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特集 わたしの「ほっとスポット」

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2022年5月8日

 仕事は忙しく、ストレスも多い。そんな毎日にちょっと距離を置き、気持ちを立て直す憩いの空間はないだろうか。そんな問いを受けて、ひばりタイムスに寄稿する市民ライター倶楽部の常連執筆メンバーが、それぞれ取って置きの「ほっとスポット」を紹介します。(写真は、色鮮やかに咲く。その先に、ひばりが丘図書館の外壁に取り付けられた西東京市の看板が見える  © northisland)

 

 

至福のホームセンター  by  片岡 義博

 

 行けば必ず長居してしまう。「島忠ホームズ小平店」のDIYコーナー。足を踏み入れると、つい時間が経つのを忘れてしまうのだ。木材、工具、金物、塗料、接着剤……順繰り、念入りにチェックする。「おおおー、こんな便利なものが!」。自転車で行ける距離に充実したホームセンターがあることの幸せを噛みしめる。とくべつDIYに凝っているわけではない。ただ見るだけで満たされる。

 

DIYコーナー

工具類が並ぶ「島忠」のDIYコーナー

 

 「小平店」とあるが、実際は東久留米市に位置する。少し自転車をこげば、コーナンドイト東久留米店やコーナン西東京田無店といった本格的なホームセンターがあるが、島忠のすぐ近くには、驚くべき安さで工具類を売る「ダイソー」があり、どこにどんな商品があるか分からないアジア的混沌と迷路的楽しみが味わえる「ドン・キホーテ」がある。さらにペットショップの老舗「コジマ」もある。ショーケースにいる仔犬や仔猫を見るのはせつないが、つい立ち寄って見入ってしまう。

 

ドンキホーテ店

「ドン・キホーテ」店内はまさに迷路

 

 緑豊かな小金井公園や小平グリーンロードが深く呼吸できる癒しの空間だとすれば、こちらは大衆消費社会を存分に体感できるエリア、われら一般庶民のワンダーランドである。どちらも大好き、どちらも大切だ。

 

 

東久留米・神山バッティングセンターの愉快 by  杉山 尚次

 

 つい最近まで西東京市と東久留米市には、私の知る限りバッティングセンターが4カ所あった。

 西東京その1。青梅街道沿いで、田無タワーの近く、ゲームセンター2階の大型センターで、球速150キロのマシンがあった。
 西東京その2。旧保谷市役所の近く、芝生畑もあって小綺麗な場所だった。
 東久留米その1は滝山団地のはずれ、白山公園の近くだった。ここはさびれかけていたが、安いのが特徴だった。

 それが、あれよあれよという間に、この3つは消えてしまった。現在残っているのは、東久留米団地の崖下にある「神山バッティングセンター」だけだ。(編集長の指摘で、田無地区に他に1軒存在していることを知った)

 

バッティングセンター

ホームランの的が小さく見える

 

 ここはなくなってもらっては困る。というのも、私はいい年(63歳)をして、いまだに草野球の現役にしがみついているからだ。長くやるためには練習が必要である。50歳を過ぎたころから、休日に週一程度だが、走ることを始めた。

 あるとき、これにバッティングセンターでのプラクティスを加えることを思いついた。走ってセンターに行って打撃練習し、走って帰る。ちょっと苦しいが楽しい。下手だが、リクツだけは達者な私である。いろいろ打法を試行錯誤する。「いまのはヒット、いまのは外野フライ」などと頭の中でゲームをシミュレーションすることもある。的に当たるとホームラン賞が出る。家人には「ホームランを狙っているわけではない」と言っているが、たまに当たるとメチャ嬉しい。この練習を続けられるうちは引退しないつもりだ。

 

 

ランニングで気分転換、癒やしの場 西東京市「いこいの森公園」 by  倉野 武

 

 作家、辻仁成さんの新刊『ちょっと方向を変えてみる』(文春新書)に、こんな一節があった。「嫌なムードや悪いことが続くならその負の流れを今すぐ変えなきゃ。父ちゃんは家の周りを走る。走って汗かくと停滞していた気分が変わる。(中略)マジ、オススメ。お金かからないし。」

 

いこいの森公園

距離表示もある「いこいの森公園」のランニングコース。この時期は新緑もまぶしく、とくに気持ちいい(倉野武撮影)

 

 これを読んで、わが意を得たり、と思ったのは、数年前から自宅近くの「いこいの森公園」(西東京市緑町)で走っているからだ。一周約600メートルのランニングコース。近年は休日を中心に月20日程度、マラソンほぼ2回分の140周を目安にしている。健康のため、そして何より仕事で煮詰まったり、それこそ「嫌なムードや悪いこと」があったりしたときの気分転換に役立っている。

 正直、還暦を過ぎた身にはややキツいし、同じコースで飽きそうなものだが、これが楽しい。公園内の四季折々の樹木、花々などの光景、また今の時期ならホトトギス、夏はセミなどの鳴き声にも励まされる。子供やワンちゃん連れで笑顔の人々、ご同輩と思しきランナーたちからも力をもらえる(小学生らしき女子に軽々と抜かれていくと力が抜けるが…)。

 確かにお金もかからず、達成感(自己満足?)もあり、何より癒やされる。まさに私の「ほっとスポット」だ。

 西東京市Webによれば、平成17年4月29日開園。市内最大の憩いの場で、秋には市民まつりの会場としてにぎわってきたが、コロナ禍で今年も含め3年連続で中止になっている。公園の愛用者として、早くコロナが収束し、市民まつりも再開される日が待ち遠しい。

 

 

青空の下で汗をかくのがいい by  川地 素睿

 

 新型コロナ感染症の拡大で旅もままならないが、わたしの「ほっとスポット」はすぐ傍にある。

 気持ちよく晴れた日、塾生が滝山団地近くの畑に集まってくる。東久留米市で15年以上続いている滝山農業塾の人たちだ。専業農家の塾長と20人近い会員が畑作業に勤しんでいる。

 

畑

トマトの苗植え。やがてツルが出て、赤い果実が

 

 今日はトマトの苗植え。畑の土に穴を掘り苗を植えこんで、水をかけて網で覆う。若くはないので「膝がいたい」「腰が痛い」と言いながらも、やることはやる。ひと汗かいたら「休憩しよう」と声がかかるのを待つ。無理をしないのが、いいところだ。今日のお持ち帰りは、ほうれん草、かぶ、サニーレタス。作業に来られない人には自宅まで配達もする。

 作業日は水曜日と土曜日の週2回。作業も午前中には終わる。雨に降られたらすぐに中止。ゆるやかなのがいい。もっとも塾長たちがみえないところで支えてくれているのだが。

 とうもろこしも順調に育っている。毎年、生育の早さに驚く。ここに来るといつも空が広い。風も気持ちいい。縮じこまっていた気持ちものびやかになる。いい場所です、畑は。

 

 

すぐそこにある川辺の自然 我が子と過ごす理想のほっとスポット by  道下 良司

 

 海に山にと自然豊かな環境で子供のころを過ごしたためか、人工物に囲まれた生活をしていると落ち着かない感じがします。自然が恋しくなったとき、遠くに旅行にいくのもよいですが、身近に触れ合える場所があれば理想です。私は気が向いたときに自然にアクセスできる場所が決まっています。東久留米市南沢1丁目、多聞寺から程近い場所にある落合川いこいの水辺です。

 時期によって変化する草花、植物や土の匂い、川に足を入れたときの冷たい感触、水が流れる音、普段慌ただしく過ごす日常の中では味わえない感覚が落合川いこいの水辺にはあります。住宅地の中にあるので、見渡す限りの大自然、というわけではありませんが、それでも自然の癒しをチャージするには十分です。疲れを感じたときにすぐに行け、アポなしでもイヤな顔せずに受け入れてくれる理想の場所です。

 

黒部川

声をかけなければいつまでも生き物探しをしている長男

 

 落合川いこいの水辺は、川の水が浅く、流れが緩やかなので川遊びが楽しめます。子供は生き物が好きで、一緒にいくと夢中で探しまわります。メダカ、アメリカザリガニ、カワムツ、ヌマエビを見つけることができました。小さいうちに思いっきり自然の中で遊び、興味関心が育っていく我が子の姿をみることも自分にとっての癒しです。

 

 

ケヤキを見上げて by  渡邉 篤子 

 

 西東京市「ひばりが丘3丁目けやき公園」と東久留米市「ひばりが丘東けやき公園」は一体となって、通称「けやき公園」と呼ばれている。住宅地の道をつなぐように横たわり、公園だと意識していない人も多い。通りぬける人が7割くらいだろうか?

 

けやき公園

けやき公園

ケヤキ

見上げるほど高い

 

 その名の通りケヤキが公園の主人だ。連なって、冷んやりした木蔭を提供してくれる。この時季は芽吹いた新緑が鮮やかだ。ベンチに腰を下ろし空に顔を向けると、てっぺんが遠いなぁ、首が痛くなる。怖いくらいの高さだ。穏やかな風が通り抜けていく。

 いつも思うのは「このケヤキはずっとここにある」ということ。30数年前、筆者がひばりが丘団地に暮らし始めた頃は、公園ではなかったが、ケヤキに囲まれた広い通路だった記憶がある。建て替えでソメイヨシノの桜並木は変わってしまったが、ここのケヤキは変わらない。どっしりと、ここで生きている。

 サイクリングの終わりに、買い物の終わりに、出勤の途中に、ちょっと立ち寄る、ちょっと座ってみる、それだけで一息つく。毎日の時間の流れの中の句読点のような場所だ。

 

 

すーっとスポット by  卯野 右子

 

モッコウバラ

多摩湖遊歩道沿いに傘状に咲くモッコウバラ

カキツバタ

青紫の色鮮やかなカキツバタ(杜若)

 

 わたしの「ほっとスポット」はお花のある風景。花の便りを手掛かりに自転車であちらこちらに出かけます。花の色香を楽しみ、空を眺め、季節の移り変わりを感じる。日々の心配事を束の間忘れ、自然の営みに勇気をもらう。深呼吸をして浅い呼吸を整える。「ほっと」スポットであると同時に、胸に新鮮な空気が流れ込む「すーっと」スポットでもあります。

 

 

少し汚れた台所 by  北嶋 孝

 

 今回の特集は珍しく、書くイメージが湧いてこない。癒し、安らぎ、元気、などのキーワードははっきりしている。ところが旅は苦手なので名所・旧跡は知らない。グルメにも縁遠いから、あの店この料理も思い浮かばない。散歩やジョギングはとうの昔に挫折した。しゃれた小径や緑の公園もさっぱり…。でも、めげてはいけない。戸外がダメなら室内があるさ。というわけで、自宅に目を向けることにした。

 パソコン画面とにらめっこする机といすの鎮座空間、海外ドラマを見呆けるソファー、折々長居するトイレ、リニューアルしたばかりのお風呂場、書籍や雑誌がてんこ盛りの本棚もあるなあ…。埒もないイメージの最後に、台所の風景が目に浮かんだ。

 

台所

使い込んだ台所。汚れが目立たない視角からパチリ

 

 丈夫なステンレス鍋は30年経つだろうか。包丁は大中小の3本。まな板は2種類。湯沸かし器も冬場はありがたい。炊飯器よ、ありがとう。冷蔵庫も居座っている。電磁調理台はじめ、ほとんどは以前からあるものを使ってきた。試行錯誤の20年近く。家事の手順も少しずつ整ってきた。簡素、確実、安全。ご近所徘徊付きの買い物に始まり、調理から後片付けまで、台所が起点となる小さな工夫の積み重ねが、暮らしの密かな楽しみでもある。

 あらためてわが家の台所を見直すと、どこか雑然としている。でも、ごみ一つない清潔な光景よりは好ましい。そういえば「スポット」には「場所」のほか、「シミ」や「汚れ」の意味もあったはず。ぴかぴかしていたら、逆に落ち着かない。台所には、それなりの汚れこそ似つかわしい。なぜか心安らぐのは、そのせいではないだろうか。

(写真は、各筆者提供)

 

 

片岡義博
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