地方紙で知るふるさとの今 小平市立図書館で新聞元旦号展

投稿者: カテゴリー: メディア・報道 オン 2020年1月11日

地方紙の元旦号を読む来館者(小平市中央図書館)

 全国各地の地方紙の元旦紙面を手に取って読むことができる「第40回ふるさとの新聞元旦号展」が小平市内の市立図書館を巡回している。地方のニュースを伝える紙面を通じて、故郷の今を知ることができる新年恒例の企画。中央図書館(1月5~9日)で展示後、上宿図書館(11~15日)、大沼図書館(18~23日)、小川西町図書館(25~30日)を回る。

 市立図書館が各地の新聞社に元旦号の寄贈を呼びかけ、42紙のブロック紙、県紙、地域紙が集まった。期間中新たに到着した元旦号は随時、展示に加える。地方出版物も併せて並べ、自由に閲覧できる。

 元旦の地方紙は地元に関わる特ダネや著名人インタビュー、大型連載企画など各紙とも特別の紙面を展開する。今年は東京オリンピック・パラリンピックをめぐる特集記事が目立ち、多くの地方紙が一面左肩に「ゴーン被告、海外逃亡」の見出しを掲げた。

 

紙面を飾る東京オリンピック・パラリンピックの特集記事

一面左肩に多く掲載されている「ゴーン被告海外逃亡」の記事

 

 毎年、独自の記事を掲載している「琉球新報」は、太平洋戦争時に日本軍が民間船を徴用した「戦時徴用船」の調査結果を分析し、700人以上の沖縄県民が太平洋全域とインド洋で犠牲になった事実を報じている。沖縄県が伝える「船舶犠牲者数」に戦時徴用船の船員らは含まれていないため、「さらに多くが戦時下の海で亡くなっていたことが明らかとなった」としている。

 「静岡新聞」は、大手アルミニウム加工メーカーがアルミ製錬のために富士川水系に設けた4つの水力発電所で得た電力を売電に転用していることを報じた。「水利権の目的外使用の可能性がある」として国土交通省が近く実態調査に乗り出す方針を伝えている。

 

展示されている42紙

 

 こうした展示企画は、地方出身者にとって故郷の近況を知り、懐かしい祭りや地元の表情に触れる貴重な機会だ。また各自治体の取り組みや地方独自の流行・風俗を知る情報源でもある。同様の企画は新宿区や茨城県などの公立図書館、愛媛新聞、下野新聞などの地方新聞社でも実施されているが、40年も続いている例は珍しいのではないか。

 ただ、北海道新聞や中国新聞、神戸新聞、京都新聞といった主要地方紙が欠けており、130紙前後が集まる新宿区立図書館に比べて展示点数において見劣りする。さらに1986年の57紙から点数自体も減っている。

 日本新聞協会によると、2019年の新聞の総発行部数は約3780万部で、うちブロック紙や県紙が約4割を占める。年々部数を減らしており、2000年から3割ほど減った。発行部数減と展示点数減の関連はわからないが、歴史ある企画をさらに充実させ、地方紙を活性化させるためにも、今後、展示点数の増加、展示場所の追加に努めてほしいと思う。
(片岡義博)(写真は筆者提供)

 

【関連情報】
・第40回 ふるさとの新聞元旦号展のお知らせ(小平市中央図書館
・新聞の発行部数と世帯数の推移(日本新聞協会

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。小平市在住。嘉悦大学非常勤講師(現代社会とメディア)

 

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