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「みんなの学校」上映会から続く道

みんなの学校上映会チラシ [1]

 一本の映画がきっかけになって、学校と子育てを考える試みが西東京市で続いています。映画を見て、上映会を実現して、講演会が開かれる。対話カフェが後を引き継ぎ、話し合いの道がこれからも延びていく-。映画「みんなの学校」上映の広がりを、母親たちのライターチーム「ままペンシル」の徳丸由利子さんが報告します。(編集部)

 4月10日(日)、西東京市内で「ここからはじまる西東京の新しい子育て」について一緒に考える「対話カフェ」が開かれました。この対話カフェは、2月11日(木)にドキュメンタリー映画「みんなの学校」の上映会をうけて、その感想をシェアしようという試みのひとつです。2月27日には、映画に登場した学校の元校長による講演会もありました。今後もイベント開催が予定されています。

 ひとつのイベントを企画するだけでなく、連動したイベントが時期をあけて開かれ続ける、これはあまり例のないことです。この珍しい試みに、実際に参加してきました。

 「みんなの学校」は、大阪の公立小学校・大空小の一年間を追いかけたドキュメンタリー映画です。この映画は、2015年2月に渋谷・ユーロスペースで封切られて以来、各地で自主上映会が開かれ続けています。文化庁芸術祭大賞など数々の受賞をほこり、登場する校長の手記「みんなの学校が教えてくれたこと」も発行されています。

 大空小は、1学年2クラス程度の小さな公立小学校です。通う子どもたちにはいわゆる知的障がいなどの困難を抱えている子も多いのですが、そうした子どもが通う特殊学級は、この学校にはありません。同じ教室の中にさまざまな子が混在し、互いを認め合いながら(認め合う方法を学びながら)日々を過ごしています。

 「あの子が入るなら、自分の子には違う学校を選びたい」とまで、周囲の保護者に警戒された、いわゆる荒れた子。他の学校では、学期に1回しか登校できなかった子。授業中に落ち着きをなくしてしまい、教室から出て行きたがる子。彼らをそのまま受け入れるのは「地域の子どもが通えるのが公立の学校でしょう?」という当たり前のようで難しそうな一点でした。

 「学校が安心して通える場所であれば、子どもはおちついて学び、生活してゆけるようになる」と、校長は信じています。そして実際に、他の学校で問題児とされ転入してきた子どもも、しっかりと学び、胸を張って卒業してゆくのです。

 この学校を作っていたのは、子どもたちであり、教師たちであり、保護者であり、地域の人々でした。花壇を整える地域の方の存在を学校が子どもに伝えることで、子どもが花の向こうに地域の方を感じる、通学路で見守る地域の方と子どもとの関わりを学校が知っているなど、随所に、地域と学校との連携が出てきます。教師は転任・退職がありますし、子どもは卒業してゆくけれど、地域の方はそこにいて、学校を守り続けてゆくことができるのだと、映画から伝わってきました。だから“みんなの”学校なのだと。

 

600会場 [2]

上映を待つ満席の場内(上)。2月11日の上映後、感想が次々に書き込まれる(下)(写真は筆者提供) [3]

上映を待つ満席の場内(上)。2月11日の上映後、ボードに感想が次々に張り出される(下)
(写真は筆者提供)

 

 2月11日の上映会は、西東京市田無町のコール田無で行なわれました。3回の上映に加え、観客同士の感想シェアタイム、校長の手記を企画した編集者によるワークショップという充実した内容で、上映会チケットはすべてソールドアウト。当日のチケットキャンセルを待つ列ができたほどの盛況ぶりでした。子どもを膝の上に乗せるなどして一緒に見ることもできる回もあれば、子どもを預かる場所も準備されていたため、多くの親たち・子どもたちが見ることができました。夜の回に駆けつけた大人の姿もありました。

 この上映を実現させた「みんなの学校西東京上映実行委員会」には40もの団体が参加しました。子ども支援のNPOから一般企業まで、多種多様な人々です。

 スタートは、上映会の半年ほど前に、一緒にこの映画を見に行った3人の女性が「自分たちの地元で見たいね」と感じたこと。最初は3人だったこの想いが、さまざまな人へと広がり「当日は参加できないけれどチラシの配布は手伝えます」など、それぞれが自分にできることを持ち寄って、すばらしい一日を作り上げました。

 2月28日には、実行委員だったNPO法人子どもアミーゴ西東京主催で、大空小を退任なさった元校長の講演会が開かれました。会場は田無町の市民会館。こちらも参加者は300人をこえました。

2月28日、開場を待つ人々の列。閉会後に行なわれた校長の手記へのサイン会にも長蛇の列ができた。(写真は筆者提供) [4]

2月28日、開場を待つ人々の列。閉会後に行なわれた校長のサイン会にも長蛇の列ができた。
(写真は筆者提供)

 映画では描かれなかった「ここだけの話」満載の講演会は、笑顔と拍手とちょっと涙に包まれました。卒業した子が時折学校に顔を出すというエピソードに、小学校が子どもにとって大切な場所だったことと、成長した自分を先生に見せたいという想いがあるのだろうということ、そして困ったことがあったときのより所でもあるのだということを感じました。

 <写真:2月28日、開場を待つ人々の列。閉会後に行なわれた校長の手記へのサイン会にも長蛇の列ができた。(写真は筆者提供)

 4月10日には、「みんなの学校」から得たことを共有し、その想いの実現についてなにが必要か話し合うための対話カフェが開かれました。こちらの主催は実行委員会です。

 会場は、共同保育所にんじん。保護者も保育者も一緒に保育に参加しながら、創立30年を数える保育施設です。

 会場の都合もあり、事前予約制で行われた対話カフェの参加者は21名(他に子ども4名)。映画を見た人も見ていない人もいたため、最初に映画のPRムービーを見てから、小さなグループにわかれて話し合いました。

 「みんなの学校」に出てくるのはすべての子どもを受け入れる学校だが、現在の西東京市の学校ではそれは難しいのではないだろうか、ではなぜ難しいのか? すべての子が共に学ぶのは本当にすばらしいことなのか? 子どもにとって、良い学びとはなんだろうか? 社会とはさまざまな人で成り立っているものだと知るには、小学生のときにさまざまな人と関わるのが良いのではないだろうか? などなどなどなど、多くの話題が飛び出し、多くの議論・対話が生まれました。

 対話の中で自然にうまれてきたこれらの「?」に、おそらく答えはひとつではないでしょう。そして、誰かと話す中でしか、自分にとって、あるいは子どもにとっての「夢の学校」や、夢で終わらないための方法は見つからないものでもあるように感じました。だからこそ、対話カフェを開く意味があり、参加する楽しみもあるのだと思いました。

対話カフェのメモ(写真は筆者提供)クリックで拡大 [5]

対話カフェのメモ(写真は筆者提供)クリックで拡大

 5月28日(土)には、西東京市新町の「にわとくら」でバーベキューしながらの企画があります(事前予約制)。さらに7月にも企画予定があります。

 共に考え、対話する中から、なにが生まれてくるのか。対話の中でうまれる「なにか」との出会いが楽しみな試みは、これからも続いてゆくのです。

 子育て中の方も、そうでない方も、是非一度参加なさってみてください。すべての地域に公立小学校がある以上、地域に住む全員が「みんなの学校」の作り手になりうるのですから。
(徳丸由利子@ままペンシル)

 

【関連リンク】
・映画『みんなの学校』公式サイト>> [6]
・映画「みんなの学校」西東京自主上映会(facebook [7]
・みんなの学校西東京 コミュニティ(facebook [8]
・ままペンシル >> [9]

 

【筆者略歴】
徳丸由利子(とくまる・ゆりこ)
 茨城県勝田市(現・ひたちなか市)に生まれる。西東京市に住んで10年近く。息子の誕生をきっかけに、子どもがいるからこそ気づくことを活かそうと、母親によるライターチーム「ままペンシル」に参加している。現在、息子は市内の幼稚園へ通っている。

 

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