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第22回 原子力発電は本当に必要なのだろうか


  富沢このみ(田無スマイル大学実行委員会代表)


 

 今回は、エネルギー(電力)を取り上げた。
 その理由は、2018年3月26日に発表された政府の2030年度のエネルギーミックスにおいて、依然として、原子力発電が約2割を占めるとされていることに、違和感を覚えたからだ(注1)。周知のように、福島の事故以来、原子力発電は、ほとんど止まっているが、今年のような酷暑でも、なんとか乗り切れている。それなのに、どうして将来も、原子力に頼る必要があるのだろうと思ったのだ。

 

(注)ここでは、再生可能エネルギーの中に、水力発電が含まれている。
(出所)資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し関連資料」平成27年7月ほかから著者作成

(注1)2018年7月に、発表された「第5次エネルギー基本計画」では、2015年に策定した内容を前提とし、その達成に向けた課題を整理した構成になっており、原子力も、依然として基幹エネルギーと位置付けられている。

 

国が原子力発電を基幹エネルギーとして位置付ける理由

 

 国が原子力発電を基幹と位置付ける要因として挙げているのは、次の3つだ。第一には、エネルギーの安全保障上、輸入に依存しないエネルギー源の比率を増やすため(自給率の向上)。第二には、温室効果排出量(CO2)を減らすため。第三には、コスト削減のため。

 確かに、日本では、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っている。このため、中東地域における政治・社会構造の不安定化、中国・インドなど新興国におけるエネルギー需要の増加、最近における米国のシェール革命など、海外におけるエネルギー供給上の何らかの問題が発生した場合、大きな影響を受けやすい。

 国が原子力発電を重要視している要因のうち、エネルギー自給率を高める、CO2排出量を減らすという面では、再生可能エネルギーも同様の役割を果たすことができる。ただ、現在、日本の再生可能エネルギーは、コストが高いことが問題視されている(注2)。資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループの試算では、原子力発電は、追加的安全対策費や事故リスク対応費を考慮しても、kWh当りのコストでは、依然として最もコストが低いとされている。
(注2)資源エネルギー庁によると、日本(2016年)と欧州(2014年)を比較してみると、非住宅向け太陽光発電システムの費用(工事費もパネルも含めたkW当りのコスト)には2倍近くの差があるとのこと。なお、大気汚染に悩む中国では、近年太陽光発電の建設が進み、量産化によってパネルのコストが低下、中国メーカーにとって、日本市場でのビジネスチャンスが広がっている。再生可能エネルギー導入で先行するドイツでも、国内メーカーは、中国などアジア勢に席巻されてしまったという(『日本経済新聞』電子版「太陽光パネル、中国勢の波 低価格で圧倒」2017年10月28日)。

 経済界にいる知人は、原子力発電が止まった分、石炭やLNGによる火力発電が増えたことや、後述する再生可能エネルギー促進賦課金により、エネルギーコストが高まり、企業にとってはコストアップ要因になっていると、原子力発電の再開を望んでいる。

 

(出所)発電コスト検証ワーキンググループ『長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告』平成27年 5月より、筆者作成

 

 しかしながら、原子力発電のゴミ(放射性廃棄物)の処理方法も決まっていないことや、福島の惨事を自分ごととして考えれば、将来において、原子力発電を基幹エネルギーと考えることには、ムリがあると思える(注3)
 (注3)広島が土壌汚染処理などしなくても復興したのだから、福島の事故を騒ぎ立てるのはおかしいという人がいる。しかし、平成23年に原子力安全・保安院が発表したところによると、広島原爆と今回の事故によって放出された放射性物質では種類と量が異なっているが、放射性セシウムについては広島原爆の約168.5倍相当としている。セシウムの半減期は、30年と言われるうえに、大気や土壌、海洋が汚染され、食物連鎖などにより、長期的、かつ複雑に影響が及ぶと想像される。

 

 私は、70年代にオイルショックで石油価格が高騰し(注4)、また、主要市場であるアメリカで排ガス規制が厳しくなった折、自動車産業が、ネジ一本から軽量化し、見事に困難に打ち勝って、ジャパン・アズ・ナンバー1になったのを目の当たりにしている。原発事故という未曽有の問題に当面した日本は、「本気になれば」、原子力発電を必要としない社会に変革できるのではないかと確信している。そこで、再生可能エネルギーをめぐる環境を少し勉強してみた。
 (注4)アラビアンライト公示価格でみると、1972年には、1バーレル2.48ドルだった石油価格は、1974年には、11.58ドルへ、さらに、1980年には、36.83ドルへと高騰した。

 

節電と電化の進展

 

 次の図は、実質GDPとエネルギー効率(一次エネルギー供給量/実質GDP)の推移を見たもの(注5)。エネルギー効率が大幅にアップしていることが伺える。特に、2011年の東日本大震災以降には、節電意識が高まり、エネルギー消費は、さらに減少傾向を見せている。
 (注5)一次エネルギーには、電力だけでなく、ガスやガソリン・軽油なども含まれる。単位にあるPJは、ペタジュールと読むエネルギーの単位。日本では、原油価格が低水準で推移した1990年代には、エネルギー消費が増加したものの、2000年代半ば以降再び原油価格が上昇したこともあり、減少傾向となっていた。

 

 省エネの分かりやすい例がLED照明だ。LED照明は、従来の白熱灯照明と比べると、同じ明るさを作るのに、8分の1の電力で済む。2011年時点で、日本の総電力消費量の19%が照明用に使われている。日本の全ての照明をLEDに置き換えた場合の省電力量は、922億kWhと推計され、日本の総電力消費量の約9%にあたり、原子力発電所13基(1300万kW)に相当するという試算がなされている(注6)。このほかの家電製品などについても、さまざまな省エネが進んでいる。
 (注6)(財)日本エネルギー経済研究所「LED照明の省電力ポテンシャル」平成23年5月31日

 一方、最終エネルギー消費に占める電力の比率は、CO2の削減のため以外に、情報化の進展、電磁調理器の普及、電気自動車の普及などもあり、年々上昇している。1970年度の12.7%から、2016年度には25.7%に達しており、この傾向は今後とも進むと思われる。

 

電力自由化

 

 日本では、1995年から、競争導入による価格低下を目指して、段階的に電力自由化が行われてきた。なかでも、2011年3月11日の東日本大震災後は、さまざまな制度変更が行われてきた。

 


 この夏の猛暑も、こうした制度変更もあって乗り切れたと言える。埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41.1℃を記録した7月23日。東京電力管内では午後2~3時に電力需要実績が5653万キロワットと震災後で最大を更新したが、この日のピーク時の東電管内の供給力は6091万キロワットで、供給力の余裕を示す予備率は8%と、電力の安定供給に最低限必要とされる3%以上を確保した。これは、前述の「節電効果」や「電力自由化による新電力への切り替え」によると考えられる。

 電力の小売自由化により、2018年4月(最新時点)では、新電力(注7)の比率は、特別高圧・高圧で15.0%、低圧で8.9%となっている(資源エネルギー庁『電力需給速報』)。
(注7)新電力(発電事業者)とは、小売電気事業等の用に供する電力量が1万kWを超えるという条件があるので、後述する市民電力の多くは、含まれていない。

 また、2015年から、ある電力会社の管内で電力需給が逼迫した場合、他電力が電力を融通する仕組み(電力広域的運営推進機関による調整)が開始された。たとえば、この夏では、7月18日に、関西電力に対し、中部電や東電などが電力を供給した。また、2017年には、企業や家庭に数時間単位の節電を呼び掛ける「ネガワット取引」が開始され、この夏には、東電が7月13日に、関電が7月17、18日に企業向けに実施した。

 

再生可能エネルギーの普及

 

 電力自由化と再生可能エネルギー支援により、近年における再生可能エネルギーの普及も著しい。前表で示した固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)の導入により、発電した電力を長期にわたって高い価格で買い取ってもらえるようになったため、投資コストを回収しやすくなったからだ。特に太陽光発電が高い伸びを示している。

 

 固定価格買取制度によって、再生可能エネルギーで発電した電力の買い取りに要した費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によってまかなわれている。再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせて、使用した電気量に応じて徴収されている。ちなみに、我が家の場合、2018年7月分では、使用量が115kWh、再エネ促進賦課金が333円となっている。賦課金については、新聞等で知らされていたのだろうが、全然気づかなかった。知らずに、再生可能エネルギーを支援していたというわけだ。これらの支援により、再生可能エネルギーは、日本の発受電電力量の約7%(2016年度)を占めるまでになった。

 

多摩地域の市民発電

 

 東日本大震災を契機に、都市部では、市民による太陽光発電所づくりが活発化した。残念ながら、私が住む西東京市には無いのだが、近隣地域には存在するのでお話を伺ってきた。

 

(1)多摩電力合同会社(通称たまでん:http://tama-den.jp/

 東日本大震災をきっかけとして、多摩地域で昔から里山、ゴミ、緑化など環境に関心のある市民団体が結集し、エネルギー問題を自らの問題ととらえる活動をしようと、多摩循環型エネルギー協会(通称多摩エネ協)を設立した(2012年5月)。

 この団体自体は、循環型社会についての啓蒙を主たる目的としているが、やはり、実際に発電をしてみなくては、との想いがあり、多摩エネ協を母体に、2012年10月には、多摩電力合同会社を設立した。この日に、恵泉女学園大学の屋上に「たまでん第1号市民発電所」を建設することを発表した(実際の発電開始は、2013年7月、30kW)。

 

(出所)多摩電力のHPより

 

 2014年2月に、三者協定(多摩市、多摩エネ協、多摩電力)を締結し、市所有の小学校、中学校、エコプラザなどの屋上を借りることができた。その後、青梅市とも協定を結び、現在では、13ヶ所、約600kWの発電能力だ。発電した電気はFITを利用し全量を東電に売っている。

 たまでんは、2014年に「たまでん債」という15年物の市民債を発行(注9)。たまでん債は、多摩市に限らず、全国に公募した。元本は、2年間据え置きにして、13年均等償還する。初年度の配当のうち半分を地域貢献に使うための寄付にすることを条件に募集した。この寄付金は、「たまサンサン助成金」として2016年から地域貢献活動に使われている。たまでん債の配当は、2%と今日の低金利のなかでは魅力的だ。市民債の発行は、一人ひとりがエネルギー問題を自分ごととして考えるための仕掛けという意味合いが強い。これだけでは、事業を回すための資金は不十分で、残りは、金融機関から借り入れしている。

 

多摩電力合同会社業務執行役員の秋元孝夫さん(代表、右)と大木貞嗣さん(広報、左)(筆者撮影)

 

 (注9)たまでん債には、A号「めぐり」、B号「まごころ」の2種がある。前者は、1口10万円からで、毎年配当がある、後者は、1口110万円(年額110万円までの贈与は非課税を活用)で、分配金(元本や配当)は、お子さんやお孫さんの講座に振り込まれる。次の世代へ、資産とともに、気持ちを継承してもらうという意味を込めている。

 

 太陽光発電事業は、メンテナンスもあるし、屋根を貸してくれている施設への賃借料や固定資産税も支払う必要がある。また、市有施設に置いたパネルは、20年経過後に撤去費用を同社が負担することになっている。図のように、太陽光発電による電力の買い取り価格は、年々低下しており(注10)、新たな事業からの収益は、厳しくなっている。たまでんは、当初専従者を置いていたが、2015年4月から、ボランティアによる集団管理体制へと移行した。

 たまでんは、太陽光発電事業については、新たな発電所は作らず、現在の13基を維持する一方、新しい活動として、2017年に集合住宅環境配慮型リノベーション検討協議会(通称エコリノ:http://www.tama-nt.jp/)を立ち上げた。これには、多摩エネ協からの環境関係の市民団体などに加え、マンション管理組合や建築家なども参加している。多摩市から3年間の受託を受けて、毎年3ケ所、希望のある集合住宅に対し、その集合住宅ごとの立地の特徴なども踏まえてまず診断をし、エネルギーだけでなく、ゴミや緑化なども考えた環境配慮型に再生するための具体的なアイデアを提供する。3年間で9パターンの具体案が出来つつある。今後は、管理組合での合意形成などのソフトを含めたコンサルをしつつ、具体的な事業に結び付けたいと考えている。集合住宅の多い地域の、市民による「地域再生」運動になると良い。

 

 (注10)買い取り価格の低下は、再エネ賦課金による国民負担が大きくなり過ぎないことを考慮してのことと、再生可能エネルギーのコストを国際水準にまで引き下げたいとの意図による。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html

 

(2)NPO法人こだいらソーラーhttps://kodairasolar.wordpress.com/

 こだいらソーラー代表の都甲公子さんは、生活者ネットでスタッフとして働いてきた。生活者ネットは、東日本大震災前から原発反対を唱えてきた。政策をつくるだけでなく実践もと、母体である生活クラブ生協が1998年に自宅に太陽光パネルを設置する人のモニター事業を実施するというのでそれに応募した。都甲さんが太陽光発電と係ることになった最初のきっかけである(注11)
 (注11)当時、設備が高額だったのだが、生活クラブ生協が半額補助してくれ、132軒がモニターとなった。3年間の事業終了後、自主計測活動を呼び掛けて、CELC(クリーンエネルギーライフクラブ)(http://www.celc-pv.com/)を設立、約100人がそのままモニターを続けている。CELCは、これから太陽光パネルを設置したい人へのアドバイスや自然エネルギーの普及活動を続けている。

 

 都甲さんは、2003年には、太陽光発電所オーナーや自然エネルギーに関心がある人からなる太陽光発電所ネットワーク(通称PV-net:http://www.greenenergy.jp/ )の設立に参加した。持続可能な社会の実現に必要不可欠なエネルギーシフトを目指し、その担い手となる人々に対して、市民目線のアドバイスやサポートを行っている(2006年にNPO法人、2018年に認定NPO法人に)。設立にあたっては東電に協力してもらい、太陽光発電設置者に趣旨説明と参加を募る手紙を出してもらった。当初は、東電圏だけだったが、現在では、全国に広がっている。

 その後、東日本大震災を契機に、自分たちにできることは何か。遠くの発電所に頼るのではなく、地域で、市民でできることはないかと考え、発電所を作ろうと思い至った。これがこだいらソーラーである。2012年から準備をはじめ、小平西町の清掃会社㈱小川工営が持つマンションの屋上に設置する許可を得て、2013年2月に、東京で出資型の市民共同発電所として初めてとなる1号基を設置した(同時期にNPO法人へ)。お金は、私募債で集めた(注12)。FIT制度が始まっており、買電価格は42円(40円+税金)だった。1号基は、都の住宅用助成金を得たいということもあり、住宅用とし、余剰電力販売とした。
 (注12)公募債は、証券会社を通じて広く一般に募集されるのに対し、私募債とは、少数(50名未満)の投資家が直接引け受る社債のこと。銀行借入による資金調達(間接金融)ではなく、資本市場からの直接的な資金調達(直接金融)の一形態と位置付けられる。

 

都甲公子さんとこだいらソーラー1号基(筆者撮影)

 

 現在は、5号基まで設置し、合計で75kWとなっている。5基全てを私募債で賄っており、4回に分けて約2500万円を集めたという。これは凄い。2号基から5号基は、発電した電力の全量を販売している。当初は、全て東電に売電していたが、2016年4月に電力の小売が全面自由化されたのをきっかけに、販売先を、再生可能エネルギー供給をめざす小売電気事業者に移行した(注13)。1号基と自宅屋根については、エネックス(http://www.enexgrp.co.jp/)、2~4号基は、生活クラブエナジー(https://scenergy.co.jp/)、5号基は、みんな電力(http://minden.co.jp/)。市民からの資金を得て運営している以上、安定的な販売先を選ぶ必要があり、慎重に選択した。生活クラブエナジーは、電力の販売先を生活クラブ生協の組合員に限っているので、生協会員ではない人向けに、5号基の販売先は、みんな電力とした。
 (注13)電力のFITによる売電は、当初は、市民発電事業者が直接相対で小売電気事業者に販売することが可能であり、その契約は現在も維持されている(送配電は、既存の地域電力網に委託)。しかし、2017年4月から施行された改正FIT法では、発電事業者は、送配電事業者に販売することになった。但し、A発電事業者とB小売事業者が既に契約を交わしている場合には、送配電事業者は、Aの電力をBに供給することになっている。

 

 都甲さんは、市民電力がまとまることで、さらなる発展をしようと、2014年に市民電力連絡会(https://peoplespowernetwork.jimdo.com/)の発足にも参加した(2017年にNPO法人へ)。活動事例の共有や政府への政策提言などをしていきたいと考えている。また、小平市と連携して環境カレンダーの作成や環境フォーラムを実施、このほかベランダソーラー組み立てセミナー、市民発電所見学会など、さまざまな啓蒙活動を実施している。

 

(3)その他の地域の再生可能エネルギー

 前述の市民電力連絡会には、首都圏の市民電力の情報が掲載されている。なかでも、複数の発電所を設置しているのは、事例で取り上げた多摩電力(13基)、小平ソーラー(5基)のほか、元気力発電所(練馬:9基)、一般社団法人 八王子協同エネルギー(通称8エネ:3基)、足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(通称足温ネット:江戸川区:2基)などがある。

 

(出所)市民電力連絡会HPより

 

 調布市では、多摩市と同様、市民電力会社と協力し、公共施設の屋根に太陽光発電所を設置している。東日本大震災を受け、2012年に、市民が一般社団法人調布未来(あす)のエネルギー協議会(http://chofu-energykyou.jp/)を設立、再生可能エネルギーを活用し、緑豊かで持続可能なまちにすること目指した。そして、2013年に調布まちなか発電非営利型株式会社を設立し(http://chofu-energykyou.jp/e368445.html)、調布市の公共施設の屋根を借りて太陽光発電事業を行っている。公民館・図書館・多目的施設・防災施設、保育園・児童館・社会福祉施設、市営住宅の屋根を借り、合計34カ所・約925kWの設備を取り付けている(注14)
 (注14)調布まちなか発電の発電所の管理を受託しているのが㈱エコロミである(http://www.ecolomy.co.jp/)。社長の小峯充史氏は、若い頃に、調布の青年会議所で環境活動に携わった経緯もあり、同じ思いの有志と同協会を設立した。エコロミは、社長の故郷である群馬県と調布市で発電事業を手掛けている。2018年6月には、日本アジアグループ㈱(http://www.jagenergy.jp/)と共同で府中・調布まちなかエナジー㈱を設立し(https://www.machinaka-energy.jp/)、電力供給を開始した。

 

 西東京市では、残念ながら市民としての動きはなく、行政自らが、小中学校、庁舎などの屋根に太陽光パネルを設置している。現在、17施設89.1kWとなっており、まもなく完成する第10中学校(仮)の屋上に10kWが追加され、約100kWとなる。基本的に自家消費に使っている(注15)。他の市でも、行政自体が、公共施設の屋根に太陽光パネルを導入しているようだ。たとえば、小平市では、32施設、414.8kW(2016年度、HPによる)、武蔵野市では、27施設、513kW(HPによる)となっている。
 (注15)ちなみに、青嵐中には、10kWの設備が設置されている。2016年度の太陽光による年間発電量は、11,884kwh、この年の青嵐中が購入した電力量は30万9625kwhだったので、合計すると32万1509kwh、全電力消費量に占める太陽光発電による電力の比率は、3.7%とのことだ。

 

原子力発電を必要としない社会に向けて

 

(1)スマートシティへ

 今回は、都市部に焦点を当てたので、太陽光発電、それも比較的小規模なケースを取り上げた(注16)。太陽光発電は、天候や時間帯に左右されるという根本的な問題がある。しかし、蓄電池の併用により、発電量の変動問題もある程度解決できると思われる。電気自動車の普及や再生可能エネルギーの普及に伴い、蓄電池の技術革新も急速に進みつつある。
 (注16)太陽光発電でも、広大な敷地や海上などを使って、メガソーラー(発電規模が1000kW以上)と呼ばれる大規模な発電所もある。規模の大きいものとしては、2018年に着工された宇久島メガソーラーパーク(長崎県佐世保市)がある。480MW、年間発電量約5億kWh(一般家庭約17万世帯分の年間発電量に相当)と見込んでいる(京セラほか)。2018年秋に発電開始予定の瀬戸内Kirei未来創り合同会社(岡山県瀬戸内市)は、235MW(東洋エンジニアリングほか)。

 

 最近では、住宅メーカーが新しく建設する住宅を太陽光発電と蓄電池を併用し、家庭で使うエネルギーをほぼ賄えるようにする傾向を強めている。積水ハイムでは、太陽光パネルと蓄電池、及びホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を導入している2,951邸の2017年の消費電力量・発電電力量・電力量収支について分析した結果、①家電込みエネルギーゼロ邸(発電電力量>家電・調理を含む総消費電力量)が42%、②ZEH(注17)相当邸が22%に達したとのことだ。地方自治体によっては、こうした住宅に助成金を用意しているところもある。エネルギーゼロ邸であっても、電力会社に余剰電力の売電・不足電力の買電をしているものの、自家発電・自家消費した発電量は、国の統計には現れない。
 (注17)ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。住まいの断熱性・省エネ性能を上げること、そして太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指す。消費電力として、照明、換気、給湯・冷暖房を入れているが、家電による消費を含まない。積水ハイムのエネルギーゼロ邸には、家電による電力消費も含まれる。Nearly ZEHは、ZEH達成度が75~99%のもの。

 

(出所)積水ハイムのプレスリリースから著者作成
http://www.sekisuiheim.com/info/press/20180313.html

 

 政府は、2018年5月に、ZEHのマンション版(ZEH-M)についても基準を発表、補助事業としており、野村不動産、三菱地所、大京、積水ハウスなど大手のディベロッパーがこれに沿ったマンションを建設する計画が広がっている。2021年までに1500戸程度が竣工する予定という(注18)
 (注18)『日本経済新聞』電子版「『ゼロエネ』マンション、野村不や三菱地所が参入」2018年8月28日。一般に、マンションの場合には、一戸当たりの屋根の比率が小さいので、太陽光発電でみると、戸建てよりはメリットが少ないと言われる。

 

 現在の送電ロスは、4%程度である。2017年度の日本の発受電電力量は、9,431億kWhであったので、その4%は、377億kWhとなる。これは、原子力発電所4基の発電量にあたる(100万kW)。これまでの電力システムは、大規模発電所で作った電力を需要者に提供するという一方通行の供給システムであった。しかし、震災以降、天候に発電量が左右される再生可能エネルギーによる発電が進み、それを買い取る必要が生じたこと、一方、需要家側にも、太陽光発電や蓄電池などが普及したことから、ITを活用したスマートグリッドと呼ばれる、次世代エネルギー供給網に変わりつつある。スマートグリッドでは、双方向に電力を流せるようにして、余剰電力を受け入れる一方、余分な電力を不足している地域に供給することができる。

 分散型のエネルギー資源一つひとつは、小規模だが、情報技術を活用した高度なエネルギーマネジメント技術により、これらを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランスを調整することが可能になる。この仕組みは、あたかも一つの発電所のように機能することから、「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれている。将来的には、一定の地域や村、町など全体のエネルギーをマネジメントするスマートシティと呼ばれる方向に向かうと期待される(注19)

 (注19)スマートシティは、世界各地で実証実験が始まっており、日本でも京都府関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)、福岡県北九州市、愛知県豊田市、神奈川県横浜市で官民一体での実証実験が進められている。林業のまち岡山県西粟倉村(人口1500人、世帯数561)は、小水力発電と間伐材によるバイオマスでエネルギー自給率を100%とし、それを活用した温泉やうなぎ養殖などの産業振興を目指している。再生可能エネルギーは、過疎地の自治体などで、エネルギーの自給化を進め、それによる産業振興や雇用拡大などに結び付けうる可能性を秘めている。

 

 

 なお、2014年に、使用するエネルギーを全て再生可能エネルギーで賄うことを目指す世界的な企業連合「RE100:Renewable Energy 100%(日本での窓口:https://japan-clp.jp)」が設立され、米アップルや独BMWなど140社が加盟している。日本企業では2017年にリコーが初めて参画。積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオン、城南信用金庫、エンビプロ・ホールディングス、富士通、丸井と合わせると加盟企業は10社に達している。10社の年間電力使用量は計約120億kWhと、原発約2基分に相当する。近年では、特に、海外の機関投資家などが、持続可能性に注目しつつあることから、こうした傾向は、加速されると思われる(注20)
 (注20)注13でも触れたように、現在、日本では、FIT制度により、再生可能エネルギーで発電した電力を送配電事業者に販売することになっており、電力の購入者は、どこの発電所で発電した電力かを明確にしづらいことが問題になっている。なお、みんな電力は、これを解決する「電子取引プラットフォーム」を提供している。http://minden.co.jp/biz/re100

 

(2)水素エネルギー社会へ

 「第5次エネルギー基本計画」には、水素エネルギーについての説明があるものの、2030年度の電源構成図には、記載がないのだが、近い将来、水素も重要なエネルギー源になると思われる。水素は、多種多様なエネルギー源から製造し、貯蔵・運搬することができる。また、製造にあたって、脱炭素化したエネルギー源とすることが可能である。この水素と酸素から発電し、水だけ排出する燃料電池の活用が期待される。

 水素は、爆発すると怖いと聞いており、実用化は遠い先のことかと思っていたのだが、すでに、家庭用燃料電池(エネファーム)が一般家庭に導入され、2017年5月現在20万台に達している。「第5次エネルギー基本計画」では、2030年度までに530万台を目指すとしている。燃料電池については、昔から、自動車への搭載が言われてきたものの、現在は、電気自動車の普及が進んでいる時期でもあり、普及には、水素ステーションの整備が必要なので、時間がかかるかもしれない。

 

東京都が導入した量産型燃料電池バス
(出所)東京都交通局の報道発表資料

 

 しかしながら、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを日本の先進性をアピールする絶好のチャンスであると捉え、東京都では、既に燃料電池バスの運行を始めており、選手村や羽田空港での水素利活用に向けた計画が進んでいる。2020年までに、100両以上の普及を目指している。また、福島県においては再生可能エネルギーから水素を製造し、これを2020年に東京でも利用する実証プロジェクトが本格的に動き出している。

 

***

 

 このように、いずれも、まだ流動的であるものの、省エネが一層進展し、再生可能エネルギーや水素の利活用が増えていくことは間違いない。最初に掲載した2030年度の電源構成図では、再生可能エネルギーの中に、水力が含まれており、いわゆる新エネルギーとしては、2016年度から2030年度に1.5倍の伸びを見込んでいる程度である。FIT導入期のような、ややバブリーな増加ではなく、世界的に持続可能性を求める動きもあり、より地に足のついた再生可能エネルギーへの転換が進むのではないかと思える。原子力発電というレガシーに囚われず、さまざまな課題を克服しながらも、前に進む必要があるのではないだろうか。
(写真・図画像はすべて筆者提供)

 

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。大手銀行で産業調査を手掛ける。1987年から2年間、通信自由化後の郵政省電気通信局(現総務省)で課長補佐。パソコン通信の普及に努める。2001年~2010年には、電気通信事業紛争処理委員会委員として通信事業の競争環境整備に携わる。
 2001年から道都大学経営学部教授(北海道)。文科省の知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツエリア」に参画。5年で25億円が雲散霧消するのを目の当たりにする。
 2006年、母の介護で東京に戻り、法政大学地域研究センター客員教授に就任。大学院政策創造研究科で「地域イノベーション論」の兼任講師(2017年まで)。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。
 主な著書は、『「新・職人」の時代』』(NTT出版)、『新しい時代の儲け方』(NTT出版)。『マルチメディア都市の戦略』(共著、東洋経済新報社)、『モノづくりと日本産業の未来』(共編、新評論)、『モバイルビジネス白書2002年』(編著、モバイルコンテンツフォーラム監修、翔泳社)など。

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