小平市が感染者情報の公表指針を発表 年代、性別、施設名を広報 西東京市など近隣自治体で分かれる判断

投稿者: カテゴリー: 新型コロナウイルス オン 2020年8月22日

小平市役所(写真は筆者撮影)

 小平市は8月21日、新型コロナウイルス感染者が市内で発生した際、感染者の年代や性別を明らかにする方針を定めた「公表指針」を発表した。小平市はこれまで感染者の年代や性別を公表していなかった。感染情報を広報する際、感染者の属性をどこまで明らかにするかは各自治体によって判断が分かれている。市民の知る権利か個人情報の保護か。近隣自治体の感染者情報の伝え方を調べた。

 小平市が発表した「小平市における新型コロナウイルス感染者発生時の公表指針について」によると、公表の対象は「市職員等が感染した場合」と「市施設で感染が発生した場合(利用者等が感染した場合も含む)」。感染者の「年代」「性別」「施設名」とともに「公衆衛生上の対策」を公式ホームページやプレスリリースで明らかにし、状況によっては記者会見をする。

 

 「注意事項」として①感染者等の特定による偏見・差別、誹謗中傷や風評被害等が生じることのないよう個人情報やプライバシーに十分に配慮し、感染者及び利用者等に対する人権侵害への影響等に十分留意する②濃厚接触の状況や感染拡大のリスクなどを総合的に勘案し、公表の内容については個別に検討・判断する③指針については今後の動向などを踏まえ、適宜見直しを行う―としている。

 

小平市の「公表指針」を掲載したホームページ

 

 小平市はこれまで市施設などで感染者が出た場合、感染者の年代や性別を公表しておらず、7月21日発表の事例のように「都内在住の市立学校の教職員(非常勤)1名」と小学校か中学校かを明らかにしないケースもあった。

 これについてホームページでは「感染者の公表は保健所を所管する自治体(特別区など)は独自で行えますが、保健所を所管していない小平市においては、東京都が感染者からヒアリングを行い、感染者の情報を公表することになっています。このため、小平市のホームページは東京都の公表を基に作成しています。東京都においては、大都市の特性、感染経路の確認への支障及び人権侵害の危険性があることから、各市町村別の患者の性別・年代・職業・居住地の詳細・感染経路は公表しておりませんので、ご理解いただきますようお願いします」と説明していた。

 

 各自治体の窓口には市民から具体的な感染者情報を公表するよう求める声が相次いでいる。小平市健康推進課によると、東京都が自治体からの要望を受けて、感染者の年代や性別などを市町村に伝え、公表の判断は各自治体に任せるとの方向性を示したため、今回の公表指針を定めた。

 

 今回、小平市が出した公表指針と同様の基準を早々と導入している自治体もある。西東京市や東村山市、武蔵野市は、東京都が4 月1日に市区町村別患者数の公表を始めたことを受けて、4月2日に「市内における感染者発生時の公表の考え方」を発表。市職員や市施設の利用者らが感染した場合、「感染者の年代、性別」「感染者の症状・経過」「感染者の渡航歴及び行動歴」などを公表すると記している。

 

各自治体のホームページに掲載された公表方針

 

 市の施設以外で感染者が出た場合の対応も分かれる。西東京市の「公表の考え方」では「市内事業所で感染者が発生した場合、市としては、公表を指示することはないが、事業者が独自の判断で公表する場合は、関係者の同意を得た上で、個人情報の保護や人権上の配慮に充分留意するよう要請する」と付記している。

 また東村山市では、市の施設以外の施設や事業所などにおける感染は、市に情報提供があり、当該施設か゛市による公表を了解する場合、施設が公表した範囲内で広報する、としている。

 練馬区は感染者の「年代」「性別」に加えて「入院中」「宿泊療養」「自宅療養」「死亡」「退院」といった「療養状況」を一覧にして公式ホームページに掲載。感染者の住所地については「町名などを公表することにより地域で暮らす方々の生活を脅かすような風評を生む恐れがあるため公表しません。感染者の勤務先や感染ルートなどについても個人情報保護や人権への配慮から公表しません」と明記している。

 一方、都内では杉並区や世田谷区のように「個人のプライバシーの保護と人権への配慮」「医療機関や企業の活動への配慮」などを理由に、感染者の年齢、性別、居住地を公表していない自治体もある。

 

 また、東久留米市や清瀬市は、「患者のプライバシーの保護」などを理由に、東京都の公表を基に市内の感染症患者数を伝えるにとどまり、ホームページでは個別の感染発生事案について公表していない。

 感染症法の第16条では「感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない」とするとともに「前項の情報を公表するに当たっては、個人情報の保護に留意しなければならない」と定めている。

 感染者に関する情報のどこまでが「予防及び治療に必要な情報」であり、どこからが「個人情報の保護」に当たるのか。各自治体は多角的な視点から議論したうえ、その議論の経過と公表の方針を明らかにしてほしい。
(片岡義博)

 

【関連情報】
・小平市における新型コロナウイルス感染者発生時の公表指針(小平市
・市内の感染者数(小平市
・西東京市 市内における感染者発生時の公表の考え方(西東京市Web
・東村山市における新型コロナウイルス感染症発生時の公表指針(東村山市
・武蔵野市内における感染者発生時の公表の考え方(武蔵野市
・区内感染者数(練馬区
・世田谷区における新型コロナウイルス感染者数等の公表について(世田谷区
・区内感染状況(杉並区
・市内における新型コロナウイルス感染症患者の発生状況について(東久留米市
・患者の発生状況(清瀬市
・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(厚生労働省

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。2009年から全国52新聞社と共同通信のウェブサイト「47NEWS」で「新刊レビュー」を連載。小平市在住。

 

 

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