ワクチン接種会場

特集・身近なコロナ感染

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2022年8月24日

 新型コロナウイルス感染が広まってから3年が過ぎました。8月23日現在、全国のウイルス陽性者は1732万5025人です(厚生労働省統計)。日本の総人口1億2478万人の14%弱、7~8人に1人の割合です。感染しても珍しくありません。でも自分が、あるいは家族、近所など、身近に感染者が出たらどうでしょうか。市民ライターズ倶楽部の執筆メンバーによる、それぞれのケース報告です。(編集部)

 

 

「弁当責め」の籠の鳥 毎日いかに自由に、おいしいものを食べていたか (石田裕子)

 

 まさかやぁ

 朝、起きたら喉が痛い。なんだかだるい。体温を測ると、37度7分。不思議です。「熱、あるわ。まさかやぁ」。毎朝の連続ドラマで聞く沖縄弁が思わず出る。

 電話をかけ続け、やっと54回目でつながったクリニックは、次の日のお昼近くに予約が取れた。

 仕事とボランティアの関係の人たちに連絡していると、友人が抗体検査キットを届けてくれた。検査する頃には、すっかり高熱の38度7分。うーん、やっぱり。検査キットは陽性のしるし、2本線出ました。

 

 ありがとう、ドクター

 クリニックのドクターは、話しを聞き、抗体検査キットを見た後、「コロナ陽性と診断します。難病の高齢の家族がいるなら、宿泊療養を申し込むと良いですよ」と助言してくれた。もう、PCR検査はしなかったです。感染する危険がある中、診察してくれるドクターに、心から感謝したいです。

 今度は、宿泊療養のための電話。やっとつながり、タクシーがお迎えに来てくれたのは、発症して6日目の朝だった。詳しい内容の説明はあるのに、帰りのことが書いてない。なので、帰りは、自力で帰るのですよね、と確認しておいた(笑)。救急車と同じですね。

 無料の三食昼寝付きのホテル療養。さぞかし快適かと言うと、実はそうでもなかった。なんせ籠の鳥ですから。快適な刑務所みたい。行ったことないけど。毎日、いかに自由に好きな物を食べていたか、それがどんなに幸せだったのか身に沁みた療養生活だった。

 

ホテルの窓から

宿泊したホテルの14階の部屋からパチリ

 

 娘には選りすぐりの差し入れ

 私が、コロナ陽性者となったのは、2022年7月の終わり。第7波が押し寄せて来ていて、誰からも差別的な反応はなかった。「あー、なんかみんななるよね」と、気楽な反応にホッとしている。そして、二度となりませんように、と願っていると、下町に住む娘から「熱が出た」と連絡が来た。どんな物が食べたくなるか充分経験したので、選りすぐった差し入れを敢行。ゼリーやシャーベット、杏仁豆腐で生きてると、本日陽性者となった娘から連絡が来ました。まだまだコロナ禍は続きますね。

 

 

3度の食事を10日間 いまは元の木阿弥? (川地素睿)

 

 発熱なし、自宅療養に

 妻の職場で職員が発熱し陽性に。翌日にはもう一人。帰宅後、妻が「のどが痛い」と言いはじめ、PCR検査で陽性となった。ワクチンは3回接種済みなのだが。保健所に妻が連絡した。「発熱は?」「ないです。のどが痛くて咳き込むだけで」「お一人暮らしですか?」「夫が一人います」「施設にはいれませんか? 家族も入ってと言っているし」「今はどこもいっぱいで、いつ入れるかわかりませんよ」と言われ、やむなく7月24日から10日の間「自宅療養」となった。

 妻は以前に医療機関勤務の経験があるので、毎朝夕に熱を測り、パルスメーターで血中酸素飽和濃度を測った。発熱はない。

 

2階のドア

このドアの向こうに「幽閉」

 

 その日から2階居室に妻を閉じ込め、私のいる1階と完全隔離。米も消毒液も補充し、インスタント食品や使い捨てのコップ、大小の皿、お椀などを購入。食べたものはナイロン袋を二重にして廃棄することにした。

 

 食べることが最大の仕事に

 人は一日に三食食べる。食事をつくり、運び、片付ける労力は今さらながら「半端じゃない」。毎日炎暑で、冷たいものや果物も欲しくなる。わたしは濃厚接触者だし、大手を振って外出もできない。そんな時に近くに住んでいる娘たちが、夕食や果物、時には鰻などを置いていくのが、うれしかった。

 

台所の食器

使い捨て食器は便利

 

 献立を考えても、できないものはできない。こういう時、スマホで献立メニューをさがして、スパゲティを茹で、ナスとピーマンの煮物をつくり、味噌汁、コーンスープ、胡瓜もみと、けっこうバラエティに富んだ料理をつくった、と自分では思う。若い時、山で料理をつくっていたのがいきている。三度三度、妻の居室のドアの前に食事を揃え、終了後はナイロン袋を1階に下し、隔離する。手袋、マスク、消毒は怠らない。

 困ったのは風呂と洗濯だ。妻が一番最後に入り、自分の着ているものを洗濯し、最後には風呂の床と壁面を消毒剤で洗い、流す。5日も経つと、妻も私も本を読むのも飽きてくるが、これは我慢するしかない。。

 

 機器を活用、「便利だ」と実感

 隔離生活10日間、スマホのラインで電話通信やビデオ通信の効果を実感した。毎朝の挨拶から、「スイカを食べたい」「仕事の書類をもっててきて」「下に降りるからドア閉めといて」など顔を合わせないでも意思が伝わる。現代の機器の利便性を実感した。

 10日目、はじめてきちんと顔を合わせた。妻は少し太ったかなとも思うが元気なのがなによりだ。今は、料理をつくるのはやはり妻任せに。「けっきよく元の木阿弥」と言われているが、やればできるのがわかったのが心の支えだ。

 

 

マンション住まいの自宅療養生活 (倉野武)

 

 新型コロナウイルス感染拡大の第7波で、ついに罹ってしまった。まず私が、一日遅れて妻が発熱、子供は発症せず。狭いマンション住まいで私と妻が寝室で療養、子供もほぼ自室で過ごし、隔離期間の10日をしのいだ。その経験から思ったことを残しておきたい。

 

「療養」案内

筆者が病院で配布された「療養期間の考え方・延長となる症状について」などの案内

 

発熱外来へのアクセス

発熱は7月の三連休中。倦怠感があり、熱を測ると38.5度。休み明け一番からかかりつけの病院や、周辺の複数の病院に電話するが、つながらないか、「予約はもういっぱい」と取り付く島もない。そのなかで東京都の「発熱相談センター」に午後つながると、テキパキと近隣の病院を紹介してくれて、電話すると「すぐ診ますよ」。抗原検査で「陽性」判定、保健所への連絡も解決した。やみくもに電話して疲弊するより、発熱相談センターに絞ってかけ続けた方が、病院との連携、その後の流れもスムーズで効率がいい気がした。

 

②食事

 自宅療養で動かないわりに食欲は落ちず、我が家は高校生の子供が妻の指示で食事準備に奮闘。ただ、調理・片付けの負担を減らし、感染も防ぐため、紙コップや紙皿、割りばしを利用し、食器はなるべく使わないように。メニューも麺類、親子丼やチキンライスなど簡単でワンプレートですむもの、知人が届けてくれたレトルトのおかゆや総菜、そのまま食べられるパンも重宝した。クーラーボックスを部屋に持ち込み、水や食料などを入れておいたのもよかった。

 

回復期

 発症から4日目以降は熱も36度台に下がり、多少の倦怠感は残りつつも10日の療養で仕事復帰。ただ、日ごろ1日1万歩前後は歩き、ランニングを趣味とする生活が、療養中は1日数十歩。やはり体力が落ちていたのだろう。数日は雲の上を歩いているような覚束ない足取り(雲の上歩いたことあるの? と子供につっこまれたが)、視界もぼやけ、のどが腫れ、声もかすれていた。ほぼ毎日だった飲酒を11日間断ち、味覚障害か、復帰後しばらくはビールの味が違うような気がした。こうした「後遺症」も徐々に回復し、1週間後からランニングも再開。復帰から10日たったころやっと元の感覚に戻った。

 

予防

 なぜ感染したのか。ワクチンは3回打ち、感染対策にも注意していたが、発症前1カ月は仕事がかなり忙しく、疲労を感じていた。2日前には外で未明までかかる仕事があり、翌日にやや強めの運動をしたうえ、自宅で深酒したことも追い打ちをかけたかもしれない。とにかく日頃から疲労をためないよう十分な休養をとり、免疫力を下げないことが予防の第一歩だと痛感した。

 

 

よくぞ生き延びた、これまでは (北嶋孝)

 

 乗り回したチャリンコに「お疲れさん」

 新型コロナウイルスが広まってから3年。最初の2年は後先を考えず、市内を飛び回った。乗った自転車が2度ほどパンクした。マイ・チャリンコに「お疲れさん」と声を掛けてやりたい。

 さすがに3年目の昨今は心身がへばってしまった。それでもともかく人込みをかき分け、ニュースになりそうな場所に出入りする。まだ感染していないけれど、危険と隣り合わせだったはずだ。「よくぞ生き延びた、これまでは」。高齢者の重症化や高率死亡が指摘される昨今は身に沁みてそう感じている。

 

 段々近づいてくる

 市内の感染者は8月23日現在、累計約3万3000人に達した。西東京市の人口は約20万6000人だから感染率はほぼ16%、6人に1人が感染した計算になる。特に最近は社会活動の規制が緩和され、例のない感染拡大が続いている。いつ、だれが感染しても不思議ではない。

 

ワクチン接種会場

ワクチン接種会場の田無庁舎

 

 先日も「練馬区長感染」のニュースを掲載したばかり。その後すぐに、わが国の首相も4回目のワクチンを接種したのに感染した。米国の大統領は2度も罹患。英国首相も初期にダウンした。並べて書くのもおこがましいが、つい最近も孫が感染、入院した。市井の民が感染しても驚く話ではない。段々近づいてきた気がする。

 

 なし崩し的な放置政策へ?

 50代までのコロナ感染率は最近の変異株なら、従来のインフルエンザ並み。しかし高齢になるほど高くなり、インフルエンザの「数倍から10倍」と専門家が指摘する。

 その専門家は、ワクチンの効果期間が限定的なので接種が恒常化し、今後5年~10年は断続的なワクチン接種が続くとみる。なし崩し的に規制緩和が続けば高齢者の死亡が多くなり、「(世界の)ワーストに一気に名乗り出る」「人口構成が変化する」と劇的変化を予測している。(「新型コロナを「当たり前の感染症」として受け入れた時、何が起きるのか? 感染者はインフルの数倍から10倍に」Buzzfeed 2022.8.20

 これらを脳内の変換装置に掛けると、「おっさん、感染したらヤバいぜ」となる。まあ、先行きは明るくないのだろう。もう一度繰り返す。よくぞ生き延びた、これまでは-。さっきより少し、声が弱々しくなった気がする。

 

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