親子の散歩

特集 写真で振り返る2022

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2022年12月25日

 ひばりタイムスは、写真にたっぷりスペースを割いています。記事も大事。写真も大切。それなら写真を手掛かりにこの1年を振り返ってみたらどうか-。編集会合でそうまとまりました。市民ライターズ倶楽部の常連執筆メンバーが、自分とほかの人の記事から写真を各1枚選び、過越しの2022年を振り返ります。(編集部)(写真は、親子で散歩。1月22日掲載「早咲きに“春の兆し”【Photo歳時記】」から)

 

 

戦争がリアルに迫ってきた by 片岡義博

 

戦災変電所

壁面の弾痕を見つめる子どもたち(戦災変電所前で「平和市民のつどい」 東大和市、3年ぶりの開催 8月21日掲載から)

岡田斗司夫さん

終了後も岡田さんのもとには生徒が次々と集まり…(「最悪の平和」か「まだマシな戦争」か 自由学園の「平和週間」で岡田斗司夫さんらが講演 10月2日掲載から)

 

 迷った。この1年、読ませる記事、重要な記事はたくさんあった。面白い写真、見事な写真も少なからずあった。「この1年を振り返る」という意味で戦争に関わる2枚を選んだ。

 1枚目は、東大和市が8月20日、旧日立航空機株式会社変電所前で3年ぶりに開いた「平和市民のつどい」。「西の原爆ドーム 東の変電所」と呼ばれるだけあって、変電所の壁面には戦時下の戦闘機の機銃掃射による弾痕や爆撃による傷跡が生々しく残っていて圧倒される。見学に訪れた少女たちも恐る恐る壁面をつたい歩いていた。

 もう1枚は、東久留米市の自由学園で10月20日、「国際平和デ―」にちなんで開かれた作家岡田斗司夫さんの講演会。「最悪の平和」か「まだマシな戦争」か、生徒たちに思考実験を呼びかけた岡田さんのもとに、講演終了後、生徒たちが集まった。

 戦争がリアルに迫ってきた1年だった。少女たちは何を感じたか。生徒たちはどんな問いかけをしたのだろう。
(片岡義博)

 

 

「戦」に思いをはせる by 倉野武

 

戦災変電所

旧日立航空機株式会社変電所と平和祈念キャンドル(戦災変電所前で「平和市民のつどい」 東大和市、3年ぶりの開催 8月21日掲載から)

 

 8月20日に、東大和市の旧日立航空機株式会社変電所(戦災変電所)前で開かれた「第18回平和市民のつどい」を報じた記事の写真。戦争体験に触れて平和の尊さを伝えるイベントで、コロナ禍により3年ぶりの本格開催となった。変電所の壁面などにも戦闘機の機銃掃射による弾痕やB29の爆撃による傷跡が残り、戦禍を伝える貴重な施設として「西の原爆ドーム 東の変電所」と呼ばれているという。平和を祈るキャンドルやライトアップで浮かび上がった戦災変電所は、映画のセットのようにも見えるが、異様な迫力がある。「戦」が今年の漢字になったが、今年だけの話ではないと心にとどめておきたい1枚だ。

 

伊藤信行・万里子夫妻

閉店後、店頭に立つオーナー、伊藤信行さん・万里子さん夫妻(閉店公表から1カ月、連日行列できる 田無・フジカフェが58年間の営業に幕 8月29日掲載から)

 

 長年、西東京市の田無駅前で営業を続けてきた喫茶店「フジカフェ」が8月に閉店。7月に閉店が発表されると連日、ファンのお客さんでにぎわった。最終日の8月27日、閉店後に店の前でオーナー夫妻を撮影した。1964年の東京オリンピック直前から58年にわたった営業。正月以外年中無休で、紆余曲折を経ながらの営業はまさに「戦」だったに違いない。お疲れ様でした。(倉野武)

 

 

人と街が表情をもつ瞬間 by 杉山尚次

 

伊藤信行・万里子夫妻

閉店後、店頭に立つオーナー、伊藤信行さん・万里子さん夫妻(閉店公表から1カ月、連日行列できる 田無・フジカフェが58年間の営業に幕 8月29日掲載から)

 

 去年も書いたのですが、「Photo歳時記」って好きです。街が表情をもつ瞬間ですね。その時を切り取った画像は、どれも素敵です。1.6北嶋孝編集長による雪のひばりヶ丘駅や雪帽子のバラ、10.20片岡義博さんのベランダからの空、12.8卯野右子さんの神代植物公園の紅葉、などが印象に残っています。ただ、今回は風景写真ではなく、8.29倉野武さんが撮られた閉店する「フジカフェ」を営むご夫婦の写真を推すことにしました。奥様のなんともいい笑顔とご主人の微妙な表情が、「ああ、この店はなくなってしまうのだなぁ」という感慨をもたらしてくれます。

 

武蔵関駅前通り商店街

武蔵関駅前通り商店街(書物でめぐる武蔵野 第19回 武蔵関と桐野夏生の土地勘 5月26日掲載から)

 

 自分の写真は、5.26「武蔵関の商店街」です。こういうずらっと旗と柱が並んでいるヘンな光景って、普段は「見ている」けれど、「見えていない」ものだと思うのです。写真に撮ると初めてそれとわかる。そういう意味で、オモシロイ写真になったのかと思っています。
 よく見ると「防犯カメラ作動中」です。
(杉山尚次)

 

 

対照的な気分を掬い取る by 渡邉篤子

 

戦災変電所

旧日立航空機株式会社変電所と平和祈念キャンドル(戦災変電所前で「平和市民のつどい」 東大和市、3年ぶりに開催 8月21日掲載から)

 

 温かなオレンジ色を帯びたキャンドルの灯りと反射光、室内の照明、と壁の傷跡。戦災変電所の写真を見て、ドキッとした。毎日のように画像で知らされるウクライナでの戦災。70数年前、この地でも同じようだった、ということを強く思った。もう10カ月も経つ、と振り返ると同時に、まだまだ続く予感がしてくる。

 

ケヤキ

見上げるほど高い(特集 わたしの「ほっとスポット」 ケヤキを見上げて 5月8日掲載から)

 

 ケヤキの写真は何度も撮っているけれど、今回の写真が一番気に入っている。電線のない空、散歩中の人も良いかげんで写っている。何かが解決するわけではないけれど、ちょっとだけ気持ちが緩む気がする。

 意図したわけではないが、2枚の写真は対照的な気分を掬い取ったもの、になった。2022年は特別な1年だった。
(渡邉篤子)

 

 

忘れてはいけない記憶 by 川地素睿

 

戦災変電所

旧日立航空機株式会社変電所と平和祈念キャンドル(戦災変電所前で「平和市民のつどい」 東大和市、3年ぶりの開催 8月21日掲載から)

 

 選んだ2枚とも、灯かりに浮かび上がる絵や建物の写真になった。新型コロナ感染の中で、人の思いを形にしたいとどこかで思ったのかもしれない。2022年、忘れてはいけない記憶は記録として残しておくべきだと改めて思う。
(川地素睿)

 

 

自然に人間の小ささを思う by 卯野右子

 本当にあっという間に1年が過ぎてしまった。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって10カ月。辛く暗いニュースも多い1年だった。そんな中、私は2枚とも【Photo歳時記】から。

 

富士山

11月25日午後4時25分、小平市鈴木町のマンション5階から(空と陸の三角形【Photo歳時記】 11月25日掲載から)

神代植物公園の紅葉

晩秋の日差しを浴びて輝く色とりどりの紅葉(神代植物公園の紅葉 深まりゆく秋の彩り【Photo歳時記】 12月10日掲載)

 

 11月25日、片岡義博さんの「空と陸の三角形」この空はウクライナにもロシアにも繋がっていて、我々は地球という名の一時の住人だということを思い起こさせてくれる。自分の一枚は、12月10日、神代植物公園の紅葉。木々は紅葉し、葉を落とし、春が巡ってくればまた芽吹く。自らの命を次に委ねて散っていく間際に最後の輝きをみせる命の循環。人間も自然の一部。

 争うことになんの意味があるのだろうかと、人の小ささ、愚かさを思う。
(卯野右子)

 

 

「戦火」と「戦禍」の切れ端  by 北嶋孝

 

 コンクリート壁と弾痕、夜のライトに浮かぶ真っ白なブラウス姿の少女たち。戦災変電所の写真から、戦禍と平和の象徴が対照的に浮かび上がる。そのほか地元で人気だったコーヒー店「フジカフェ」の閉店、3年ぶり開催の「土佐赤岡絵金祭り」も、写真が訴える力を存分に発揮した。

 

どんど焼き

松飾りなどが炎に包まれた

どんど焼き

黒焦げになって転がり出たダルマ(西東京市の明保中学校でどんど焼き 1月9日掲載から)

 

 意中の写真は既に選ばれてしまった。自分で撮った写真はどれにしようか。コロナ禍、旧統一協会関連の記事も書いた。しかし掲載写真はどれも事態の補足説明に傾いている。結局、富士山を撮った1枚から始まり、最後はどんど焼きの写真にたどり着いた。焼け出されたダルマの目玉が痛々しい。きな臭い「戦火」と「戦禍」の切れ端にも見えてくる。
筆者執筆の記事1本から写真2枚。いささか変則的な選択になった。乞うご容赦。
(北嶋 孝)

 

 

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