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豊作への願いが雪景色に 写真集「乱声 南信州 新野の雪祭り」

投稿者: カテゴリー: 文化・娯楽 オン 2022年2月21日

 南信州に伝わる国の重要無形民俗文化財「新野の雪祭り」を記録した写真集が2月初め、手元に届いた。長野県阿南町新野地区で小学校時代を過ごした著者は、定年を迎えてお墓参りなどで郷里を訪れる機会が増え、やがて土地の伝統行事「雪祭り」を撮り始めた。コロナ禍で昨年も今年も中止になった祭りの諸相が、この写真集で色鮮やかに蘇る。

 写真集は本祭の3日間を中心にして時間軸に沿い、6年がかりの写真約80枚で構成した。
 1月13日未明、行列を組んで祭具を3キロ先の諏訪神社まで運ぶ「お下り」。お面の化粧などを整えて14日午後、一行が伊豆神社に戻る(「お上り」)ころ、神楽殿で舞いが始まる。大松明が燃える。乱声らんじょう、乱声と叫ぶ声。お面を付けた「神々」が次々に現れ、夜を徹して踊り、舞い、祈る…。ここぞという祭りの場面が間近な視線で記録される。

 

写真集「乱声 南信州 新野の雪祭り」から

 

 ハイライトシーンだけではない。写真集は冒頭、神社の屋根に積もる雪、注連縄、鳥居と石造りの階段を収めた風景から始まる。暗闇と雪白の対比が鮮やかだ。締めくくりには、陽光を浴びた伊豆神社を正面から捉えた写真に続いて、山並みから噴き上がる雪の舞い、杉木立から差し込む光のカーテンを写した数枚が配置される。こうして写真集を紐解くと、雪は豊作の予兆という祭りのモチーフが浮かび上がる。

 巻末には、篠笛の制作から吹き方まで、子どもが大人たちから教わる風景も収められ、伝統を後の代に引き継ぐ試みも記録した。最後にサムネイル付きで写真説明を一括掲載。まつりの日程表や地図も併載し、伝統行事に関心を寄せる人への心配りも忘れない。

 著者は著名なフォトコンテストでグランプリを受賞するなどスポーツ写真をメインに活躍。キヤノンフォトクラブスポーツ写真愛好会代表。写真講師協会(JPIO)の認定インストラクターとして各地の写真教室やセミナーの講師も務めている。

 西東京市では、「西東京百姿フォトコンテスト」が西東京市文化芸術振興会の手で毎年実施され、展示会巡回とともに写真集が発行される。今年は10年計画の3年目。現代の市内風景を写真で記録する試みが続いている。この写真集「乱声」はさらに、郷土の伝統行事とその継承への関心を呼び覚ますのではないだろうか。
(北嶋孝)

 

【書誌情報】
書名 乱声(らんじょう) 南信州 新野の雪祭り
著者 金田誠
編集・制作 信濃毎日新聞社出版部
定価 本体2300円+消費税
判型 A4横判(197×213mm)並製 96ページ
ISBN978-4-7840-8838-6 C0072
発行 2022年1月20日

 

北嶋孝
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