第41回 「おひとりさまの老後」:ヨタヨタ・ドタリ期から死まで

 

2.在宅か施設か-わがままな私は在宅にしよう!

 

 おひとりさまが自分で身の回りのあれこれができなくなった段階では、施設に入った方が安心に思える。何人かの知人は、まだ元気なうちに民間の老人ホームに入り、そこで執筆活動をしたり、趣味のサークルで楽しんだり、コロナの前は良く散歩に出かけていた。食事の支度をしなくてよいし、おそらく洗濯や掃除もお願いできるのだろう。いざとなれば、ホームのスタッフが医師を呼び、必要に応じて入院させてくれる。

 ホームに入った知人の生活が快適そうに見えるので、先日大がかりな家の改修をしなかったら、老人ホームに入所したのに、と一瞬後悔した。しかし、一方で、現在嫌々やっている家事を全くせずに、ホテルのお客さんのような暮らしをずっと続けるというのも、飽きてしまわないかと懸念される。たまに休みを取って旅行し、上げ膳据え膳の暮らしをするのは嬉しいが、それが永遠に続くとなると寂しい気もする。

 私の母は、入院し、白い壁白い天井の病室で上げ膳据え膳の暮らしをしたら、三週間ほどで認知症が始まってしまった。ところが、自宅に帰った途端、元に戻った。自宅は、彼女にとって城であり、「自分が采配を振るわなければ」という意識が芽生えるからではないかと思われる。やらなければならない仕事があるというのは、おそらく、認知症にならないために大事なのかもしれない。

 わがままに生きてきた私がホームに入所して、全く新しい人間関係のなかに入るのも、面倒くさい気がする。知人によると、同じホーム内でも、金額に応じて住む階層も異なり、人間関係にもそれが反映されると言う。たとえば、お金持ちの奥様一派と食堂やサークル活動で一緒になり、高齢になってから肩身の狭い思いをするのも噴飯ものだ。

 一口に老人ホームと言っても、表2のようにいろいろな種類があり、費用もまちまちだし、入所の要件もいろいろだ。入所するとなったら、空きがあるかを確認し、懐具合とも相談しなければならない。民間のサービスが行き届いたホームに入ろうとすると、手元の資金不足に悲しい思いをしそうだ。

 

老人ホームの種類と費用

表2 老人ホームの種類とおよその費用、入居条件
(出所)介護の基本【一覧で簡単にわかる】老人ホーム11種類の特徴や違い・費用・選び方(そよ風

 

 一方、在宅ケアや在宅医療の仕組みも昨今だいぶ充実してきているようだ。この連載の第一部(第19回)で取り上げたように、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保」を目指し、平成26(2014)年に、「医療介護総合確保推進法」(注3)が制定された。それを受けて、西東京市でも「在宅医療・介護連携推進事業」に取り組んできた(注4)

(注3)正式名称は、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」
(注4)西東京市における在宅療養の取り組みについては、こちら>>

 西東京市では、平成28(2016)年10月に在宅療養連携支援センター「にしのわ」が設立されたほか、毎年、在宅ケア・医療に従事する専門職が一緒に集まる勉強会が実施されている。在宅ケア・医療に従事する専門職とは、在宅医師、病院医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護、訪問介護、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャーのこと。また、平常時には、かかりつけ医が訪問診療している場合でも、いざとなった時に入院できるよう病院との連携システム、在宅療養における後方支援病床確保事業も構築されてきている。

 

 >>次のページへ続く 3. 在宅で死ねるか-孤独死⁉ 死んだ経験がないので不安だ

【目次】
1.ヨロヨロ期-まずは、民生委員・地域包括支援センターに相談
2. 在宅か施設か-わがままな私は在宅にしよう!
3. 在宅で死ねるか-孤独死⁉ 死んだ経験がないので不安だ
4. 任意後見制度の活用-2,000万円の預貯金で100歳まで
5. 遺産、死亡給付金と税金
6. 任意後見人契約・尊厳死宣言・遺言-公証人役場へ

 

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