第37回 循環型経済に向かって


  富沢このみ(田無スマイル大学実行委員会代表)


 

日本のごみ処理方法に違和感

 

 この連載の35回で、ごみについてまとめた。西東京市では、ごみは、かなりリサイクルされており、焼却灰はコンクリートになり、焼却の際に発生する熱は、温水プールや暖房などに活用されており、きちんと処理されていることが分かって安心した。

 しかし、同時に違和感も抱いた。というのは、ごみの処分には、膨大な予算、人手、エネルギーが使われていることだ。将来的に、本当にこれで良いのだろうかと。そんな時、欧州では、循環型経済(サーキュラーエコノミー)に向かっているという話を聞き、目から鱗が落ちるというか、妙に納得した。

 

循環型経済とは

 

 循環型経済とは、従来の「Take(資源を採掘して)」、「Make(作って)」、「Waste(捨てる)」という直線型経済システムでは捨てられていた、製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく、資源を循環させる経済の仕組みのこと。

 注目されるのは、循環型経済は、これまでの「リデュース」、「リユース」、「リサイクル」という3Rの考え方(リユース型経済)とも区別されていることだ。循環型経済は、最初から、資源の回収・再利用を考えて製品を設計・デザインし、回収や解体を容易にして資源を再利用しやすくし、廃棄物ゼロを目指している。

 2050年までに100%循環型経済を実現するという目標を掲げているオランダ政府は、次の3つの図で循環型経済の概念を説明している。

 

 

 要は、大量生産・大量消費という経済の仕組みが「直線型経済」、その仕組みを前提に、廃棄物をできるだけ少なくしたり、再利用したり、リサイクルしたりというのが「リユース型経済」、そうではなく、設計の段階から、資源の再利用を考えて製品を作り、修理や部品交換をしながら製品寿命を出来るだけ延ばし、出来る限り廃棄物をださないというのが「循環型経済」というわけだ。

 

何故、循環型経済が求められるのか

 

 循環型経済が求められる背景には、人類が環境に与える負荷がすでに地球の1.7倍に達しており(2018年)、世界中の人々が現在のアメリカの平均的な生活をするようになると、地球が5個も必要になると言われている(注1)。国連の推計によると、2019年の世界の人口は、77億人であったが、2050年には98憶人になるという。生活水準が高まり、人口が増加することを考えると、世界中の人々が地球1個分の負荷で生活しなければ、持続可能な発展は不可能ということになる。

 

図2 地球は何個必要? もし世界人口がその国と同様の生活をしたら…

 

(注1)エコロジカル・フットプリント(ecological footprint)という考え方に基づく。エコロジカル・フットプリントは、地球の環境容量をあらわす指標で、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値。それが既に、地球を上回っている。
(出典)WWF(世界自然保護基金)「なぜ環境問題に取り組むのか

 

 欧州では、以前から、環境政策が実施されてきたが、そこに資源効率を高めることによる経済成長の考え方が加わり、欧州委員会では、2015年には、「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」が採択され、54の具体的行動が策定された。Circular Economy Hubによると、2012年から2018年には400万人の循環型経済に関する雇用を創出したといわれる。

 その実績を踏まえ、欧州委は2020年3月に、新計画「New Circular Economy Action Plan(新循環型経済行動計画)」を公表、EU全域で循環型経済を加速しようとしている。長期間の使用・再利用・修理・リサイクルが容易な設計や短期間での劣化防止などの義務付け、売れ残り耐久財の廃棄を禁止する法案を提出する予定である。

 面白いのは、消費者に対して「修理する権利(Right to Repair)」を認め、修理や部品、耐久性に関する情報へのアクセスを確保し、製品を長期間使えるようにするということまで示していることだ。重点分野として、電子機器とICT・バッテリーと車・包装・プラスチック・テキスタイル・建築・食の7分野で取り組みを加速するとしている。

 循環型経済への転換を図ることで、2030年までにEUのGDPを0.5%増加させ、70万人の雇用の創出につながるという調査(注2)も出されている。

(注2)欧州委員会“Impacts of circular economy policies on the labour market Final report

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