第40回 「おひとりさま」の老後:入院・手術を受ける時

 

7.増加が見込まれる「おひとりさま」

 

 今回は、「私ごととして」おひとりさまの「ヨタヨタ・ドタリ期」のうち、入院・手術する際の課題や問題点を取りあげた。しかし、上野千鶴子さんが近著『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)で書かれているように、かつては、少数派として「気の毒」に思われていた「おひとりさま」は、ここ数年急増しており、今後一層増えていくと予想されている。

 国勢調査によると、2015年現在、日本では1842万人が一人暮らしをしており、総人口の14.5%を占める。1985年は、総人口の6.5%が一人暮らしだったので、総人口に占める一人暮らしの比率は、この30年間で2倍以上に高まった。図4は、男女別・年齢階層別にみたもので、特に高齢者の一人暮らしが増え、今後も一層増えるとされている。

 

 

単身世帯

(図4)男女別・年齢階層別にみた単身世帯数の推移
(出所)みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦「要介護状態にある高齢単身世帯の実態と今後の課題

(注)1985年、2005年、2015年は、総務省『国勢調査』の実績値。2030年は、国立社会保障・人口問題研究所による推計値(2015年基準推計)

 一人暮らしが増えている要因の一つは、未婚化が進んでいることによる。図5のように、未婚率は、年々上昇している。25歳~39歳年齢層でみると、平成17(2005)年では、未婚率は男性が47.7%、女性が37.4%となっている。昭和45年には、男性21.7%、女性10.6%であったことを考えると隔世の感がある。

 もう一つの要因は、高齢夫婦が子供世帯と同居しなくなったことだ。高齢者夫婦二人暮らしで、配偶者が亡くなった場合でも、同居せずにおひとりさま生活を満喫する傾向が増えている。子供の世帯に遠慮しながら暮らすよりも、一人で暮らす方が、ストレスが無いからだ。上野さんは、これを「シングル・アゲイン」と呼んでいる。例えば、1985年は配偶者と死別した80歳以上女性とその子どもの同居率は69.7%であったが、2015年には46.8%に低下した(注2)。
(注2)総務省『国勢調査』1995年版と2015年版よりみずほ情報総研の藤森氏が計算。

 

未婚率

(図5)男女別・年齢階層別(25歳~39歳)未婚率の推移(全国)
(出所)総務省『国勢調査』2005年

 

 つまり、私のようなおひとりさまにとっての課題や問題点は、今後、日本社会にとって大きな課題や問題点になるということだ。日本では、介護や看取りは、身内(家族・親族)がなんとかするものという前提のもと、さまざまな仕組みがつくられてきたが、暮らし方や価値観が変化するなかで、変革を迫られている。
次のページに続く

【目次】
1.ヨタヨタ・ドタリ期への備え
2.おひとりさまの備え
3.入院するときに求められる身元保証人
4.病院にとってのリスク
5.身元保証等高齢者サポートサービス
6.介護保険制度と成年後見人制度の利用
7.増加が見込まれる「おひとりさま」
8.身じまいの作法の必要性

 

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