傍聴席

年末特集「わたしが選ぶ3本 ひばりタイムスの2021年」

投稿者: カテゴリー: メディア・報道連載・特集・企画 オン 2021年12月26日

 1年を締めくくる年の瀬。今年を振り返る新聞やテレビのニュースが、世の中の流れを伝えてくれます。では「ひばりタイムス」はどうだったか-。今年は西東京市と近隣の出来事を、年初から470本あまりの記事にまとめて掲載しました。常連執筆メンバーがその中から3本を選び出し、それぞれ「ひばりタイムスの2021年」を振り返ります。(編集部)

 

片岡義博(ライター)

(1) ある朝突然、接触確認アプリから通知が来た 新型コロナウイルスに翻弄された数日(1月27日)
(2) 書物でめぐる武蔵野 第10回 玉川上水の「玉川兄弟」はいなかった?(7月22日)
(3) 座談会「傍聴席から見た議会」 みんなの議会をもっと身近に(10月18日)

 

近藤菜穂子さん

近藤菜穂子さん(FM西東京提供)

 

(1)当時、コロナ対応に関する情報はあふれていたが、厚労省が鳴り物入りで導入した接触確認アプリから「感染者との接触が確認された」との通知を受けたら実際にどのように行動すればいいのかという情報はほとんど伝わっていなかったように思う。ある日突然、通知を受けた筆者がアプリの仕組みから、通知を受けたときの動揺と不安、その後のやりとり、PCR検査、顛末に至るまで、自らの体験を丁寧かつ生き生きと記したドキュメント。時宜を得た情報の提供であり、読者の関心に応えて驚異的なアクセス数を記録した。

(2)書物を通して多摩地域の歴史や文化、風俗を検証する好企画。検証といっても厳密な考証を重ねるわけではなく、幅広い出版物を通して得た知識と情報、地元に長く住む地の利を生かして「わが町」の裏表をのぞいて縦横に思索を巡らせる。視線は古代から現在、近所の神社から遠く大陸まで。いわば好事家の自在な視点と文体が、地域への新しい関心を呼び起こし、地域メディアらしい格好の読み物になっている。読者から寄せられるコメントの多さがそれを物語っている。

(3)市議会の傍聴席に姿を見せる人たちが議会についての意見を交わすという「ひばりタイムス」ならではの画期的企画。住民の顔と関心が見えてくると同時に、普段接することのない市議会の様子が参加者の感想を通してリアルに伝わってくる。質問や答弁に関する率直な疑問や意見が示され、保育システムや予算・決算特別委員会のインターネット中継といった議会の課題が浮き彫りになった。住民にとって縁遠い議会への導線の役割を果たすこうした企画はもっとさまざまに発想されていい。

 

道下良司(会社員)

(1)大人の悩みに生徒が回答! 西東京市立田無第一中学校の「放課後カフェ別室」(7月2日)
(2)「わたしの一冊」第10回 石田衣良著『池袋ウエストゲートパーク』(7月8日)
(3)「ムラびと」と作る 西東京市の下野谷遺跡「縄文里山プロジェクト」が加速(10月2日)

 

回答

たくさんの回答がありました。本当は全部紹介したい!(「放課後カフェ別室」から)

 

 積極的に挑戦し前進している方を知ると自分にも何かできるのではとやる気が湧いてくるものです。西東京市および近隣エリアが挑戦とやる気に溢れたエリアになればよりよい街になるのではと思います。実は、私たちの身近にも新たな挑戦に立ち向かっている方々がいます。

 「わたしの3本」で選んだ記事はそうした挑戦の記録です。中学生の居場所をつくりたい、井戸を再生したい、遺跡を後世につないでいきたい、目的はそれぞれです。問題意識に基づいてプランを練り、協力者や資金を集めて形にしています。共通しているのは、アイデアの豊かさです。想いがあるからこそ、いろいろなアイデアが思いつくのでしょう。

 ひばりタイムスは、西東京市近隣エリアの挑戦にやさしい光をあてています。活動の概要や結果だけではなく、考えのプロセスも含め様子を知ることができます。今、何かに挑戦し、難しさに立ち向かっている方もいると思います。「わたしの3本」の記事でやる気やヒントが得られるかもしれません。

 

杉山尚次(編集者)

(1)ブラック・ジャックとピノコ像の除幕式 東久留米市の市制施行50周年記念事業(3月10日)
(2)私たちのワクチン接種体験【特集】(6月21日)
(3)植木等の命日に墓参 桜満開の小平霊園(3月27日)

 

ブラックジャック像除幕式

ブラックジャック像除幕式の並木市長(左)2021年3月

 

(1)市長は「コロナ終息後は、東久留米市の観光資源となり、地域産業の活性化につながるよう努力したい」と語った、とあります。この像は「観光資源」なんですね。あ、「努力したい」だから、ほかにも像とかつくって、お客さんを呼ぼうということなんでしょうか。大泉学園駅にもアニメ像もいっぱいありましたが、あれを目指すのでしょうか。リピーターはいるのでしょうか。それでもって公立の保育園は潰すわけですから、この市に住んでいることを誇りたくなるような出来事でした。

(2)自分も書いているので反則ですが、こういう連携プレーはもっとやりたいですね。

(3)植木等が「スーダラ節」の享楽的でふざけた歌詞に悩んで父親(真宗の僧侶)に相談したところ、激怒するかと思いきや、決めぜりふ「わかっちゃいるけどやめられない」に「これぞ親鸞聖人の教えであり、人類普遍の真理だ。がんばれ!」と背中を押したというエピソード。これ、他でも読んで知っていたのですが、素晴らしいと思いました。
※番外【Photo歳時記】好きです。特に富士山シリーズ。もっと見たい。

 

倉野武(ライター)

(1) 私たちのワクチン接種体験【特集】(6月21日)
(2) 連載「書物でめぐる武蔵野」(10月28日など)
(3) 「あるこ」で歩こう 西東京市の健康アプリが人気(9月6日)

 

新ひばりが丘中学校

西東京市のワクチン接種会場となった第10中学校(新ひばりが丘中学校)

 

「西東京市長選と法定ビラをめぐる攻防」「イトーヨーカドー田無店閉店」「都道西東京3・4・9号線一部交通開放」「エミオひばりが丘オープン」など地域で話題のニュースも多かったが、やはり注目は、新型コロナウイルスをめぐる動き。感染者数の推移、クラスターの発生、学校など施設に加え、ワクチン接種に関する手続き、副反応などへの不安も大きく、情報が求められた。

(1)は、ひばりタイムス執筆陣によるワクチン接種体験報告。高齢者、その家族という読者と同じ立場で体験した一部始終をまとめているだけに、少しでも読者の不安払しょくに役立っていればと願うばかりだ。

(2)は編集者の杉山尚次さんによる月に1度の連載。西東京市を中心とした武蔵野地域を舞台に、巧みな文章、蘊蓄(うんちく)と含蓄(がんちく)あふれる内容で毎回引き込まれる。なかで10月28日にアップされた『大泉はなぜ「学園」なのか』の一コマ「BARレモン・ハート」のくだりにそそられた。「ダメおやじ」などで知られる漫画家、古谷三敏さんがオーナーの店で、同じタイトルの漫画も連載、テレビでドラマ化もされている。店主・バーテンダー氏は古谷さんのお孫さん。コロナが落ち着いたらぜひのぞいてみたいと思っていたら、12月8日に古谷さんが85歳で亡くなったとの訃報―。さらに印象深くなった。

(3)は恐縮ながら、自分が取材した記事だ。「健康」応援都市でもある西東京市が市民の健康づくりのため令和2年11月にスタートさせた健康ポイントアプリ「あるこ」が順調に登録者数を伸ばしていることを紹介。10月30日には、「あるこ」を使った初の大規模ウォーキングイベントも開催された。私も当然登録。市内はもちろん、住所など地域単位の歩数ランキングも出るため、正直、燃える。もともとランニングを習慣にしているが、登録後は「もう少し走るか」と力が入り、体調もよくなった気がする(個人の感想です)。西東京市民の方にはぜひともおすすめです。

 

渡邉篤子(生涯学習音楽指導員)

(1) 新年特集「2021年の三が日」(1月3日)
(2) 大人の悩みに生徒が回答!西東京市立田無第一中学校の「放課後カフェ別室」(7月2日)
(3)座談会「傍聴席から見た議会」 みんなの議会をもっと身近に(10月18日)

 

年の初めに祈る(尉殿神社)

 

 1年間の記事を振り返ると、刺激を受ける記事、役に立つ記事、感心する記事、多様な記事が掲載されていることをあらためて感じた。

(1)は、コロナ関連の記事の中で子どもがお参りをする姿にすがすがしさを感じ、記事を読むとほっとした気持ちになりました。このような内容の記事はひばりタイムスならでは、かと思います。

(2)は、報じられた記事の内容に「あっぱれ!」をあげたくなりました。いつもと立場が入れ替わるワクワク感がありました。見事に悩みに答える生徒たちと大人の心が触れ合う様が感じ取れて、読み返すたびに、肩の力が抜けるようです。

(3)は、議会の傍聴席が最近変わってきた、というリードで、興味津々で読んだ記事です。自分にもチャンスはあるのに、なかなか足が向かない議会。どんなきっかけで行くようになったのか、知りたいと思いました。色々な声が聞けて説得力がありました。

 

北嶋孝(ひばりタイムス編集長)

・「週間コロナ感染」シリーズ
・「Photo歳時記」シリーズ
・ ……

 

週間感染の推移

西東京市の週間感染の推移(12月23日)

 

 編集長を名乗り、寄稿をお願いする立場なので記事を絞りにくい。結局、自筆記事絡みを取り上げることにした。と言うのも12月25日現在、掲載した474本のうち自筆が305本。本数だけは多かったのだ。

 あたらめて目を通すと、新型コロナ感染の患者数をまとめた「週間コロナ感染」シリーズに触れたくなった。読者の瞬間的なニーズに応えて消えるタイプでありながら、定時観測で時間の推移を記録する。二重の意味で「フロー型」の記事でもある。毎週欠かさず、次回で52本。この種の小記事の底堅い役目を忘れたくない。

 ひばりタイムスは「重厚長大」タイプの記事が多い。短文と写真で、身の回りの風景を切り取る企画が必要ではないか-。こんなメンバーの問題提起から「Photo歳時記」シリーズが生まれた。梅、バラ、桜、藤などの花尽くしから、富士山影の四季折々の移ろい、夕焼けに染まる朱色の空も登場した。読者の投稿で「虹」の写真と文を載せたこともある。現代生活版「花鳥風月」は粋だねえ。写真の魅力も伝えたい。

 シリーズ2本を取り上げたら肩で息する始末。3本を選び抜けそうもない。ご容赦を。

 自分で書いたのは出来事の記録、いわゆるストレート記事がほとんどを占める。その時々の関心に応え、あとはデータベースの海に姿を隠す。運がよければ検索の網で時折引き揚げられる。これはフロー型情報の宿命かもしれない。積もる落ち葉が肥やしになり、やがて大樹が育つ…。ひばりタイムスもそうありたいと願っている。

 日々の出来事を捌ききれず、取り残しも少なからず。年明けも、険しい山並みが控えている。それでもまずは視線を足許に落とし、落ち葉を踏んでゆっくり歩こうか。
(了)

 

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