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有賀達郎のデンマーク報告 「幸福度の高い社会」を視察する(上)

 

 J:COM西東京の話題インタビュー番組「たまろくと人図鑑」の案内役を務めるFM西東京の元社長、有賀達郎さんがデンマーク視察旅行の報告会を開くと聞いて、ぜひ寄稿を、とお願いしました。数多い写真と旅行記から、デンマークの風景や、人と社会の仕組みが浮かんできます。上下2回に分けて掲載します。(編集部)

 

 私は9月にまちづくり・政治・ビジネス・食とエネルギー・教育などの未来をみつけようというHISの8日間のスタディーツアー~Soul Journey~でデンマークに行ってきた。このツアーのタイトルって何なんだろうと思っていたが、帰ってきて振り返ってみると、結構良いタイトルだなと感じている。写真を並べてその辺りをレポート出来ればと思う。

 今となっては私がどのくらいデンマークに興味があったのか定かではないが、幸福度ナンバー1の国なんだなという程度の認識だった。そんな私がたまたま友人のFacebookの書き込みと資料を見て、これはぜひ行きたいと思ったような気軽なスタートだった。

 行く前に少し調べるだけで、投票率85%・消費税25%・所得税50%くらい・エネルギー自給率98%・再生可能エネルギー30%以上・原発なし・教育無料・医療無料・介護無料・全員国民識別番号制・政治透明度トップクラス・地方議員無報酬、その他へえーという数字が次々と並ぶような、日本とまったく違うデンマークの姿が見えた。実際に行ってみてこの違いは私には関係ない社会の出来事であるとか、手の届かないような物語ではないだろうなと感じている。

 

再生可能エネルギーだけで自給へ

 

ビールを飲み交わす松崎さん(右)と筆者(左)

【写真1】
 デンマークの前にフィンランドに立ち寄った。田無で活躍されていてご存知の方も多い松崎博(ヒロ)さんが夏の間はヘルシンキで生活をされているので連絡をしたら、港を見ながらワカサギのフライとビールを飲もうと誘っていただき行ってきた。

 

【写真2】
 コペンハーゲン空港から市内へ向かうバスから風力発電の風車が見え、早々に自然エネルギーの国を感じた。デンマークは2050年までにエネルギー供給を100%再生可能エネルギーにしようと宣言して、中間目標として2020年までに電力の50%を風力発電で賄い、2030年にはエネルギー供給の50%を再生可能エネルギーにするとしている。またコペンハーゲン市は2025年までに世界初のカーボンニュートラルな首都を目指し、エネルギー政策や環境政策などに取り組んでいる。

 

【写真3】
 40%以上の人が通勤に自転車を利用していると言われ、車道と歩道の間に車道程度の幅の自転車レーンがある。しかも同じ方向だけに走り、自転車専用道や橋があったり、大きな交差点では自転車のための右折レーンや信号があり、自転車が早くて便利な交通手段となっている。国の自転車白書には交通関連だけでなく、エネルギー削減や健康増進などと自転車利用の増加との関連が示され、一つの分野だけにとどまらないで幅広い視点から考えている姿勢が見えてくる。

 

【写真4】
 これは街のゴミ箱で、飲み終えたリータナブル瓶を外側に置けるようにしてある。瓶を回収して指定の場所に持っていくとお金になるので生活困窮者などが回収しやすいようにという意味がある。

 

【写真5】
 国会議員レナートさんとの対談。9つの政党があって絶対多数の党がないので、与野党ともに多数派を形成出来るように常に他の政党と話し合って物事を決めていく。小さくても決まったことは守る。大きな政策(例えばエネルギー政策目標)は政権が変わっても国是として変わらない。従って経済界は安心して大きな政策の関連分野に投資が出来る。

 

【写真6】
 国会議事堂見学。議場を後ろから見下ろす4体の彫刻は、漁師、農民、職人、商人の姿でいつも国民が見ているという表現、前の方の彫刻は尊厳、公正、権利、誠実を表し、天井レリーフでは神様たちもチェックをしていることを表している。

 

仲間と働き、オーガニックで世代をつなぐ

 

【写真7】【写真8】【写真9】
 起業家訪問でKROM KENDAMAへ。共同創業者のトーキルさんが17歳の時に旅行で日本に来てけん玉の魅力にはまり、デンマークに戻って見せていたら次第にファンが増え、自分もプレーヤーとしての腕を磨きながら起業。ボールの色やデザインを考えたが、日本のメーカーでは作れなくて中国で製造。日本への想いは大きく、東北の復興支援イベントにも参加、今年も11月来日予定。

 ROKOKOの共同創業者のマティアスさん。モーションキャプチャーのスーツを開発。シリコンバレーなどアメリカとも仕事をしていて映画制作にも使われている。一緒に仕事をしていて感じるのは、アメリカ人はお金が第一、自分たちは一緒に働く仲間がここで働いていて良かったと思えるのが第一というような違いを感じるそうだ。

 

【写真10】
 サロンカー風16人乗りバスでコペンハーゲンからロラン島ファクトリーロッジへ。高速道路の渋滞で到着予定が大幅に遅れて、ドライバーの勤務時間がオーバーしてもう働けないということで、バスには帰ってもらって、夕食の後はタクシー分乗でロッジへ。働き方の実情を体験した。

 

【写真11】
 ビジュアル気候センターでアメリカ海洋大気庁(NOAA)が開発した直径1.7メートルくらいの球体上に、様々なデータを動画で映し出し地球の様子を解説出来る地球儀(Science On a Sphere)で地球環境について解説を受けた。風や海流などの全地球的な動きとともに北極の氷が年々減っていく様子が手に取るようにわかり、大震災の津波の伝わる様子や排出された放射能が北半球全体に拡散していく様子などもわかる。また豚インフルエンザの流行状況は飛行機便で拡がっているのが見えて、拡散防止策は飛行機便を止めるというようなこともわかる。頭で知識として知っていても、動画で見ると地球環境の大切さがよりはっきりと伝わってくる。

 このScience On a Sphereは世界150カ所くらいに設置され、日本は宮城県東松島市のディスカバリーセンターで公開されている。

 また、ロラン島は風力発電など再生可能エネルギーで島内エネルギーの自給率が700%。さらに電気分解から水素転換してエネルギーを蓄積し、藻によるバイオマスなど再生可能エネルギーの島としての実証実験も進めている。

 

【写真12】
 オーガニックリンゴ農家のカイさん夫妻を訪問。リンゴからシードルやジュース、調味料などを自宅工場で作っている。コペンハーゲンで会社を経営していたがここに来て自分たちでリンゴを植えてリンゴ農家になった。何よりもストレスフルなコペンハーゲンからここに来られた。オーガニックというのは現在の消費者が美味しいとか安全に食べられるというだけではなくて、土を化学物質で汚さずにいれば何代先の世代でも安心してここの水を飲めるという意味が大きい。そのためにこの島のオーガニック農家で協力しあっている。

 

自由と自律の積み重ね

 

【写真13】【写真14】
 フォルケスコーレ(0年生[6歳になってもまだ1年生になるにはまだ早いような場合に、0年生として1年生になる準備をする]から9年生までが通う国立義務教育学校)を見学。5年生の算数の授業見学。20人くらいが5つのグループに分かれて一人1台のノートPCを使って別々に自分のペースで3桁の引き算を解き、わからない時にはまずグループ内に聞いて、それでもわからない時に先生に聞く。課題が出来ると自分で前に貼ってある週間予定表にチェックを入れる。予定表は全員がここまで出来て欲しいという課題と余裕があったらやれる人はやったら良いという課題が表示されている。

 9年生の国語の授業。名画を鑑賞して、自分が何を感じたか何がわかったかを発表する。9年生はこれから社会に出て行くので、自分で何を思っているかということをしっかりと人に伝えられなければ社会生活が成り立たないから、今ここで発表の仕方まで学んでいる。9年生校舎の廊下やドアにはケネディ大統領やキング牧師やマンデラ大統領の大きな写真と解説。

 

【写真15】
 1950年代にデンマークで発祥した森のようちえん。2~5歳までの子どもたちが雨でも雪でも、外での活動をしている。大人は見守るだけで、口出し手助けをしない。1人で遊んでいる子も、一緒に走り回っている子もそれぞれが勝手に自分のやりたいようにやっている。

 

【写真16】
 リサイクルセンター。ゴミの分別回収施設で分別の種類が30以上に分かれている。車の後ろに小さなトレーラーを付けた市民が自分で持ってきて、決められた分別番号に従ってそれぞれの場所に入れていく。小学生は授業で見学して、翌週には親など家族とここに来るというのが宿題として出される。

 

【写真17】
 スーパーキーレンというコペンハーゲンの移民が多い地区の再開発で作られた公園。いろいろな民族の想いを活かそうとさまざまな遊具が置かれていて、西東京市向台町のタコ公園にあるようなタコの形のすべり台や中東のデザインの砂場やタイボクシングのリングなど多くの遊具が並んでいる。

 

人は違う、だから互いを大切に

 とても良い経験をしてきた。短い時間の見学旅行ではあったが、分野ごとの掘り下げたツアーや観光旅行とは違って、様々な分野の人から直接話を聞くことが出来て、デンマークの社会全体がつながって機能しているということを感じることが出来た。小さい頃から人は一人ひとり違い自分も他の人とは違う存在だ、だからこそお互いを大切に思い、それが住みやすい社会になる基本だと思っている人たちなんだろうなと思った。

 お互いを大切にするという気持ちは日本にも以前からある感覚なので、私が住む社会と大きく違うデンマークの社会を見てただうらやましく思うのではなく、日本が少しずつでも変わっていけば、デンマークの人たちが幸せだと感じているように、日本も幸福度の高い社会になっていける可能性を知ったような気がする。それには何代かの世代が必要だと思うが、思いのほか早いような気もする。そのために我々の経験を伝え続けていくのが、見て来た者の役目かな、と思うような旅になった。

 

 さて、この報告は次回に続きます。
 「Soul Journey」に一緒に参加したメンバーで10月15日に「幸せの国デンマークから学び考える、日本のソーシャルデザイン~これからの生き方、働き方、教育~」という報告会を開催しました。50人の定員が開催発表一晩で満席になり、80人に増員しても、一日も経たずに満席になってしまいました。この会合の様子などもお伝えしてみたい。
>>(下)

 

【筆者略歴】
 有賀達郎(ありが・たつろう)
1950年東京生まれ。1997年夏の株式会社エフエム西東京の開局準備段階から放送現場に関わり、代表取締役を経て2016年3月に退社。FM時代から多摩コミュニティビジネスネットワークの世話人などを務め、FM退社後はJ:COM西東京の番組「たまろくと人図鑑」の司会、PlanT(日野市多摩平の森産業連携センター)のコーディネーターなど西東京をはじめとして北多摩や多摩エリアで活動中。

 

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