池澤隆史市長

「原案レベルの原稿を見た」「確認団体の判断で、と話した」 池澤市長が法定ビラ2号で「市民にお詫びする」

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙 オン 2021年3月5日

 2月に行われた西東京市長選挙で、当選した池澤隆史市長陣営が発行した法定ビラ2号が相手候補を貶める内容ではないかと批判の声があがり、3月1日と2日に開かれた市議会臨時会ではほぼ、この問題に質疑が集中した。池澤市長は「原案レベルの原稿を事前に見た」と内容をほぼ把握していたことを認めた上で、ビラの配布も「確認団体の判断で、と話した」と事実上のゴーサインともとれる答弁を繰り返した。「(ビラを見て)傷付いたり不快に思ったりした市民や(ビラの対象となった)平井氏にお詫びする」と述べたうえで「責任はある」とも認めた。

 

緊急質問が16人

 

法定ビラ2号表

池沢陣営が選挙戦終盤に配布したビラ(表)(クリックで拡大)

法定ビラ2号裏

新聞記事を抜粋、引証した裏面。最後に反共・反左翼スローガンが見える(クリックで拡大)

 問題のビラは、「逗子での失敗のリベンジは逗子でやってください。ここは西東京市です。」と表面に大書して、前逗子市長の平井竜一氏を事実上標的にした。裏面は平井氏が逗子市長在任中の財政問題を取り上げた新聞記事などの抜粋7件を、ピン止めスタイルで掲載。末尾には「西東京市のまちづくりは、西東京市民の手で! 共産・左翼に市政を渡すな!!」と太字で強調していた。

 

 緊急質問に立ったのは、自民6人、公明3人、立憲1人、生活者ネット2人、無所属の3人の計16人。池澤陣営だった議員が9人、平井陣営が7人。平井側だった7議員が、法定ビラの内容と池澤市長との関わりに的を絞って次々に追求した。

 

「ビラの原案を見た」「団体のご判断で、と話した」

 

 池澤市長は法定ビラ2号について「内容を知っていたのか」と問われて、「選挙期間中に、確認団体(明日の西東京を創る会)が地元の新聞記事をもとに事実を伝えたいとのことだったので、それなら団体のご判断で、と話した記憶がある」と各議員の質問に繰り返し答え、団体との間に一線を画していた。

 

 加藤涼子氏(生活者ネット)が平井陣営側の議員として最後に質問に立ち、それまでの質疑を踏まえて「ビラのキャッチコピーも見たのか」と踏み込んで問い掛けた。池澤市長は「完成前と言うことで、原案の原稿を事前に見せていただいた記憶がある」と答弁し、ビラのメッセージ内容との関わりに初めて触れた。「団体のご判断で、と話した」との言葉と併せて、ビラの内容を事前にほぼ知りながら、配布にゴーサインを出したと受け取れる発言だった。議場からため息のような声が広がった。

 

加藤涼子議員

池澤市長を追求する加藤涼子議員

 

「私も責任がある」

 

 池澤市長はそれまで各議員の質問に対する答弁で、「私は政策を訴えて選挙戦を戦ってきた。街頭演説で他候補を非難したことはない」と述べ、「他市の方を排除する考えは、これまでもこれからも一切ない」と強調した。また「ビラを見て傷付いたり不快に思ったりした市民のみなさまには心からお詫びする。謝罪の方法はこれから考える」とも話していた。

 

 確認団体「明日の西東京を創る会」(指田純会長)との関係については、「私を支援している団体だが、私自身が所属しているわけではない。私が指示、命令する立場にはない」と述べ、ビラを発行したのは団体側、との構図を崩さなかった。しかし、確認団体が東京都選挙管理委員会に届け出るとき、支援する本人の同意書が必要だったので「私は同意書を書いた」と述べ、その点では「私も責任がある」と述べ、初めて「責任」に言及した。

 

「市民のことを考えて判断する力に欠けていた」

 

 「排除する考えはないのに、なぜビラの内容を知って、自分の考えを言えなかったのか」との問いに、「止める判断もあったのかなと、今になって反省している。私はこういうことは二度とあってはいけないし、してはいけないと誓って申し上げる」と答えた。

 

池澤隆史市長

「ビラの原案を見た」と答える池澤市長

 

 「どうして発行を止められなかったのか。市長ご自身に何が欠けていたのか」との重ねての質問に対し、池澤市長は「市民のみなさんのことを考えて、しっかり判断する、判断力に欠けていた」と答えた。議場は前にも増してざわついた。

 

追求した「7人の議員」

 

 「市長としてのリーダーシップに欠ける」「子どもに見せられないようなビラの発行を止められなかった人が、『子どもがど真ん中のまちづくり』と言っても信用されない」「差別と分断を煽るビラを確認団体が配布しながら、自分にそういう考えはないと言うだけ。いじめの現場で意見も言わず止めもせず、ただ見ているだけと同じではないか」…。

 藤岡智明氏(共産)、森信一氏(立憲フォーラム)、後藤優子氏(生活者ネット)、納田里織さおり氏(無所属)、田村広行氏(無所属)、森輝雄氏(無所属)、加藤涼子氏(生活者ネット)。緊急質問の2日間、「7人の議員」が積み重ねるように応答を引き継いで発言、追求した。

 

 緊急質問は、質問と答弁が1人2往復までしかできない。そのため限りある機会と時間を有効に使おうと、「質問が重複しないよう、お互いに調整できるような仕組みを作った」とある議員は話していた。その結果は…。

 

録画映像を自分の目で

 

 ここに紹介したのは、2日間の遣り取りのごく一部。ビラに関する池澤市長発言の結論部分をまとめたに過ぎない。そのほか池澤市長の戸籍上の出生地は杉並区で、公式サイトの記載が途中で書き換えられた、などの追求もあった。選挙管理委員会の対応も取り上げられた。池澤陣営側の議員9人も質疑を重ねた。今回平井陣営側だった政党や団体の一部が、かつて似たような「ネガティブキャンペーン」のポスターを発行したとの12年前の出来事も明らかにされた。

 

 緊急質問に立った16議員の発言が3月5日から、ネットの録画映像で見られるようになった。他人の目より、自分の体験。議会のホームページから、自身の耳目で確かめる機会がやって来た。

 

 今回の池澤発言で、ビラをめぐる関連部分の一端が浮き彫りになった。しかし見えないこともまだ多い。池澤陣営の選挙対策本部は多くの政党や団体で組織されていた。問題のビラを発行した確認団体の実体は? ビラ作成を実際に企画、実行した経緯は…。西東京市の舞台は、限られた地域の枠組み。視界を広げると、また別の風景が見えるかもしれない。問題の根は深く、波紋はまだ広がっている。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・議会インターネット中継(西東京市Web
・池沢たかし(公式サイト

 

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「原案レベルの原稿を見た」「確認団体の判断で、と話した」 池澤市長が法定ビラ2号で「市民にお詫びする」」への1件のフィードバック

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    緊急質問の発言が録画映像で見られるようになりました。関係箇所を過去形にするなど差し替えました。(北嶋)

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