生死をかけた壮絶なドラマ by 賀陽智之

 「わたしの一冊」の寄稿を依頼されてから約1カ月。原稿を書くこの瞬間まで、カポーティの『ティファニーで朝食を』をおしゃれに紹介するのか、サルトルの『嘔吐』を渋く語るかで迷っていた。私の記事がインターネットに長期間掲載されることを踏まえ、どちらの本を選ぶ方が無難なのか。それぞれの本のAmazonレビューを見ながら考えている。しかし、どうしても、この2冊の本を押しのけて頭の中に浮かんでくる本がある。それが稲垣栄洋著『生き物の死にざま』だ。正確には『生き物の死にざま』と姉妹編の『生き物の死にざま はかない命の物語』の2冊である。