列車のトイレはどう変わったか 小平市ふれあい下水道館で写真展
列車のトイレの変遷に焦点を当てた「列車のトイレ写真展」が、小平市ふれあい下水道館で開かれている(3月22日まで)。旅行や移動中に何気なく利用している列車内のトイレだが、その移り変わりが時代や風土を映し出していることがわかる。
写真と資料を提供したのは、NPO法人「21世紀水倶楽部」顧問で「屎尿・下水研究会」会員の清水洽さん(78)。下水汚泥の処理技術の開発に携わってきた清水さんは学生時代からの鉄道ファンで、世界の鉄道に乗車し写真に収めてきた。十数年前から列車内のトイレを撮り始め、今回その成果を初披露した。
展示したA4サイズのパネル約80枚のうち多くは車両写真だが、解説や設計図によって日本の列車トイレの歴史を跡づけている。列車にトイレが付き始めたのは明治から大正にかけてで、北海道ではイギリスの輸入車両にトイレが付いていた。汚物はすべて垂れ流したため、沿線で糞尿による「黄害」が問題化した。
「特急はやぶさブルートレイン」のモノクロ写真(1961年撮影)のパネル解説には「当時の鉄道ファンの中では列車の撮影に最も気を付けなければならないのが列車からの汚物です」と記されている。
1961年、新幹線の車両に「貯留式」(タンク式)トイレが初めて採用された(開業は64年)。その後、洗浄水を再利用することでタンクを小型化した「循環式」に改良された。現在、JR、私鉄とも垂れ流し式はなくなったが、海外ではいまだにほとんどが垂れ流し式だという。清水さんは「日本人がきれい好きということもあるが、沿線に住宅が密集している日本と違って、海外では黄害がほとんどないからだろう」と話す。
展示会場では、足立区から来たという来館者が清水さんと「昔の列車トイレは臭かったですよね」「潜水艦のトイレはどうなっているんでしょう」などとトイレ談義で盛り上がっていた。日々の生活に密着したテーマだけに、調べれば面白いトピックがどんどん出てきそうだ。
清水さんは、今回の「列車のトイレ」日本編から世界編に広げ、近く写真展を開催する予定という。
(片岡義博)
【関連情報】
・小平市ふれあい下水道館 列車のトイレ写真展(小平市)
・列車とトイレ(21世紀水倶楽部)
【筆者略歴】
片岡義博(かたおか・よしひろ)
1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。小平市在住。嘉悦大学非常勤講師(現代社会とメディア)