第38回 会社人間だった私の地域デビュー

 

 5.地域の偏り・産業の衰退

 

 このテーマを取り上げたもう一つの理由は、西東京市の産業が衰退してきていることへの懸念だ。

 西東京市は、典型的な郊外都市で、都心で働くサラリーマンが多い。新宿・池袋の副都心に急行で20分と便利、なのに23区内より地価が安いからだろう。常住地の人口(住んでいる人)で昼間人口(従業地・通学地でみた人口)を割った昼夜間人口比率でみると、区部では、100を超えるが、市部の多くは100を下回り、市部のなかでも、西東京市は、80を切ってかなり低い。昼間は、西東京市に他地域から3万人弱が通って来ているが、西東京市から他地域に7万人が通っている。

 

 

 驚くのは、この10年間で、ほとんどの産業が衰退していることだ。平成21年と平成28年の事業所数と従業員数を見ると、みごとなほどに、どちらも減少している。唯一急増しているのは、医療・福祉業だ。交通の要衝であり、青梅街道の宿場町として栄えたという歴史が悲しくなるほど、卸小売業も宿泊飲食業も減少している。

 

(出所)H21年は、経済センサス基礎調査報告、H28 年は、経済センサス活動調査報告
(資料)統計にしとうきょう

 

 人口構成に合わせ、老人介護施設、病院、保育所などの需要に応えているのだから、それで良いのかもしれない。しかし、まちの繁栄や魅力という点で、これでよいのだろうかと懸念してしまう。もし、大きな災害などが起きた場合、地域の産業が衰退し、地域で働く世代があまり居ないのは、なんだか心細い。先の生涯現役相談窓口では、産業の3つの柱として、農業、福祉、小売を掲げている。また、働きたいとの相談でも、「近くで」との要望が強いとのことだ。地元の産業振興にもつながって欲しい。

 起業、あるいは人を雇用する企業が増えてくれたら、まちに深みが増し、ワクワクするようになるのではと切に思うのだ。
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