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市民団体の機関紙を配架制限 西東京市公民館が選挙期間中

「憲法かわら版」第34号の表紙(クリックで拡大) [1]

「憲法かわら版」第34号の表紙(クリックで拡大)

 憲法擁護を掲げて活動してきた「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」の機関紙「憲法かわら版」第34号が7月1日から10日まで、市内の公民館で「公職選挙法に触れる」などとして告知棚などに配架されなかった。選挙が終わった11日から配架、公開されたが、東京都知事選挙期間中(7月14日-31日)はまた撤去された。機関紙は選挙終了後に公民館の棚などに戻された。「市民の会」はすぐに抗議。3ヵ月余り経っても双方の見解は平行線をたどっている。何が違い、何が問われているのか。双方の言い分を聞いた。(編集部)

「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」の見解 [2]
西東京市公民館の大橋一浩館長の見解 [3]

 

◎市民団体の意見・主張の機会を阻むな
 (SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会)

 

写真は「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」のメンバー。左から中川航一さん、谷口捷生さん、森武郎さん、西紘洋さん、高橋良彰さん(田無公民館) [4]

「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」のメンバー。左から中川航一さん、谷口捷生さん、森武郎さん、西紘洋さん、高橋良彰さん(田無公民館)

 

政治団体ではない、選挙運動ではない

-西東京市内の公民館から、みなさんの機関紙「憲法かわら版」が撤去されました。公民館側は、「憲法かわら版」の内容が公職選挙法で禁じている内容だと見なして、7月の参院選と都知事選の期間中、配架制限したと聞きました。いったいどういう見解の相違があったのでしょうか。

西紘洋 公民館側は、私たち(SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会)を「政治団体」と見なしています。しかし私たちは、憲法擁護の活動を進めている「市民団体」です。ところが今回の公民館の考え方も総務省の見解も、少しでも政治的な意見を言うと「政治団体」「選挙運動」だとして活動を制限する。そういう見解自体、私たちは憲法21条に違反する、言論や表現の自由を制限すると言っているのです。
 市民団体のチラシなどが公職選挙法に違反して取り締まられたケースはほとんどありません。全国各地の選挙管理委員会でも摘発の例は聞いていません。なのに、西東京市の公民館が配架制限した。そこに危機感を持っています。

(注)【選挙運動とは】(総務省サイト [5]
 判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。
(注)選挙運動と政治活動の違いは?(東京都選挙管理委員会 選挙Q&A [6])
 政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が政治活動と言われています。
 ですから、広い意味では選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別しており、それらを定義付けすると次のように解釈できます。
 【選挙運動】特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること。
 【政治活動】政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
(注)憲法21条
 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

-もう少し詳しく言うと…

西 公職選挙法に違反すると判断する権限が公民館にあるかどうか。まずこの点が問題です。公民館は社会教育法に基づいて活動している公共施設です。社会教育法の精神は、地域住民と一緒になって地域文化を向上、発展させることにあります。そういう公民館が、今回のような行動に出たことは、法の趣旨からいってもおかしいし、選挙管理委員会が見解を出しているわけでもないのに公選法を持ち出して、公民館が配架制限するのもおかしい。二重の意味でおかしいと思います。

-ほかの方は、どうお考えですか。配架制限が間違っているのはなぜですか。

森武郎 公選法が憲法違反だとの判例は出ていないので、そこは喧嘩にならない。そこがちょっと違うけれども、公民館の今回の行動は明らかに、一切の表現の自由を保障した憲法に違反します。それから私たちの活動が、公職選挙法でいう「政党その他の政治活動を行う団体の政治活動」という見方は間違いですよ。私たちの活動は政治活動ではなく、国民の一般的な声であり、運動です。私が争うなら、そこです。しかも選管の意見を聞いたと言っても、公民館長に判断を下す権限があるのかどうか。そこが問題です。

-政治活動ではない、政治団体とは違う、市民団体、市民活動だとのご意見だと思います。ただ、憲法を守る、9条改憲に反対するという市民の声が大きな運動になれば当然、政治性を帯び、政治運動に転化するでしょう。むしろ、政治課題として大きくなることを求めて運動するのではありませんか。

西 私たちの活動は、公職選挙法に書かれている「政治活動」には該当しない、と言っているのです。公選法は「選挙活動」と「政治活動」を分けています。われわれが政治的な活動をしているという一般市民の見方はあると思う。実際の政治に影響を与えていこうという意図もあります。けれども、公職選挙法で言う政治団体ではない。特定の政党や候補者を取り上げて宣伝したら、それは公選法の選挙活動になるでしょう。しかしわれわれは、憲法を守る立場から活動している団体です。ですからわれわれを、政治団体に当てはめるのはおかしい、と言っているわけです。

高橋良彰 社会教育法第20条(目的)では「公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする」となっています。
 また第23条(公民館の運営方針)では、「公民館は、次の行為を行つてはならない」として、「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること」を挙げています。
 だから選挙期間中に「特定の候補を支持」することが公選法に違反するのであって、われわれはそんなことはしていない。公選法は選挙期間中といえども、原爆反対とかTTP反対とかいう市民運動を禁じてはいないんです。だから公民館の判断はおかしいと言っているわけです。

-「憲法かわら版」のトップ記事では、「日本を変えよう、一緒に変えよう」という見出しの下に「野党合意の政策協定」内容が箇条書きされています。中段には「7月は参院選」の横断幕を掲げた写真とともに、「みんなのための/政治をいま」とのスローガンが掲載されています。今回の参院選では、与党候補に対抗して、野党が統一候補を立てました。となると、これらの内容は、特定候補の支持ではないでしょうか。

 東京都選挙区の定員は6人です。一騎打ちではありません。野党もそれぞれ候補者を立てましたから、そういう議論は成り立ちませんね。機関紙で特定候補者の名前も出していませんから、いまのご指摘には該当しません。
>> next page [7]

 

公民館長が決められるのか

-みなさんと真逆の立場に立って、憲法改正を掲げる市民団体が「日本を変えよう」という趣旨の機関紙を作成したら、選挙期間中でも公民館に公開してしかるべきとお考えですか。

西 当然です。表現の自由だから、制限されてはなりません。
谷口捷生 そういうみなさんの意見も出してくださいよ、それも見て市民が判断します、というのが私たちの考えです。選挙期間中だからこそ、そういうさまざまな意見が一層大事になるのではないでしょうか。

-そうするとますます、選挙活動と密着しませんか。

 特定候補を応援しているわけではないので、選挙活動にはならないでしょう。
西 公民館から届いた文書にはこう書いてあります。「当該チラシには消費税引き上げ反対、野党候補勝利、安倍内閣不信任、反原発、TPP反対…等々の主張が述べられており、公職選挙法第201条の6に該当すると判断します」。要は、政治的なことを書いたらいけませんよ、と言ってるわけですよ。

(注)公職選挙法第201条の6
政党その他の政治活動を行う団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示並びにビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用については、参議院議員の通常選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。

-そうすると、次は司法の場で判断を仰ぐことになりますか。

西 最終的にはそうなるかもしれないけれど、いまはまだそういう段階ではないですね。

-公民館側とやりとりはありますか。

西 ありますよ。先日も柳沢公民館の利用者懇談会に参加して、この問題を取り上げて、対応がおかしいではないか、と発言しました。
高橋 次からこういうことがないように、と言いました。(公民館側の)返答はありませんでしたけど。
中川航一 ひばりが丘公民館の利用者懇談会でも、この問題が取り上げられたと聞きましたね。
高橋 柳沢公民館の利用者懇談会で、われわれ以外でも発言した人がいました。

 もう一つ問題なのは、同種の問題が他の自治体で起きていないことではないですか。似たようなケースはありますが、公選法第201条の6に関係して、出版物がダメだと言っている例はないようです。多摩地区の類似ケースとしては、あきる野市でありましたね。
西 あきる野市のケースは、選挙期間中ではありません。書かれている文言が政治的だと言うことで公民館が配架を見合わせたと聞いています。
中川 公民館長との話し合いで分かったことですが、選挙管理委員会や教育委員会の教育部と相談したけれども、公民館長の判断で配架しなかった、と明言していました。公民館長の独自判断でできるのでしょうか。できるとしたら、大問題ではないですか。

-でもこの問題は、公民館長が施設責任者として判断しなければ、それはそれで問題になるのでは。どう判断するか、どういう理由かは別ですけど。

高橋 でもこういうことを放置すると、言論の自由を制限するようなことが、独自の判断でどんどんやられてしまうのではないか。そこは歯止めを掛けたいという思いがあります。
中川 もうひとつ理由として言っていたのは、こういうことを館長が差し止めないと、罰せられるとしきりに強調していました。何が根拠になるのか分かりませんけど。

-人事異動などで隠れた評価が下されるかもしれないという危惧はあるでしょうけど、罰せられるというのはどうでしょうね。

 公選法第201条の13で、「公共の建物内での頒布」をしてはならないとなっています。そこに引っかけられるというのでしょうか。

(注)公職選挙法第201条の13
政党その他の政治活動を行う団体は、各選挙につき、その選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、政治活動のため、次の各号に掲げる行為をすることができない。(中略)
三  国又は地方公共団体が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすること。


中川
 ただね、公選法違反なら、選挙管理委員会か警察から注意がくるのが普通でしょう。それが、公民館だけの判断で文書が差し止められるというのがどうにも理解できない。
>> next page [8]

 

歯止めを掛けたい

-みなさんの機関紙「憲法かわら版」を、同じような内容でこれまでの選挙期間中も公民館に置いてきたのですか。

谷口 置いてきました。昨年暮れの衆院選でも、同じように政策への意見を載せた機関紙を公民館に置きました。前回の市会議員選挙のとき、立候補者全員の政策アンケート調査結果を一覧にして載せ、選挙期間中にやはり公民館にも出しています。
中川 公選法第201条はとても曖昧な条文、項目です。実は弁護士にも相談しました。判例はないようです。

-もっとも争点になりやすい条文のはずなのに、判例がないというのは珍しいですね。

中川 政府の政策に反対すること、たとえばTTPが実施されたら、いのちや暮らしが守れなくなるという意思表示も、選挙中だという理由で出来なくなるのか。公民館長の判断で、多くの市民の目に触れないように出来るのか。表現の自由を謳った憲法の下で、そういうことが許されていいのか。そこをぜひ、多くの市民に知ってもらいたいと思います。
 次回以降、こういうことがないように、なんとか歯止めを掛けたいと思います。
(聞き手:北嶋孝)
>> next page [3](大橋一浩西東京市公民館館長インタビュー)

 

【注】「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」は2013年、憲法改正手続きを各院議員の3分の2から過半数に変えようとする動きに反対し、市民の意見広告を新聞に掲載する活動を切っ掛けに生まれた。機関紙「憲法かわら版」を毎月発行。講演会や学習会を企画し、市内の「9条の会」などとも連携して活動している。
http://save-kenpou.jimdo.com/ [9](公式HP)
https://www.facebook.com/savethe9jou/ [10](facebook)

 

【関連リンク】
「憲法かわら版」第34号 [11](2016年7月1日 PDF 764KB)
西東京市公民館の通知 [12](2016年7月1日 PDF 40KB)
公民館長への抗議文 [13](2016年7月20日 PDF 82KB)

 

 

選挙期間中の政治活動はできない
(大橋一浩西東京市公民館館長インタビュー)

 

柳沢公民館の配架棚には、いまは「憲法かわら版」が置かれている(2016年10月7日撮影) [14]

柳沢公民館の配架棚にいまは、「憲法かわら版」が配架されている(2016年10月7日撮影)

 

-まず事実関係を確かめたいと思います。「SAVE ザ 9条・SAVE ザ 憲法 西東京市民の会」の方が機関紙「憲法かわら版」第34号を柳沢公民館に持参したのが7月1日でしたか。

大橋一浩館長 そうです。配架してほしいとのことなので、「内容を確認させていただいてから」ということで預かりました。内容を見て、その日のうちに連絡しました。

-随分早く決断したと感じますが。

大橋 選挙管理委員会に対して、こういう内容の機関紙の配架は公職選挙法に照らしてどう判断されるかと問い合わせ、「公選法に抵触する可能性がある」との意見をいただいたので、選挙期間中は配架できないと判断しました。

-これまで公民館で、選挙期間中に配架を制限したことはありますか。

大橋 いろんな団体の方々が機関紙やチラシを作って持って来ますが、今回のような内容の文書はなかったと聞いています。今回はあまりにも直接的な表現があったので、ご遠慮願いたいとお伝えしました。

-選挙がないときに配架制限した例はありますか。

大橋 それはありません。

-教育委員会には報告していますか。

大橋 機関紙を持参された7月1日は金曜日でしたので、教育委員会と調整したのは週明けです。

-では具体的に、公職選挙法のどこに抵触するのでしょう。

大橋 公職選挙法(第201条の6)では、政治活動を行う団体は選挙期間、街頭演説会やポスターの掲示のほか、ビラの頒布などの政治活動は出来ないことになっています。
 東京都選挙管理委員会のホームページに「政治活動と選挙運動はどのように違いますか」という「Q&A」があり、そのなかでこう書いています。

 「政治活動とは、『政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補を支持し、若しくは反対することを目的として行う直接間接の一切の行為』を指しています」

 今回の「憲法かわら版」には、「安保法制の廃止と集団自衛権の行使容認の閣議決定の撤回、安倍政権の打倒、国政選挙で与党その他の補完勢力を少数に追い込む」など、特定の政党に対する批判が載っています。西東京市の選挙管理委員会もここの部分は、「西東京市民の会」のみなさんの政治活動に当たると理解されてしまう可能性があるので、期間中は遠慮願った方がいいのではないか、とのことでした。

-参議院選挙は6月22日公示なので、7月1日は選挙期間中です。いつまで配架制限したのでしょう。

大橋 選挙が終わる10日まで。翌11日から配架しました。でもすぐに14日から東京都知事選挙になったので、また引き揚げました。選挙が終わった8月1日から元に戻しました。

-西東京市以外の公民館で、今回の選挙中に機関紙やビラなどが制限された例を聞いていますか。

大橋 多摩地域で何市かであったと聞いていますが、確認していません。

-選挙関連の問題を、公民館が判断する根拠はどこにありますか。

大橋館長 公職選挙法201条の13項で、政党その他の政治活動を行う団体は選挙期間中、「政治活動のため次の各号に掲げる行為をすることができない」として、「国又は地方公共団体が所有し又は管理する建物において文書図画の頒布をすること」を挙げています。

-「市民の会」は、前回の衆議院選挙や市長選挙のときも同じように機関紙を作って公民館に置いてもらったと言ってます。特に市長選のときは候補者アンケートを載せたりしたそうです。

大橋 そのときの具体的な内容を知らないのでなんとも言えませんが、取り上げるのがあくまでも政策論争なら、それは政治学習の一つになりますから、おそらく政治活動に当たらないだろうと思います。

-東京都選管のホームページに載っていた「Q&A」は、タイトルが「政治団体の手引き」という分厚い文書の一部で、政治団体の設立や届け出の手続きなどが解説されていました。「市民の会」は自分たちは「市民団体」であって、「政党」や「政治団体」ではないと言っています。

大橋 ただその文書の中では、政治活動が定義され、選挙期間中は出来ないことが定められています。そこが大事なところではないでしょうか。

-「市民の会」の話を聞くと、社会教育施設としての公民館が率先して、市民活動や表現の自由を制限するような措置は止めてほしいと強く思っているようです。その点はどうでしょう。

大橋 選挙期間でなければ、一般的な政治学習はまったく問題ありません。おおいに進めてもらっていいわけです。ただ選挙に関しては、公職選挙法や社会教育法で「してはならない」と定められたことがあり、それは遠慮していただきたいのです。政治活動と政治学習は微妙に似ている部分もありますが、そこは十分に議論していただいて、政治学習活動を展開していただきたいと思います。
(聞き手:北嶋孝)

(注)社会教育法第23条(公民館の運営方針)
公民館は、次の行為を行つてはならない。
一  もつぱら営利を目的として事業を行い、特定の営利事務に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること。
二  特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。
2  市町村の設置する公民館は、特定の宗教を支持し、又は特定の教派、宗派若しくは教団を支援してはならない。

 

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