第2回 社会に貢献したい若者が増えている

 

日本の若者意識の変化-社会に役立ちたい

 このような傾向を日本で話しても、当時、多くの人は無関心だった。病児保育を手掛けるNPO法人フローレンス等いくつかの先進事例が誕生していたものの、社会起業家を志す人は、それほど多くなかった。

 しかし、㈱マイナビが毎年調査している「大学生就職意識調査」によると、ここ16年間、1位が「楽しく働きたい」、2位が「個人の生活と仕事を両立させたい」と変わらないものの、3位の「人のためになる仕事をしたい」が継続的に高まる傾向にあることが注目される。これは、2011年の東日本大震災による影響も大きいのではないかと思われる。

(注)2011年卒以前は、ウエイトバック集計(回収されたサンプルを母集団の構成にあわせて集計する方法)を行っていない結果にて表記しています。 (出所)㈱マイナビ「2016年マイナビ大学生就職意識調査」より

(注)2011年卒以前は、ウエイトバック集計(回収されたサンプルを母集団の構成にあわせる方法)せずに表記。
(出所)㈱マイナビ「2016年マイナビ大学生就職意識調査」より

 マイナビの調査では、「人のためになる仕事をしたい」は、2013年がピークだ。この年の調査なのだが、厚労省の「日本の若者の意識に関する調査」でも、若者の7割は、なんらかの形で社会に貢献したいと考えていることがわかる。

(出所)厚労省「日本の若者の意識に関する調査」2013年9月

注)複数回答であったが、回答数ベースで集計を実施し、各選択肢の割合を算出した。
(出所)厚労省「日本の若者の意識に関する調査」2013年9月

 

 NPO法人EITC.が大手企業と協働で実施している「起業家塾イニシアティブ」は、2002年にNECとのプログラム「NEC学生NPO起業塾」からスタートし、その後複数の企業との協働が始まった。このプログラムから誕生した起業家は、2000年代の後半以降、特に2010年代から増えている。

 2013年から本格稼働したTeach for Japanでも、主旨に賛同した若者がこの活動に参画しはじめている。2011年に設立されたアショカ・ジャパンが行っている社会の矛盾を解決/軽減するためのアイデアを生み出し活動することを決めた若者(12~20歳)に事業の立ち上げ資金(10万円)を提供する「ユースベンチャー」にも、既に何人もが選ばれている。会社員をしながら、空いた時間にNGOやNPOで働く「パラレルキャリア」を目指す人も増えている。

 日本も、ようやく面白い時代になってきた。問題は、こうした若者を西東京市の活動に呼び込むにはどうしたら良いかだ。

[関連リンク]
 ・社会起業塾イニシアティブ:http://kigyojuku.etic.or.jp/
 ・Teach for Japan: http://teachforjapan.org/
 ・Code for Japan:http://code4japan.org/
 ・アショカ・ジャパン:http://japan.ashoka.org/
 ・パラレルキャリア支援サイト「もんじゅ」:http://monju.in/

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。大手銀行で産業調査を手掛ける。1987年から2年間、通信自由化後の郵政省電気通信局(現総務省)で課長補佐。パソコン通信の普及に努める。2001年~2010年には、電気通信事業紛争処理委員会委員として通信事業の競争環境整備に携わる。
 2001年から道都大学経営学部教授(北海道)。文科省の知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツエリア」に参画。5年で25億円が雲散霧消するのを目の当たりにする。
 2006年、母の介護で東京に戻り、法政大学地域研究センター客員教授に就任。大学院政策創造研究科で「地域イノベーション論」の兼任講師、現在に至る。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。
 主な著書は、『「新・職人」の時代』』(NTT出版)、『新しい時代の儲け方』(NTT出版)。『マルチメディア都市の戦略』(共著、東洋経済新報社)、『モノづくりと日本産業の未来』(共編、新評論)、『モバイルビジネス白書2002年』(編著、モバイルコンテンツフォーラム監修、翔泳社)など。

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