第40回 「おひとりさま」の老後:入院・手術を受ける時

 

5.身元保証等高齢者サポートサービス

 

 身元保証人が居ないことで困る事例が増えているのだろう。今回、本稿を書くにあたってネット検索してみると、「身元保証等高齢者サポート」を提供する事業者があるのを知った。表1のようなサービスを提供してくれる。こうした事業は、多くの場合、公益法人、NPO法人、弁護士・司法書士・行政書士、葬祭業者等、様々な主体による民間事業として行われている。一部のサービスのみ提供している場合もあるが、複数のサービスを一括して提供する事業形態もみられる。遠い親族に迷惑を掛けるくらいなら、このようなサービスを利用したら安心できるのではないか、という気持ちになる。

 

身元保証2

(表1)身元保証等高齢者サポート事業において提供されるサービスの例
(出所)内閣府消費者委員会『身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての調査報告』平成29年1月

 

 ところが、平成28(2016)年、事業者の中でも大手とみられていた公益財団法人日本ライフ協会が、利用者が預託していた金銭の流用問題が発覚し、公益財団法人の認定を取り消されるという事件が起きた。同協会は、その後経営破綻し、たくさんの利用者が被害を受けた。これをきっかけに、国でも、身元保証人がいない人についての課題が意識されるようになった。

 この事件が発生したことを受け、内閣府消費者委員会から「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」が出された。

 この建議に対応し、消費者庁から、平成30(2018)年8月30日に各都道府県・政令指定都市の消費者行政担当部局宛に、身元保証等高齢者サポートサービスを利用するにあたっての啓発資料『「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ』が作成・提供された。しかし、これを見ただけでは、どのように事業者を選んだらよいのか良く分からない。

 また、厚生労働省は、「身寄りのない人の入院及び医療に係わる意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を2019年にとりまとめた(概要はこちら)。ガイドラインでは、①あくまでも本人の意思を尊重する必要があること、②成年後見人制度を利用者にとって使いやすい方向に改善していくこと、③ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の必要性などがあげられている。

 ACPとは、「人生会議」ともいわれ、意識がはっきりしているうちに、自分の大事にしていることや希望する医療・ケアについて、かかりつけ医や大切な人たちと話し合いを重ね、記しておくことである。ただ、本人の意思も、症状の変化により変化することがあり、必要な都度、会議を開き、内容を記すとよいらしい。これにより、自分が決められなくなった時でも、自分の意向を反映させた医療やケアを受けることが可能になるという。

 しかし、それでなくても忙しい医者やケア関係者に集まってもらうのは、なかなか気が引ける。「ピンピン期」には、自分で「エンディングノート」を書き、その所在や、そこに記してあることを尊重して欲しい旨、誰かに伝えておくのが良いかもしれない。その後の「ヨタヨタ期」に入れば、自ずとかかりつけ医や介護サービスの方々など関係者が増えるので、ACPのような話し合いの機会が増えることになるのだろう。
次のページに続く

【目次】
1.ヨタヨタ・ドタリ期への備え
2.おひとりさまの備え
3.入院するときに求められる身元保証人
4.病院にとってのリスク
5.身元保証等高齢者サポートサービス
6.介護保険制度と成年後見人制度の利用
7.増加が見込まれる「おひとりさま」
8.身じまいの作法の必要性

 

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