日本・ミャンマー合作映画「僕の帰る場所」上映始まる 東京国際映画祭「アジアの未来」部門2冠受賞作
日本・ミャンマー合作映画「僕の帰る場所」の一般公開が10月6日から東京・東中野の映画館「ポレポレ東中野」で始まった。この映画は昨年開かれた第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で作品賞と国際交流基金アジアセンター特別賞の2冠を受賞した。西東京市内がロケ地にもなったゆかりの作品。公開初日は出演した両国の俳優や監督らが舞台挨拶した。
この日午後4時過ぎに上映が終わったあと、両国の俳優や監督、スタッフらが舞台に登場した。監督・脚本・編集を手掛けた藤元明緒さんにとって初の長編映画。「企画してから5年経って初日を迎えられました。感無量です」とまずひとこと。ミャンマーに通い、ミャンマー女性と出会って結ばれた。現在はヤンゴンに住む。「映画作りと生きることとが結びついた」とも言い、「家族の普遍的な姿を描いたので、これから長い間見続けられる映画であってほしい」と挨拶した。館内は満席。100人を超える観客が温かい拍手で迎えた。
幼い兄弟の兄カウン役として映画出演したカウン・ミャッ・トゥ(Kaung Myat Thu)さんはいま小学5年生。昨年オランダで開かれた第10回シネマジア映画祭長編コンペディション部門最優秀俳優賞を受賞するなど内外で高い評価を受けた。「上映初日にこんなに大勢のみなさんに来ていただいてありがとうございます」と感謝した。
保育園の先生役だった黒宮ニイナさんはヤンゴン生まれ。「10歳の時来日したけれど日本語が分からない。映画の兄弟と似た環境だったせいか、カウン君の自然な演技を見て、うるっときました」と話した。
「僕の帰る場所」(英題:Passage of Life)はミャンマーから日本にやって来た家族に焦点を当てる。父は難民申請が認められない。母と幼い2人の兄弟は不安な暮らしを余儀なくされる。兄弟は日本で育ち、母国語がおぼつかない。母は慣れない日本の生活に望郷の思いが募る。母子の間に諍いが絶えなくなる…。厳しい環境に追いやられる在日ミャンマー人一家の姿が浮き彫りになり、移民、難民のこれまでとこれからを垣間見るようなシーンが続いた。
映画の後半はミャンマーが舞台。故郷に戻った母は楽しそうだが、言葉がよく分からない兄は孤立していく。父は日本にいる…。やりきれない悩みと葛藤が、子どもの切ないしぐさとあどけない表情とともに描かれる。
映画の中で母が勤めるクリーニング店、一家が住むアパートなどは西東京市内がロケ地だった。入国管理事務所の場面は西東京市の田無庁舎が使われた。
プロデューサーの渡邉一孝さんは西東京市在住。市内に事務所のある日本・ミャンマーメディア文化協会の理事でもある。舞台挨拶で「この映画は誰かに頼まれて作ったわけではない。自分たちがひた走り、協賛と借金で作った(笑)。映画館を一つ一つ回って上映をお願いしています。こんな映画があっていいと思われる方がいたらぜひ、おいでください。広めてください」と話して観客の拍手を浴びていた。
同館での上映は11月2日まで。その後各地で上映予定。
(北嶋孝)
【関連リンク】
・『僕の帰る場所』(公式サイト)
・第30回東京国際映画祭受賞結果(東京国際映画祭)
・『僕の帰る場所』公開スタート!(ポレポレ東中野)