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松尾匡著『この経済政策が民主主義を救う』

By in 書評 on 2016年3月14日

この経済政策_松尾400【書評】

アベノミクス以上の景気対策を
師岡武男(評論家)

 アベノミクスの実績について、世論には、「景気回復の実感がない」「貧困と格差が拡大した」などという不満がかなり多い。しかしこの本は、安倍政権が今後、世論の不満に応える政策展開をする可能性が十分あると推測する。そして選挙で勝って、憲法改正の野望実現に王手をかけるかもしれない、と。それを防ぐには、左派・リベラル派が安倍政権以上にはっきりした景気拡大策を打ち出す必要がある、と主張し、その具体策を提唱している。

 経済の現状についての評価は「金融緩和政策によって、輸出と設備投資による景気回復は進んだが、消費税引き上げと、引き締め型の財政のため、消費は低迷し、内需がしっかりせず、このところ弱々しい回復になっている。しかし失業率は改善され、賃金も上がっている。今後財政支出などで十分な景気拡大策が行われるなら、消費需要の拡大に火がつく潜在力はある」という。アベノミクスは失敗した、とは見ていない。

 今後の景気拡大策を予想する根拠としては、消費税引き上げの延期に踏み切ったことのほか、昨年9月の「第2ステージ」で介護や子育て支援を打ち出し、毎年3%の最低賃金引き上げも付け加えたことに注目している。

 著者は、安倍政権の弱点は福祉だとみて、この本で、金融緩和マネーを介護や医療や教育や子育て支援につぎ込んで雇用を拡大させる、最低賃金をインフレ目標並みに引き上げるなどの対抗景気対策を打ち出している。しかし出版間際に新政策を打ち出され、手の内を全部読まれているかのようで「正直たじろいだ」と書いている。

 著者は「祈るような気持ちでこの本を書いた」と言う。何を祈るかというと、左派・リベラルの人々が「真っ赤に燃えるような景気拡大策を掲げる」ことである。従来、これらの人々の多くは、新自由主義による長期不況下で「脱成長」や「財政の無駄の削減」などのスローガンを掲げて、景気拡大に反対するかのような政策を主張してきた。結果として、不況に苦しむ人々から見放されてしまった。選挙で安倍政権に勝つには、その政策を大転換し、アベノミクスの新旧3本の矢に対しては「こんなものでは足りない!」「もっと!」という批判こそ必要だ、と訴える。著者は、立命館大学の経済学部教授、著書に『新しい左翼入門』『不況は人災です!』などがある。出版社大月書店は左派系の老舗。

 

【書籍情報】
書名:この経済政策が民主主義を救う-安倍政権に勝てる対案
著者:松尾匡(ただす)
出版社: 大月書店
定価:1600円+税
出版年:2016年1月
ISBN-10: 4272140620
ISBN-13: 978-4272140626

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 

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