第4回 駅はバリアフリーになった?


東由美子(建築家)


 

 2000年交通バリアフリー法ができ、2006年にはバリアフリー新法が施行され、利用客が1日3000人以上の駅はこの法律の対象となりました。国土交通省の調べによると、西武鉄道はバリアフリー化率100%と公表されていますが、果たして本当にバリアフリーになっているでしょうか?

 西東京市には西武鉄道の5つの駅があります。西武新宿線に、東伏見、西武柳沢、田無の3駅。池袋線に保谷、ひばりヶ丘の2駅です。どの駅もホームから改札口、改札口から地上へのエレベーター、エスカレーターの設置は1か所は確保されています。ひばりヶ丘駅は北口へのエレベーターがないので課題となっていましたが、これから整備される予定のようです。ただ、ひばりヶ丘駅については改札階から南口地上階へのエレベーターのサインが小さくて、わかりづらいと思います。

 

わかりにくい南口へのエレベーターサイン(ひばりヶ丘駅)(写真は筆者提供)

わかりにくいひばりヶ丘駅南口へのエレベーターサイン
(写真は筆者提供)

 

 ホームドアについては法律では義務化されていませんが、視覚障がい者の事故防止のためには順次設置されることが必要だと思います。私も何度か視覚障がい者がホームから転落しそうになったり、車両と車両の間に乗り込もうとしたりするのを目撃しています。

 改札内のトイレについても、すべての駅で「だれでもトイレ」が設置されています。法律の指針のとおりにはなっているようですが、トイレについては課題も残されているように感じました。

 

エレベーターの陰にあるトイレ(ひばりヶ丘駅)(写真は筆者提供)

エレベーターの陰にあるひばりヶ丘駅トイレ(写真は筆者提供)

 

 ひばりヶ丘駅のトイレはエレベーターの陰になっていて、少しわかりづらいのと、車いすでのアクセスがしづらいと思います。田無駅のトイレはサインが小さくわかりづらいです。駅のトイレはお腹の調子が悪い時や、幼児が急に「トイレ!」と言い出した時など緊急を要することも多いので、場所がわかりやすく、アクセスしやすいことが大事です。その点、西武柳沢のトイレは改札の正面にあってとてもわかりやすいトイレです。あまりにも正面にあるので、どうかなと思われるむきもあるかもしれませんが、入口はガラスブロックの陰になっていますし、明るい雰囲気で私は好感を持ちました。

 

田無駅トイレサイン1_450

小さくてわかりづらい田無駅のトイレサイン(写真は筆者提供)

 

 トイレブース内の便器についても気になることがあります。徐々に洋便器主流となってきているようですが、田無駅の女性用トイレは和式3、洋式1となっています。その他の駅でも1か所は和式です。膝や腰に負担がかかり、しゃがむことがむつかしい高齢者が多くなっているので、もう和式便器はやめて、洋式のみの設置でよいのではないかと思います。和式のブースが空いているのに、洋式が空くまで待っている光景をよく目にしますから。

 

改札正面にある西武柳沢駅のトイレ(写真は筆者提供)

改札正面にある西武柳沢駅のトイレ(写真は筆者提供)

 

 また、視覚障がい者の方たちがよく言われることは、トイレのブース内の洗浄用ボタンの位置がトイレごとにまちまちでわかりづらいということです。洗浄ボタンだと思って非常ボタンを押してしまうこともしばしばだとか。操作方法もいろいろです。ボタンではなく手をかざす方法だったり、バルブを押す方法だったり、タンクのレバーを操作する方法だったり。目がみえていても迷ってしまうことがしばしばです。

 メーカーはどんどん新たな方法を開発するので使用する側はなかなかついていけません。ユニバーサルデザインをめざしているなら、わかりやすい規格を統一して続けて欲しいものです。

 毎日多くの人が利用する駅、バリアフリー化については法律の最低基準を満たしていることに満足せず、もっともっと使用者や障がい者の立場になって努力を続けてもらいたいと思います。

 

【筆者略歴】
 東由美子(ひがし・ゆみこ)
 1948年生まれ。建築家。東設計工房主宰。住宅、障害者、高齢者のグループホームの設計などに携わる。女性建築技術者の会会員(1986-1990年代表)。趣味は国際交流、太極拳。著書『もっと頭のいい収納―「かたづけ上手」のスッキリ生活術』のほか、共著『すまいのカルテット―春夏秋冬』、『いきいきさわやかーダイニング&キッチン』(女性建築技術者の会)『アルバムの家』(同)など。

 

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