Print This Post Print This Post

楽しみながら「学び」が伝わる 自由学園「南沢フェスティバル」

プログラム表紙(クリックで拡大)

 自由学園は2009年から毎年、東久留米市の広々したキャンパスで「南沢フェスティバル」を開いてきました。幼児生活団(幼稚園)から初等部(小学校)、女子部と男子部(ともに中等科・高等科)、最高学部(大学部)が参加して楽しいイベントを繰り広げます。地域住民も楽しみにしています。今年は5月20日でした。どんな催しがあったのか。会場を歩いて体験した東久留米市在住の渡邉篤子さんの報告です。(編集部)

*

|| 住民も楽しみに

 「今日はお出掛け日和です」と天気予報が太鼓判を押したとおり、朝から日差しが強い。帽子や傘で日除けして開場を待つ人が正門前で列をなしている。

 西武池袋線ひばりヶ丘駅から徒歩8分の場所に10万平方メートルの広大な敷地を持つ自由学園。雑木林や湧水の流れをそのまま活かし、住宅街の中とはいえ学園全体が森の中にある。キャンパスには、関係者以外は普段は立ち入ることができない。この季節になると、キャンパスで繰り広げられる1日限りのフェスティバルを近隣の住民も楽しみに待っている。

 

午前10時前、開場を待つ人の列が長くなる

 

 自由学園広報本部の椚田結子さんによると「今年は小さい子どもたちに思い切り楽しんでもらえる企画が沢山あります」という。先ずは「おもちゃの部屋」を目指して出発した。

 

|| キャンパス探索

 少しひんやりする風が木立を吹き抜ける。「自由学園の生活を体験してシールをあつめよう」というシールラリーが行なわれている。「えをかこう」「ベルをならそう」子どもたちがやってみたい!と気軽に参加できるイベントが続く。

 「おはなをつもう」のチェックポイントに心惹かれた。「つんではいけません」は聞くけれど、「おはなをつむ」なんて久しく聞かない言葉だった。学生さんのガイドで花畑に向かう。舗装の道から一歩踏み出すと足が沈む。枯れた下草や落ち葉が積もるふかふかの道だ。左手には小川が流れている。南沢の窪地を水源とする立野川だ。靴を履いていても足裏に湿り気を感じる。

 花畑に到着。矢車草が風に揺らいでいる。ドクダミも足許で白い花を咲かせている。
 ガイドをしてくれた学生さんに話を聞いた。「高等部から自由学園に通っている」ということなので「それまでの学校生活と大きくちがうところはなんですか?」と尋ねた。「それまでは自分のことだけ考えれば良い、という環境だったが、ここでは周りのことも考えて行動する。人間関係も環境も含め大きく周りを考えるようになった」「勉強ができたとしてもそれだけでは生きて行けないと思う。ここでの生活に満足しています」と語った。

 

子どもたちを迎える矢車草

 

|| 思い切り遊ぼう

 「おもちゃの部屋」は芝生の広場の奥にあった。「コルクのつみき」「ダンボールハウスで遊ぼう」「ペタペタ貼ってつくるワークショップ」「どんぐりプール」「歌遊び」が体験できる。主に就学前の子どもと親が参加。体を動かし、手を動かし、シンプルなおもちゃで飽くこと無く遊んでいる。どんぐりプールのどんぐりを手に取った。子どもの掌にピッタリのサイズ。かすかに檜の香がする。自由学園の所有する植林地で生徒が育てた木を加工して作られたどんぐりだ。すべすべに磨き上げられ、木目が美しい。6角形の木の枠に800個のどんぐりが入れてあり、そこに子どもたちが入って、寝転んだり、跳ねたりしている。見て、触って、匂いを嗅いで、皆、気持ち良さそう。どんぐりを一つ、お土産に買って次へ向かった。

 

どんぐりプールは大人気!

 

 「大芝生」という広い芝生の広場では少し大きな子どもたちが思い切り駆け回ったり、土手を転がったり。木陰ではシートを広げお弁当を食べる家族もいる。消防車との記念撮影、青空の下のヨガ、アクセサリーのワークショップなど遊びきれない程のメニューが用意されていた。

 子どもたちの歓声が少し遠く聞こえる。ひっそりとした池のほとりで女性が絵を描いていた。緑の美しい、古い建物の点在するキャンパスで、思い思いの時を過ごす、南沢フェスティバルならではの贅沢な楽しみだった。

 

一心にスケッチ。穏やかな時間が流れる

 

 男子部の建物に近づくとポップな音楽が聞こえてきた。男子部高等科の生徒が開催する「新緑祭」の会場だ。お化け屋敷、コンサート、射的などの企画、製作、運営に生徒たちが力を発揮した。校舎前の広場には大勢の人が訪れ、アトラクションや食べ物のブースには長い列ができていた。

 

熱い鉄板の前でがんばってます!

 

 再び正門近くを通過すると吹奏楽が聞こえてきた。午後からの本番の前に演奏するのは自由学園卒業生。長年一緒に演奏していると言う。芝生に腰を下ろし、食べながら、飲みながら、観客もリラックスして管楽器の生の音を楽しんでいた。

 

元気のよい音が青空に吸い込まれていく

 

|| 学園で学ぶ

 一日中楽しめるフェスティバル、ということで食べ物は広いキャンパスのあちこちで提供された。卒業生の営業するアイスクリーム車、自由学園ゆかりのクッキーやパン、お弁当。どこも売れ行き好調のようだった。

 最高学部食堂でランチを食べた。少し大きめに切られたタマネギや鶏肉が美味しいチキンピラフ。相席した松戸市の女性に話を聞いた。お子さんが在校生。中等部から自由学園に通っている。「寮から帰ってくるたびに、娘のちょっとした行動に周囲に対する気遣いが見られ、成長を感じる」と語った。

(クリックで拡大)

 初等部の食堂では、自由学園初等部の日常的な生活と学びの様子を撮影、記録したDVD「土と育つ子どもたち」の上映会と監督、纐纈はなぶさあや氏のトークショーが開かれた。1年間にわたり、子どもたちが土に触れ、種を蒔き、野菜を育て、収穫する、様々な場面を撮影した映像には、ありのままの初等部の学びが表現されていた。笑いを誘う場面、ハラハラする場面、感心する場面を見ながら、土からいのちが育まれていることを、感覚として学んでいることが伝わった。

 青空と爽やかな風、新緑を楽しみながら、自由学園の教育理念の実践を垣間みることのできたフェスティバルだった。
(渡邉篤子)(写真は筆者提供)

 

【関連リンク】
・南沢フェスティバル(自由学園
・DVD「土と育つ子どもたち」(やしほ映画社

 

【筆者略歴】
渡邉篤子(わたなべ・あつこ)
 ひばりが丘在住約30年。音楽教室講師の傍ら公民館などで音楽講座の講師を務める。ひばりが丘でエリアマネジメントをする民間団体「まちにわひばりが丘」のボランティアチーム「まちにわ師」2期生。コミュニティーメディア「AERU」担当。

 

(Visited 260 times, 1 visits today)

One thought on “楽しみながら「学び」が伝わる 自由学園「南沢フェスティバル」

  1. 1

    冒頭のリード部分に「戦前から一貫教育を実現してきた自由学園」とありましたが、自由学園が最高学部(大学部)を設けたのは戦後でした。「戦前から…」の部分を削除し、お詫びして訂正します。本文中の「卒業生の営業するキッチンカー」は「卒業生の営業するアイスクリーム車」でした。そのほか補足説明を追加した箇所もあります。(編集部)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA