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第4回 まちの課題解決を通して官民が成長


  富沢このみ(田無スマイル大学実行委員会代表)


 

 岩手県の紫波中央駅は、盛岡から東北本線に乗り換えて21分。降り立つと、みちのくの田舎町のイメージとは異なるお洒落な街並みが出迎えてくれる。ここは今、財政難に直面する全国の地方自治体から注目を浴びているエリアだ。
 2009年から紫波中央駅の西側で展開されてきた「オガールプロジェクト」(注1)は、公民連携、民間主導で進められてきた開発事業である。

紫波中央駅

紫波中央駅

いずれも紫波中央駅

 

(注1) オガールとは、【成長】を意味する紫波の方言【おがる】と【駅】を意味するフランス語【Gare】(ガール)を足した造語
・紫波町HP:http://www.town.shiwa.iwate.jp/
・オガール紫波HP:http://ogal-shiwa.com/

オガールプロジェクトとは

 オガールプロジェクトは、複数の事業の総称だ(図参照)。
 このプロジェクトが注目される理由は、大きく3つある。
 第1には、PPP(Public Private Partnership)と呼ばれる公民連携で実施されたこと
 第2には、補助金に頼らず、民間がリスクを負って開発、運営していること
 第3には、商業を中心としたまちづくりではなく、図書館やスポーツ施設など「普遍的な集客装置」を核としていることである。

image3

(クリックで拡大)

 

①オガールプラザ(図書館を含む情報交流館、子育て応援センター、産直施設、学習塾、眼科、歯科、飲食店など)
②オガールベース(バレーボール専用体育館、宿泊施設、小売店など)
③ 紫波町庁舎
④オガール広場
⑤オガールタウン(宅地分譲。紫波型エコハウスで建設して、地域熱供給を利用すれば補助金が出る)
⑥県フットボールセンター
⑦エネルギーステーション
⑧オガールセンター(小児科クリニック・病児保育施設、ヘアーサロン、アウトドアショップ、ベーカリーカフェ、スポーツジム、英会話教室、教育支援施設、集合住宅などが入居する複合施設。平成28年12月から順次オープン予定)
⑨ オガール保育園(平成29年4月開園予定、民設民営保育所)
(出所)オガール紫波のHPの図に追加。すでに整備されたものは①~⑦、現在⑧と⑨を建設中で、これでほぼ完成する。

公民連携に舵を切る

 紫波中央駅のある紫波町は、昭和の合併で1町8村が昭和30年に合併し、その中心であった日詰町の中心部にJRの駅を誘致した(注2)。紫波中央駅前にある町有地は、平成10年に(財)岩手県住宅供給公社(平成21年解散)から役場庁舎を含む公共施設の整備を目的として取得したものだ。

 ところが、駅周辺のニュータウンの分譲は、順調に進んだものの、町が取り組むはずだった公共事業は、財政的な問題から、手をつけることができずにいた。駅前の広大な敷地は、単なる雪捨て場になり、夏は草ぼうぼうだったという。ニュータウンに入居した人たちからは不満が高まっていた。

 前町長(注3)は、就任以来の課題である駅前町有地をなんとかしたいと考え、結果として、平成21年(2009年)に、「公民連携基本計画」を策定し、民間との連携により事業を進める方向に舵を切った。

 この計画を進めるにあたって、地域振興整備公団(現都市再生機構)で働き、その後2002年に親の稼業を継ぐために紫波町に戻っていた岡崎正信さんに白羽の矢が立った。岡崎さんは、「公民連携」について本格的に学ぼうと、2006年に、東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻に入学した(注4)

 

オガールプラザ

官民複合施設オガールプラザ

(注2) 駅の誘致は、地元負担だが、公的資金では制約があるため、町民から寄付を募り、必要な額にほぼ近い2億7000万円を得て平成10年に作られた。
(注3) 前町長は、エネルギーの自給自足をめざして循環型まちづくり条例を制定、その思想は、オガールプロジェクトにも活かされている。
(注4) 東洋大学大学院では、㈱アフタヌーンソサエティの清水義次氏が客員教授をしており、その後、プロジェクトに大きな影響を与えた。紫波町は、2007年に、東洋大学と包括協定を締結している。

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