コンテンツへスキップ

連載

西東京市の散歩道

(番外・新座編)

2015年7月26日 萩原恵子

萩原 恵子(屋敷林の会、下保谷の自然と文化を記録する会)


 

◆武野神社周辺(新座市) 

 

新座市野寺マップ

当市北町に接する埼玉県新座市。明治の初め、保谷は新座郡に属した時期もあり、地元の年配者にとって、湧き水のあった野寺地区、黒目川のある片山地区は身近な川遊びの場だった。

武野(たけしの)神社(旧八幡神社)は、新座市を東西に走る黒目川が台地を削ってできた斜面にある。平安末期、前九年の役で奥州征伐に向かう源義家が、戦勝祈願し北(奥州方角)向きに建て替えたとされる。斜面に参道、鳥居、社殿とひな壇のように並ぶ。

今は涸れているが10年ほど前までは湧き水があり、この湧き水を源泉にした中沢川(長さ3㎞弱)が黒目川へと注いでいた。しかし、周囲の斜面を開発して住宅を造ったら、とたんに水が涸れたという。

源泉の下方に、池と弁天社がある。かつて流れにサワガニがたくさんいたそうだが、今はたまに、池のザリガニを探す親子連れが見られる。

鎮守の森の隣にある空き地に、毎年コチドリが来て営巣している。常緑樹で囲まれた境内は、時間が止まったかのようだが、そのうちまた湧き水が回復して、生き物があふれる神聖な場所に戻るのではないか。そんな夢を抱いて、毎年きているのかもしれない。

 

◆野寺親水公園(新座市)

 

武野神社と連なる斜面に、細長く張り付くようにある雑木林の一つ。西側の林は、斜面下に川の跡が1本あり、それを境に住宅が接近して建つ。東側の林下方には、湧き水を利用した生き物のための池がある。近づくと、警戒して鳥たちが鳴き合い高く舞う。シジュウカラ、ヒヨドリ、ムクドリなど。

カナヘビが道を横切って草の間に隠れ、シオカラトンボが鬼ごっこするように逃げ去る。やはり人間はあまり池には近づかないほうがいいのかもしれない。林の上のほうのベンチで森の声を聞いてなごむ程度で。

林はエゴノキが多く、エノキ、クヌギ、ムクノキ、シラカシ、コナラなど、薪炭にする雑木林の定番ばかりだが、中木のサカキも多い。

虫取りの子供が、「クワガタムシを見つけたが放した」と言って通りすぎた。適当に草刈りの人の手が入るくらいで、ありきたりの雑木林であることが、今としては貴重だ。

 

武野神社
1 武野神社;斜面にある参道は階段
2 武野神社;社殿に向かい右に勾配の急な男坂。左に緩い女坂もある
3 武野神社;こぢんまりとある弁天社と池
4 野寺親水公園;入り口の東側の樹木はクヌギ
5 野寺親水公園;入り口にあたる階段下から見上げる
6 野寺親水公園;水辺にアジサイ、チダケサシなどの植物も
7 野寺親水公園;池の周囲にいたシオカラトンボ♂
8 野寺親水公園;道に張り出して倒れて咲いていたヤマユリ
9 野寺3丁目 憩いの森;下の畑から見る森の境目
10 野寺3丁目憩いの森;斜面下から見上げる。左が森
11 野寺3丁目憩いの森;林の端から見渡すと、農家と畑が見える
12 野寺3丁目憩いの森;エノキに止まるゴマダラチョウ
13 野寺3丁目憩いの森;クモの糸をくっ付けているが、ノコギリクワガタは大きくて迫力満点
14 野寺3丁目憩いの森;オニユリ。自然に生えたものか、2本一緒
15 野寺カタクリ山;3月下旬。カタクリ開花
16 野寺カタクリ山;6月。閉鎖中だがボランテイアによって手入れされている

 

◆野寺三丁目憩いの森と野寺緑地(新座市)

 

野寺地区の斜面の、もう一つの雑木林は2つの緑地公園がつながっていて、コナラが多い。エノキ、エゴノキ、クヌギ、イヌシデなども。

斜面の下が畑なので、圧迫感がなく林の中も明るい。樹間も空いていて下草にササが多いせいか、見通しがきく。そんな中をいろいろな種類のチョウが飛んでゆく。

やはり虫取りの子供たちがいて、クワガタもカブトもタマムシもヒカゲチョウもいた。ここは、こんな生き物との出会いを楽しめる、知る人ぞ知る昔ながらの雑木林……。

 

◆野寺カタクリ山(新座市)

 

武野神社の西方の斜面にあたる1700平方メートルが、カタクリの群生地。3月下旬から4月下旬が花の見ごろで一般公開されるが、開花期のほかは閉鎖されている。

近くでは練馬区の清水山、清瀬市の中里のあたりが群生地として有名だが、市境の道を越して100メートルも行かないで見られるここは、穴場的存在。

春を知らせる花として、開花まで7、8年かかる貴重な花として、毎年野寺のカタクリの開花を待つのも楽しみの一つといえる。
(完)

(Visited 1,335 times, 1 visits today)
萩原恵子

はぎわら・けいこ

 石巻出身。震災以後、友と石巻の応援ブログを細々続ける。「地域博物館を創ろう連合会」事務局担当。下保谷の自然と文化を記録する会会員。元「屋敷林の会」代表。校正者。著書『タヌキの伝言』(けやき出版)、松田宗男と共著『武蔵野鉄道が通る!』。

この著者の記事

連載「西東京市の散歩道」の記事

この連載をすべて読む ›