第7回 地縁コミュニティ(自治会・町内会)は復活なるか

 

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)を高められるか

 日本では、2001年にロバート・D・パットナムの『哲学する民主主義-伝統と改革の市民的構造』NTT出版(河田潤一訳)が出された頃から、ソーシャルキャピタルが注目されるようになった。社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念で、「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク」(日本的に言えば「絆」と言ってよいのではないか)がある地域は、治安・経済・教育・健康・幸福感などに良い影響があり、社会の効率性が高まるとされる。

 私たちは、高度成長期には、地域のこうした「絆」をうっとうしいと感じてきたのだが、3.11の東日本大震災を経て、改めて地域の絆の大切さについて再認識しはじめたと言えよう(注1)。また、少子高齢化時代を迎え、独居老人の孤独死などが現実のものとなり、地域の見守りや助け合いなどへのニーズも高まってきている。しかし、「平時」においては、「絆」や絆を維持するためのさまざまな仕事(たとえば、自治会役員の仕事など)は、やはり面倒くさいと思われている。

 「自治会があるのを知らなかったが、あるなら入りたい」という人も居る一方、「体調を壊し役員などの仕事ができないので迷惑をかけるから辞めたい」という人も居るのが現状だ。後者のような人ほど、自治会に入会し、見守りや助けが必要なのではないかと思うのだが。

 新しく引越しされてきたお宅に勧誘に行くと、あたかも御用聞きに応えるように「うちは間に合っています」と断られることもある。また、「入会すると、どんなメリットがありますか」と聞かれるという。「メリット/デメリット」で考える慣習から、「互酬性の規範」(お互いさまの支え合い)を取り戻すには、どうしたら良いのだろうか。

(注1) 私たちに絆の大切さを教えてくれた3.11であるが、その被災者の方々は、避難所で異なる集落の人たちと暮らし、その後仮設住宅に入ってまた違う人々と暮らし、今度は、新しい公営住宅に移り、再び違う人々と暮らすなど、絆が壊れてしまったと聞く。
(注2) 西東京市の自治会・町内会に関する調査報告書等は、以下のページにある。
>>http://www.city.nishitokyo.lg.jp/siseizyoho/region_community/jichikai_cyounaikai/index.html

・東久留米市氷川台自治会に総務大臣賞 平成28年度ふるさとづくり大賞
>> http://www.skylarktimes.com/?p=9240

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。大手銀行で産業調査を手掛ける。1987年から2年間、通信自由化後の郵政省電気通信局(現総務省)で課長補佐。パソコン通信の普及に努める。2001年~2010年には、電気通信事業紛争処理委員会委員として通信事業の競争環境整備に携わる。
 2001年から道都大学経営学部教授(北海道)。文科省の知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツエリア」に参画。5年で25億円が雲散霧消するのを目の当たりにする。
 2006年、母の介護で東京に戻り、法政大学地域研究センター客員教授に就任。大学院政策創造研究科で「地域イノベーション論」の兼任講師、現在に至る。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。
 主な著書は、『「新・職人」の時代』』(NTT出版)、『新しい時代の儲け方』(NTT出版)。『マルチメディア都市の戦略』(共著、東洋経済新報社)、『モノづくりと日本産業の未来』(共編、新評論)、『モバイルビジネス白書2002年』(編著、モバイルコンテンツフォーラム監修、翔泳社)など。

 

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