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第27回 西洋、東洋の垣根を越え健康寿命を延ばす方向へ


  富沢このみ(田無スマイル大学実行委員会代表)


 

 超高齢社会を迎え、医療費の増加が問題視されている。また、多くの人は、健康寿命を延ばし、平均寿命との差を縮めようと願っている。こうした時代の要請に対する解の一つが東洋医学的な治療法ではないかと思う。

 

体験者からの驚くような報告

 

 私は、五十肩(実際には七十肩)になり、手が上がらなくなった折、知人から紹介され、半信半疑で電位治療を受けてみた。20分ほど座っているだけの治療で、説明では、全身の血行が良くなるのだという。私の場合は、週2から3回、3カ月くらいで肩が楽になった。私や知人が通っているのは、日本スーパー電子㈱が普及のために各所で設けている「ハピネスプラザ」で、20分無料でかかることができる(注1)

(注1) 無料でかかれるというと、胡散臭いのではないか、高い治療器を売りつけるのではないかと懸念されるが、あくまで体験者が増え評判が高まることによって、近隣の公共施設や診療所などに普及させるのが主な目的とのこと。この場所では、商品の販売はしないことになっている。時々キャンペーンが実施され、その折、購入したい人は、申込みをする仕組みだ。

 

富士見橋バス停近くにある「ハピネスプラザ」

 

 私自身、まだ半信半疑で、五十肩は、電位治療を受けなくても治ったのではないかとも思っている。そこで、自身の身体にどのような変化が現れるものかと実験も兼ねて通っているのが正直なところだ。しかし、そこに通っている方々からは、驚くような報告がある。

 今日聞いたのは、半年前に足が痛くて杖をついて来た80代の女性が、昨日は、バスが来たので思わず停留所まで走ってしまったというのだ。決して「さくら」ではない。その方自身、自分でも驚いたと照れくさそうに話しておられた。

 「爪の伸びが早くなった」
 「夜中に幾度もトイレに起きていたが、起きなくなった」
 「寝つきが悪かったのだが、ぐっすり眠れるようになった」
 「膝の痛みが取れ、大好きだった山登りに復帰した」
 「足が痛くて大好きなダンスも休み休みしていたが、今日は、老人ホーム2ケ所訪問して踊ったが少しも疲れなかった」
 「糖尿病だったが、血糖値が低下した」
 「高血圧だったが、正常値になった」…
などなど、来ている方が、次々と嬉しそうに話している。しかも、多くの人は、膝が痛くて、腰が痛くて…など、喫緊の悩みで来たのだが、治療を受けているうちに、身体の別のところが改善したと話している。

 

電位治療って??

 

 私がかかっているのは、「電位治療」と「温熱治療」が組み合わさったもの。「温熱治療」については、温泉のイメージと重なるし、体温が上がると基礎代謝や免疫力が高まると言われているので、ある程度分かる気がする。一方、「電位治療」については、いろいろな説明を読んでも、効能のメカニズムが良く分からない。

 

 

 一般社団法人日本ホームヘルス機器協会のHPによると、「家庭用電位治療器は、身体に対して『押す』『もむ』などの物理的な力を与えるものではなく、人体を交流又は直流電界に置くか、絶縁状態に置いて電位を与えて治療する家庭用の機器をいい、『頭痛』『肩こり』『不眠症』及び『慢性便秘』の緩解を目的とする、家庭用医療機器である」と説明されている。これを読んでも良く分からないが、私なりに理解すると、身体に高電圧をかけると、床などの電圧ゼロに向かって水が高いところから低いところに流れるように、微弱な電子の流れ(電流)が生じる。これによって、自律神経のバランスが取れ、免疫力がアップし、身体の末端まで血行が良くなるらしい。

 血液は、酸素と栄養を運ぶので、血行が良くなると上記の体験者が報告しているように、身体全体にさまざまな良い効果があるようだ。しかし、科学的な証明がされていない(エビデンスがない)こと、個々人によって効果の表れ方が異なることから、薬事法で「頭痛、肩こり、不眠症、慢性便秘」の4つの緩解以外の効果を謳うことは厳しく禁じられている。このため、各社は、体験場を設け、実際に使用してみて効能を実感する、あるいは体調が良くなったという体験談を聞いて効能を知ってもらう、という普及方法を取っている。

 日本ホームヘルス機器協会に加入している電位治療器メーカーは、30社ほど。電位治療器は、長い歴史があり機器所有者も多い。医療機関、整体・整骨院、スポーツ施設、福祉施設などに設置されており、西東京市でも、老人福祉施設に13台設置されている。また、西東京市には、㈱白寿生科学研究所の体験場「ハクジュプラザ」も田無警察近くにある。

 

統合医療への流れ

 

 西洋医学は、身体の部位ごとに診断が行われ、科学的根拠に基づいた治療が行われる(EBM:evidence based medicine)。たとえば、腰が痛い場合には、湿布の処方やヒアルロン酸注射が打たれる。症状がひどければ、手術となる。このような病気の症状に対応して、その症状を除いたり緩和したりする治療法は、「対症療法」と呼ばれる。これに対し、東洋医学では、腰痛は、身体全体の不調によるものと考え、身体のバランスを取り戻し、自然治癒力を働かせて改善しようとする。

 対症療法は、感染症や外傷治療などに大きな効果を上げてきた。しかし、時代とともに、精神疾患(統合失調症、うつ病など)や慢性疾患(糖尿病、高血圧、がん、心疾患、脳血管疾患など)が増加してきた。これらの病を治すには、生活習慣の改善が必要であるとされ、食生活の改善、適度な運動、十分な睡眠、禁煙などの指導がなされている。また、西洋医学でははかばかしい改善が見られないとして、東洋医学的な療法(漢方、健康食品、各種の民間療法)を利用する人々も増えている。

 欧米では、こうした状況を踏まえ、西洋医療を代替医療で補完する「統合医療」が登場してきた。ハーバード大学のアイゼンバーグ博士らの「アメリカにおける代替医療の利用率調査」では、米国民の約1/3がCAM(Complementary and Alternative Medicine:代替医療)を利用していると報告された。これをきっかけに1992年、米国のNIH(National Institute of Health)にOAM(Office of Alternative Medicine:代替医療事務局)が設立され大学を中心に代替医療についての調査が開始された(注2)。

(注2)1998年にOAM はNCCAM(National Center for Complementary and Alternative Medicine)に昇格。

 日本でも、厚生労働省が『「統合医療」のあり方に関する検討会』を設置し、2013年2月に報告書として「これまでの議論の整理」を公表、「近代西洋医学を前提として、これに相補・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」としている(注3)

(注3)この委員会に委員として参加した日本医師会副会長の羽生田俊氏は、NCCAMが「統合医療」を、「従来の医学と、安全性と有効性について質の高いエビデンスが得られている相補・代替医療とを統合した療法」としている定義と異なり、日本の場合には、「統合医療」の安全性・有効性に関わることが不明瞭で、医療安全が最優先されているとは言えないと警告を鳴らしている。(「統合医療とその問題点」)

 日本では、1998年に日本補完代替医療学会が設立され、2008年に日本統合医療学会が設立(注4)されている。

(注4)1998年に日本代替・相補・伝統医療連合会議、2000年には日本統合医療学会が設立され、2008年両者が統合された。

 

 

 また、厚生労働省主導で、2014年から「統合医療」情報発信サイトが設けられており、エビデンスに基づいたさまざまな伝統医療についての情報が提供されるようになった。ここには、医学論文のシステマティック・レビューを行なう国際的団体コクラン(Cochrane)が作成している、コクラン・レビュー(英語サイト)のサマリーも和訳付きで掲載されている。

 しかしながら、「統合医療」の場合には、基本は、あくまでも西洋医療であり、エビデンス(科学的根拠)の明確なものに限って、伝統医療等を取り入れるとしている。注3で日本医師会副会長が警告しているように、医師としては、エビデンスが明確ではない伝統医療等を取り入れることは、受け入れがたいものに違いない。私自身、エビデンスが明らかになっているであろう漢方薬を医者から処方されているが、国が「統合医療」を推進しているなんてこの原稿をまとめるまで知らなかった。

 

自然治癒力を高める

 

 医学の源流とされる古代ギリシャのヒポクラテスは、身体自体に不調を治す働きがあると指摘し、また「病気」というのは失われたバランスを身体が取り戻そうとしている状態であるとした。そして、医者の主たる役割というのは身体が持つ自然に治癒しようとする性質を助けることであり、治癒的な性質の妨げになっているものを取り除くことであると言っている。

 たとえば、風邪をひいて熱が出るのは、ウイルスが平熱だと繁殖しやすいため、身体が自ら体温を上げてウイルスの働きを弱めるとともに、免疫機能を高めるためと言われている。自然治癒力の力を信じれば、解熱剤を服用するのは、逆の効果ということになる(注5)

(注5)そうは言っても、自然治癒力に任せるのは、なかなか難しい。私自身、この原稿を書いている途中、風邪をひいたが、我慢できずに風邪薬を服用してしまった。

 このように、人間の身体を全体的(ホリスティック)に捉え、自然治癒力を高めることを治療の原点と考える人たちによって、NPO法人日本ホリスティック医学協会が1987年に設立されている。ここでは、人間の「からだ」を肉体・精神・心・霊魂の総体としている。

 同協会は、ホリスティック医学の定義として次の5つを挙げている。

1. ホリスティック(全的)な健康観に立脚する
2. 自然治癒力を癒しの原点におく
3. 患者が自ら癒し、治療者は援助する
4. 様々な治療法を選択・統合し、最も適切な治療を行う
5. 病の深い意味に気づき自己実現をめざす

 

(出所)NPO法人ホリスティック医学協会のHPより

 

 ホリスティック医学の考え方は、納得できるものだが、HPを見ても、具体的にどんな治療がなされるのかは、今ひとつ分からない。日本ホリスティック医学協会に加入している先生を信頼するしかないのだろうか。

 自然治癒力を高める療法としては、さまざまな方法が提案されている。医学博士石原結實氏(公式サイト)は、どんな病気も「血液の汚れ」が原因であり、その汚れがとれれば、体が温まり、免疫力が高まって、風邪も肩こりも高脂血症もガンも治るとしている。そのためには、薬を使うのではなく、食事療法や運動療法が大事であるとし、人参ジュース断食などを推奨している。医学博士森下敬一氏は、国際自然医学会を設け、全ての病気の原因は血液の汚れであるとし、玄米・雑穀ご飯を主食とした正しい食事療法が必要であるとしている。

 「自然治癒力を高める」、「病ではなく人を診る」という考え方には賛成でも、ネット検索を少しするだけで、このように、いろいろな療法が目に入ると、素人である私たちは、戸惑ってしまう。

 

医療費削減の可能性

 

 高齢化に伴い、医療費が増大することが懸念されている(図参照)。しかし、本当に適切な医療行為が行われた結果なのか少々気になるところだ。一つは無駄な検査が行われているのではないか。

 

 最近、高齢の複数の知人から、不必要と思えるレントゲン写真やMRIを撮られたという話を聞いて驚いた。ある知人は、転んで手首を痛め整形外科に通っていたのだが、リハビリも進みだいぶよくなってきた頃、レントゲンを撮りましょうと言われた。てっきり、手首を撮影し、治り具合を確認するのかと思ったら、足のレントゲンだったというのだ。個人経営のクリニックだから、患者が治ってしまうのは、経営上困るからなのだろうか。高齢になれば、どこか悪いところはあるもので、次の患部を探そうとしたのではないか。別の知人は、腰の調子が悪いので整形外科に行ったところ、レントゲンやMRIを撮られたという。骨折したわけでもないのに、本当にここまでする必要があるのだろうか。当人は1割負担であるとはいえ、これでは医療費が高くなるのは当然だ。

 もう一つは、細分化された医療のなかで、「健康になるために」薬が投与されているのだろうかという疑問だ。薬剤師の宇田川久美子氏は『薬が病気をつくる』(あさ出版、2014年)という本を著し、特に生活習慣病の場合には、薬に頼るのではなく、ウォーキングと食事改善で健康な身体をつくることが望ましいとしている。

 素人ながら、「薬には副作用があると聞くので、長期間服用するのは如何なものなのだろうか」「薬は、発熱などの症状を和らげるのに効果があるものの、薬の投与で健康になるのだろうか」「西洋医学の場合、身体の部位ごとに診療科が異なるので、たとえば腰痛に処方された湿布薬が肝臓や腎臓に悪い影響を与えるといったことはないのだろうか」などなど心配になってしまう。こういう心配は、患者から医者には相談しにくい。当然のことながら、医者は、自分の処方には、エビデンスもあり、自信があるからだ。

 電位治療の体験場に来ている人のなかには、長期間薬を処方されているが一向に良くならなかった人たちがいる。そういう人たちがしばらく電位治療にかかり、「腰の痛みが取れた」「眠れるようになったので、睡眠導入剤を飲まなくなった」「血圧が下がり、高血圧の薬を飲まなくなった」などと晴れやかに報告する。なかには、かかりつけの医者がデータの変化を見て驚く場合もあるらしい。

 今回、この連載を書くにあたって、身体の仕組みをにわか勉強した。十分理解できたわけではないが、人間の身体が実に良く出来ていることに感心した。科学は、自然界に起こっている複雑な現象を、要素に分けて調べる。しかし、それを集めただけでは、全体の仕組みは分からない。西洋医学は、人間の身体を部分に分けて発達してきたが、それで身体の仕組み全体が分かったわけではないのではないか。東洋医学的治療は、科学的根拠がない(エビデンスがない)と言われ、ややもすると「エセ科学」とされる。しかし、科学そのものが本来、「群盲象をなでる」なのではないか。

 現在主流である西洋医学は、専門分化した治療法を、人間を診るという観点から、いま一度洗い直して欲しい(注6)。また、エビデンスがない場合、東洋医学的な治療法を患者に勧めることはできないにしても、活用できるものかどうかを検討する一歩を踏み出してもらいたい。一方、東洋医学的な治療をする医者やメーカー等も、できるだけ科学的根拠を明確にする努力をし、素人が安心して療法を選択しやすいようにして欲しい。

(注6)患者の考え方にも問題があるようだ。「あの医者は、薬も出さずに、ただ安静にしろと言う」などと、むやみに薬に頼るのは、自らの健康寿命を縮めるものだと自覚する必要がある。

 いずれにしても、多くの人は、死ぬまで健康でいたいと思っている。せっかく延びた寿命なのに、健康に不安を覚えたり、ましてや寝たきりであったりでは、何の意味もない。やりたいこと、楽しみたいことをやりながら寿命を全うしたいものだ。「未病」や「フレイル」など、健康と病気の間に焦点を当て、「予防」が重視される昨今、適度な運動、適切な食事に加え、自然治癒力を高める東洋医学的な治療にもう少し光を当てても良いのではないだろうか。医学は、東洋、西洋の垣根を越えて、今一度、人間の身体を総合的に診られるよう、成熟していって欲しい。
(写真・画像はすべて筆者提供)

 

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。大手銀行で産業調査を手掛ける。1987年から2年間、通信自由化後の郵政省電気通信局(現総務省)で課長補佐。パソコン通信の普及に努める。2001年~2010年には、電気通信事業紛争処理委員会委員として通信事業の競争環境整備に携わる。
 2001年から道都大学経営学部教授(北海道)。文科省の知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツエリア」に参画。5年で25億円が雲散霧消するのを目の当たりにする。
 2006年、母の介護で東京に戻り、法政大学地域研究センター客員教授に就任。大学院政策創造研究科で「地域イノベーション論」の兼任講師(2017年まで)。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。
 主な著書は、『「新・職人」の時代』』(NTT出版)、『新しい時代の儲け方』(NTT出版)。『マルチメディア都市の戦略』(共著、東洋経済新報社)、『モノづくりと日本産業の未来』(共編、新評論)、『モバイルビジネス白書2002年』(編著、モバイルコンテンツフォーラム監修、翔泳社)など。

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