企業の運営によるもので、規模が大きいもの、小さいもの、料金の高いところ、安いところ、といろいろです。私の実感では、料金が高くてもよい施設とは限らないのが、有料老人ホームの怖いところです。

 

イラスト=© 手島加江

イラスト=© 手島加江

 

 施設に支払うお金は、介護保険自己負担分、住居費、食費、光熱費、管理費のほか、上乗せ介護費用(国の基準以上の職員を配置している場合)、おむつ代、医療費、通院介助、外出同行、各種手続き代行等に別途支払いが必要です。お楽しみ外食会など、外出の催しを行うところもあり、もちろん、有料です。だいぶ前のことですが、ある有料老人ホームで、「回転ずしを食べに行く」イベントがあり、その費用が1回7千円というので、家族から私の勤務する某区相談機関に苦情が寄せられたことがありました。

 最近は、入居金不要の施設も増えてきましたが、施設によっては、数百万円~数千万円の入居金を前払いして、利用料金を補填するプランを設定しています。その分、毎月の支払い額は軽減されますが、注意が必要です。3か月以内に退去する場合は、利用に要した費用を除いて、入居金全額を返還するように義務づけられているものの、それ以降は、初期償却費用として、一部の入居金が返ってこないことが多いのです。例えば、入居金1千万円、初期償却費用20%の施設の場合、入院や死亡、施設とのトラブルにより、3か月と1日目に退去手続きをした場合、契約上、利用者側には8百万円しか戻りません。

 利用を検討する場合は、契約内容をよく確認すること、必ず体験入居することをお勧めします。東京都福祉保健局のホームページには、ほとんどの施設の契約書が開示されています。けして読みやすいものではありませんが、検討中の施設と他の施設の契約内容を比較することは、施設選びのポイントになります。

 

 グループホーム(「介護保険制度上では「認知症対応型共同生活介護」)

 

  認知症の高齢者が、家庭的な雰囲気の中で共同生活を送る施設です。介護保険制度の中では、「地域密着型サービス」の1つとして位置づけられ、市区町村が事業所を指定します。利用者は、原則的に、グループホームのある地域の住民に限られます。

 9人以下の利用者が1つのユニットを形成し、職員の支援を受けながら、日常生活の中で、心身機能の向上、維持を図ります。居室は、原則個室です。利用者、職員で、顔見知りの人間関係が確立されることから、認知症高齢者が過剰な刺激を受けることなく、落ち着いて暮らすことが期待できます。

 介護保険の自己負担分のほか、居住費、光熱費、食材料費、日常生活費がかかります。入居金を求めるグループホームもありますが、有料老人ホームほどびっくりするような金額ではありません。また、居住費については、特別養護老人ホームや老人保健施設よりは高額です。

 事前の見学や、ケアマネジャー・地域包括支援センターからの情報収集などにより、入所前に十分検討することが望まれます。

 この4月から、すべてのグループホームにスプリンクラー設置が義務づけられましたが、未設置の施設も少なくないようです。小規模であっても、認知症高齢者が入居する施設だけに、火災・災害時の体制などはチェックしておきましょう。

 このほか、介護保険施設以外にも、次のような高齢者施設があります

 

 軽費老人ホーム・都市型軽費老人ホーム

 

 60歳以上の中低所得高齢者を対象とした福祉施設です。食事その他の日常生活に必要なサービスを提供する「A型」、自炊が原則で相談対応が可能な「B型」、A型サービスに加えて外部の介護サービスを利用する「ケアハウス」、都市部に居住する高齢者向けの「都市型軽費老人ホーム」の4種類があります。

 都市型軽費老人ホームのサービス内容は、ケアハウスと同じですが、都市において整備が進むよう、職員配置や居室面積の基準が緩和されています。

 

 サービス付高齢者向け住宅

 

 「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)に基づいて、都道府県等が審査し、登録される高齢者向けの賃貸住宅です。平成27年3月末現在で、全国に5493棟、17万7722戸整備されています。サービス内容や費用などは、「サービス付高齢者向け住宅情報提供システム」のホームページで見ることができます。

 ヘルパーや看護師等の専門職員が日中常駐して、安否確認や生活相談、食事の提供を行います。介護サービスは外部の事業者と契約するところが多いのですが、介護保険の特定施設の指定を受けている場合は、職員による介護が受けられます。

 どの類型の施設を検討するにしても、事前に情報を収集し、見学や体験入居(可能ならば)をしたうえで、契約することをお勧めします。

 施設利用は、決して安い費用ですむものではありません。年金生活の夫婦のお1人が入所してしまい、自宅に残った配偶者が生活に困窮するという話も少なくありません。資金計画をきちんと立てることをお忘れなく。 

 

【プロフィール】
 斎藤澄子(さいとう・すみこ)
 福岡県出身。都内某区で高齢者の相談業務に従事。社会福祉士・精神保健福祉士。元看護雑誌編集長。趣味はトランペット演奏、長年の「少年隊」のファン。
 手島加江(てじま・かえ)
 イラストレーター。1980年桑沢デザイン研究所卒業。82年頃よりフリーとして活躍。広告、雑誌、書籍、CDなど。個展、グループ展など多数。

 

 

 

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