不燃ごみのプラスチックを焼却 市民団体らが柳泉園組合に抗議

投稿者: カテゴリー: 環境・災害 オン 2016年8月30日
抗議書を提出する市民団体(柳泉園組合)

抗議書を提出する市民団体ら(柳泉園組合)

 「不燃ごみ」として集めたのに、プラスチック類などを含むその7~8割が長年焼却処分されてきた。これは「ごみ出しのルールを行政自らが破るものだ」-。近隣の市民団体や関係市議らが8月29日(月)、西東京、東久留米、清瀬3市で構成する共同ごみ処理施設「柳泉園組合」(東久留米市下里4丁目)に対し、抗議書を提出した。

 

 不燃ごみの約8割を焼却

 同日午前、市民団体らが共同会見を開き、この8月に公表された「多摩地域ごみ実態調査」(東京市町村自治調査会)を基に、3市のごみ処理の実態を明らかにした。

 

01IMG_7925

記者会見する(左から)環境ジャーナリスト青木泰さん、森輝雄さん(西東京市議)、布施由女さん(清瀬市議)、坪井照子さん(NPO法人ごみ問題5市連絡会)、川崎泰王さん(地域の安心・安全を守る会)ら

 会見での説明によると西東京市の場合、2015年度の「不燃ごみ」の内訳は、「可燃分」が紙、繊維、木・草など計8.6%。「不燃分」がプラスチック48.4%、土砂・陶磁器19.5%、ガラス19.1%など計88.4%だった。ところが「不燃ごみの処分内訳」を見ると、76.6%が「焼却」だった。市民団体らはこれらのデータから「不燃ごみとして収集したプラスチック類をほぼ全量、焼却炉で焼却している」とした。西東京市ごみ減量課に聞いたところ、会見で指摘されたデータに間違はなかった。柳泉園で共同処理している清瀬市、東久留米市もほぼ同じ傾向だった。

 廃棄物処理法に規定されている「西東京市一般廃棄物処理基本計画」は、家庭から出る「不燃ごみ」の種類を「汚れたラップ・アルミホイル、ストロー・歯ブラシ、プラスチック製おもちゃ、ポリエチレン容器、せともの・ガラス食器、植木鉢・バケツ(小)、簡易カイロ、ビデオ・カセットテープ類、洗えないプラスチック容器包装類、プラスチックケース」などと明記している。

 

 15年前に市民説明会、議会説明も

 焼却作業を担当する柳泉園組合に問い合わせたら、過去の意外な経緯が明らかになった。同組合技術課によると、不燃ごみ中の軟質系プラスチック類は2001年(平成13年)11月からこれまで、15年間燃やし続けてきたのだという。

柳泉園組合クリーンポート

柳泉園の焼却施設

 

 その2年前の1999年に、不燃ごみとして集めたプラスチック類を可燃ごみと一緒に焼却処分していたことが問題になって、いったん中止。その後、現在運転している新鋭焼却炉施設(クリーンポート)が完成し、試験的にプラスチック類を焼却したところ、排出されるダイオキシンなどの有害物質が基準以下だった。そのため再度、焼却処分を進めたという。

 2001年の夏から秋にかけて、西東京市など3市内で市民説明会を計21会場で開き、施設周辺の自治会協議会にも説明した。組合議会と関係3市の議会にも諮った。11月には一般に配布している「りゅうせんえんニュース」の特集号で、不燃ごみ中の軟質プラスチック類の焼却再開を明らかにしている。手続きを踏み、理解を得て進めてきた、というのだ。

 

 その後、軟質系プラスチック類を焼却しても「ダイオキシンなどの有害物質は基準以下」(佐藤元昭技術課長)との説明だった。

 

 行政と市民の信頼関係は

 しかしそれですべてが説明し尽されたかというと、話はそう簡単ではない。
 西東京の「基本計画」は「不燃ごみ」について「(柳泉園で)選別後に発生する可燃分は、焼却処理」としている。ところが2015年度の「不燃ごみ」中の「可燃分」は8.6%だった。実際焼却されている「不燃ごみ」が76.6%とは、「基本計画」から想像するのは難しい。

 東村山市在住の環境ジャーナリスト青木泰さんは抗議書提出団体の一つ、NPO法人ごみ問題5市連絡会のメンバー。「多摩地域は市民の協力を得て、ごみ減量の先進地域になった。市民が行政とともに分別収集に努力し、信頼関係を築いてきた。ところが不燃ごみ、燃やせないごみとして集めたプラスチック類を、『基本計画』に明示もしないまま焼却処分するのは、この信頼関係を傷付け不信感を抱かせる」と会見で強調した。

 ごみ問題5市連絡会代表で元西東京市議の坪井照子さんも「『燃やせばごみ、分別すれば資源』を合い言葉に、私たちは長年ごみの分別収集を進め、ごみゼロを目指してきた。それなのに不燃物として収集したプラスチックなどのごみをほとんど焼却するのは納得できない」と述べた。

 

 プラスチック全量焼却のリスク

 行政側は、ポリ袋など軟質系のプラスチック類を「不燃ごみ」ではなく、「可燃ごみ」「燃やせるごみ」として収集することを検討しなかったのだろうか。

 西東京市ごみ減量課の原島誠課長は「そういう議論は確かにありました。しかし軟質系プラスチック類を『可燃ごみ』として収集するとしたら、いま資源化している硬質系プラスチック類も一緒に可燃ごみの袋に入れるケースが出てきかねない。かえって混乱するのではないか」と話している。

 ごみ処理は自治体によって異なる。プラスチック類をすべて「可燃ごみ」として収集し、一括焼却しているところもある。

 環境ジャーナリストの青木泰さんはしかし、そのリスクを指摘する。「プラスチック製品に組み込まれた電池が問題です。国産電池は現在、水銀を使っていません。しかし海外製電池に水銀が含まれていることが少なくない。それらを組み込んだプラスチック製品が焼却炉に放り込まれると、高濃度の水銀が検出されて炉の運転がストップする。東京23区一部事務組合で過去6年間に19回の高濃度水銀が検出され、焼却炉を停止したのはその例ではないでしょうか」

 「不燃ごみ」「燃やせないごみ」として集めたごみの約8割が、実際は長年にわたって焼却されていた。基準以上の有害物質は出ない、議会や市民へは説明済み…。しかし「不燃ごみ」の「可燃分」をはるかに超える量が「焼却」されている。どうにも腑に落ちない。釈然としない。燃える「不燃ごみ」とは何だろうか。多くの市民は知っているのだろうか。納得したうえで分別しているのだろうか。

 西東京市在住の筆者がいる地域は、8月31日(水) が「不燃ごみ・有害ごみ」の収集日だった。
 用意した指定ごみ袋をそっと開けてみると、上の方に汚れたラップやプラスチック容器などが見える。これらは焼却炉行きになるのだろうか。化粧品の容器、粉末調味料や一口羊羹の包装、ゼリー容器の蓋などには、ほとんど「プラマーク」が付いている。これらも同じ運命か。どうせ燃やされるなら「可燃ごみ」に仕分けすべきなのか。しっかり洗って「プラスチック容器包装類」の袋に分けた方がよいのか。ファクス機器の印刷リボンはどうなるのか…。前日の深夜、「不燃ごみ」を詰め込んだ指定袋を前に、ぼんやり考え込んでしまった。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・柳泉園組合における不燃分別のプラスチックの焼却への抗議文(PDF, 71KB
・多摩地域ごみ実態調査(平成27年度統計)(公益財団法人 東京市町村自治調査会
・西東京市一般廃棄物処理基本計画(西東京市Web
・東久留米市一般廃棄物処理基本計画(東久留米市
・清瀬市一般廃棄物処理基本計画(清瀬市
・柳泉園組合一般廃棄物処理基本計画(PDF 1.01MB、柳泉園組合
・りゅうせんえんニュース特集号(PDF 625KB、2001年11月
・NPO法人ごみ問題5市連絡会>>

(Visited 3,781 times, 1 visits today)

不燃ごみのプラスチックを焼却 市民団体らが柳泉園組合に抗議」への1件のフィードバック

  1. 1

    三鷹市、武蔵野市、東久留米市など、多くの地域で汚れたプラスチックは燃えるゴミとして出すルールになっている!そもそも、火力を高めるためにプラスチックも加える必要があると認識している。そういった実態や周辺情報を把握していない西東京市に問題がある。
    西東京市のゴミ分別ルールを変更すべき。
    以前にも、それを市議に伝えたことがある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA