記者会見

西東京市長選挙の無効を求めて東京高裁に提訴 市民39人が申し立て棄却裁定の東京都選管を相手に

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙 オン 2021年8月14日

 今年2月に行われた西東京市長選挙で、市内に配布された法定ビラが対立候補に関する事実を歪め虚偽を公にし、選挙人の自由な判断による投票を妨げ選挙の自由公正が失われたとして、西東京市民39人が8月13日、東京都選挙管理委員会(澤野正明委員長)の申し立て棄却裁決の取り消しによる市長選の無効を求め、東京高等裁判所に訴えを起こした。「怪文書」とも言われた法定ビラ問題が選挙からほぼ半年後、法廷の場で審理されることになった。(写真は、会見で訴訟の内容を説明する原告の市民と弁護士)

 

 西東京市長選挙は2月7日に投開票が行われ、前副市長の池澤隆史氏が3万4299票、前逗子市長の平井竜一氏3万2785票、会社員の保谷美智夫氏3256票となり、当選した池澤氏と次点の平井氏とは1514票、投票総数の2.15%という僅差だった。

 

法定ビラ2号表

池沢陣営が選挙戦終盤に配布したビラ(表)(クリックで拡大)

法定ビラ2号裏

新聞記事を抜粋、引用した裏面。最後に反共・反左翼スローガンが見える(クリックで拡大)

 訴状によると、問題の法定ビラ2号は池澤氏の確認団体「明日の西東京を創る会」(指田純会長)が西東京市選挙管理委員会に届け出た上で、投票日直前に新聞折り込みやポスティングによって市内全域に配布した。表に「逗子での失敗のリベンジは逗子市でやってください。ここは西東京市です」と大書。裏は平井氏の逗子市政に関する新聞記事などを抜粋し、平井氏の失敗を印象づける「悪しき意図」を持って「意図的に抽出し」「前提条件を割愛し」「一部を切り取り」、事実を歪めて虚偽を公にしたとして、公職選挙法第235条2項(虚偽事項の公表罪)に当たるとした。

 

 またこのビラに関して、「事前審査は検閲につながる恐れがあると理解」しているが、異議申し立ての審理を通じても「ビラの違法性を判断せず、事後的にも実質的審査権がないとすれば、選挙管理委員会の存在意義・存在価値がなくなる」と主張。公務員は「犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」(刑事訴訟法第239条2項)のだから、違法性のあるビラの判断をしないのは公務員の義務を怠っている、とも指摘している。

 

 西東京市民60人は2月22日、同市選挙管理委員会に選挙無効の異議を申し立てた。同月30日の棄却決定を不服として市民ら85人が4月21日、東京都選挙管理委員会に市選管の決定取り消しと選挙無効を求めて審査を申し立て、7月14日に棄却されて今回の東京地裁提訴となった。

 

東京高裁に提訴

記者会見する原告ら。左から星出卓也さん、山口あずささん、矢澤曻治弁護士(東京・霞が関の司法記者クラブ)

 

 提訴後の記者会見で、原告総代の山口あずささんは「ビラの内容はよそ者排除。こんなビラがまかれる選挙は恥ずかしいし、私たちも傷付いた」と述べた後、相手候補を当選させない目的で事実を歪め虚偽を公にする者は公職選挙法第235条(虚偽事項の公表罪)第2項によって、4年以下の懲役か禁固、100万円以下の罰金となると指摘。「このビラを審理で判断しない、権限がないというのなら、選管は何をするところなのか」と訴えた。

 

 原告代理人の矢澤曻治弁護士は「相手候補を誹謗し、名誉を毀損するような法定ビラが多くの市民に配布された」と述べ、「事後的にもそういうビラの内容が審査できないとしたら、選挙管理委員会の意義と価値が問われる」と語り、それだけでなく「選挙の中立や公正が損なわれ、ひいては選挙によって民主主義を実現するという立憲主義の基盤を損なうことになる」と訴訟の意義を強調した。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・令和2年度第 21 回西東京市選挙管理委員会(PDF:428K)(西東京市Web
・令和3年選挙管理委員会開催報告(東京都選挙管理委員会

 

北嶋孝
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