第41回 「おひとりさまの老後」:ヨタヨタ・ドタリ期から死まで

 

3.在宅で死ねるか-孤独死⁉ 死んだ経験がないので不安だ

 

 在宅ケア・在宅医療の仕組みは、充実されてきているが、本当に最後まで、在宅で暮らし、死ねるのだろうか。在宅医療を考える会編集の『はじめての在宅医療-10 の素朴な疑問に在宅医がお答えします―』には、在宅医療を受けながら在宅死を迎えることについて、素朴な疑問に分かりやすく答えてくれており、とても安心する。

 在宅医療は、高額なのではないかと考えがちだが、このパンフレットによれば、「週1回の訪問診療と週2回の訪問看護、1割負担」の場合、ひと月にかかる費用は、1万1,760円となっている。これには、緊急の往診や検査料などは含まれていない。おひとりさまの場合には、このパンフレットで書かれている「家族」に当たるところを「介護ヘルパー」に読み替える必要があり、その分費用は掛かるだろうが、在宅でも最後まで暮らせそうだ。

 

「はじめての在宅医療」

図1 「はじめての在宅医療」の表紙

 

 今日、多くの人は、病院で死ぬ場合が多いので、「看取り」に慣れていない。テレビドラマで、心電図が波打つ状況からピーっとゼロで横一線になり、「ご臨終です」と医者が言う場面は、良く見るものの自分で看取るのは未体験なので、死ぬまでのプロセスを理解できず、不安ばかりがつのる。

 しかし、このパンフレットには、たとえば、「残された時間が週単位から日数単位になった時の様子」、そして「いよいよ死が訪れ、息を引きとる時の様子」について書かれている。看取る側も、看取られる側も、心の準備ができそうだ。在宅ケア・在宅医療を受けていれば、一週間に一回くらいだれかが見回ってくれるので、たとえ孤独死しても、腐乱する前に見つけてくれるだろう。

 呼吸が停止したら、在宅主治医に連絡、死亡診断書を書いてもらう。医師は、直ぐに駆けつけなくても、継続している診療している病気で亡くなったのであれば、死んだ後でも、死亡診断書を発行できる。葬儀屋にも連絡をすれば、間もなく来てくれ、死後の処置は、訪問看護師や葬儀屋が行う。

 上野千鶴子さんは、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書、2021年)で、看取りのコストは、高い順に、病院>施設>在宅であるという。同著では、医師で全国在宅療養支援医協会岐阜世話人をされている小笠原文雄氏の『なんとめでたいご臨終』(小学館、2017年)に掲載されている在宅看取りに掛かった3カ月の費用の表を掲載している。

 それによると、「上村さん(仮名)は、おひとりさまで認知症、医療費負担1割、介護負担1割で、死の3カ月前から、夜が不安であると夜間ヘルパーを入れたため、自己負担が3~4万円掛かり、合計210万円弱であった」。小笠原医師によると、在宅での看取りの費用は、30万円~300万円であるという。

 

 >>次のページに続く 4. 任意後見制度の活用-2,000万円の預貯金で100歳まで

【目次】
1.ヨロヨロ期-まずは、民生委員・地域包括支援センターに相談
2. 在宅か施設か-わがままな私は在宅にしよう!
3. 在宅で死ねるか-孤独死⁉ 死んだ経験がないので不安だ
4. 任意後見制度の活用-2,000万円の預貯金で100歳まで
5. 遺産、死亡給付金と税金
6. 任意後見人契約・尊厳死宣言・遺言-公証人役場へ

 

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