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第11回 生活習慣を変えるには


 三輪隆子(みわ内科クリニック)


 

 年が明けて早ひと月。皆さんもう正月気分は抜けましたか? 年末年始の過ごし方は人それぞれだったと思いますが、年明けに太ってしまった、体がなまってしまった、という方は多いのではないでしょうか。私の外来でも、1月は、「年末年始に飲み食べ過ぎた」「何もしないでゴロゴロしていたので運動不足になった」と話される方が沢山います。もちろん、正月でもきちんと節制している方もいらっしゃいます。医師としては、当然健康のためにそちらの生活をお勧めします。しかし、正月は年1回の特別な時です。正月の状態が常態化しないように、年明けにしっかり気持ちを引き締めて生活習慣を改めていただければいいのではと思っています。

 

放置できない生活習慣病

 このように、皆様の生活習慣についてお聞きし、問題点の改善を促すことが私の重要な役割です。食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が病気の発生や進行に大きく関係している病気のことを生活習慣病と言います。高血圧や糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などが当てはまります。これらの病気そのものは、何ら自覚症状がないことがほとんどですが、放置すれば脳卒中や心筋梗塞や腎臓病など重大な病気の原因になります。認知症も生活習慣病と関連していると言われています。生活習慣病を予防すること、早めにきちんと治療することが健康に生きるうえで大切なのです。

 良い生活習慣を持つことは、すべての人にとって大切ですが、とくに家系に生活習慣病の方がいる場合にはより一層の注意が必要になります。このような方は高血圧や糖尿病になりやすい傾向があり、加齢によってその危険は増えます。生まれ持った体質や加齢は自分の力ではどうすることも出来ませんが、生活習慣は変えることができます。生活習慣病になりやすい体質の方も、若い頃からきちんと生活習慣を改善していけば、発症しないで済みます。発症してからでも、薬に頼らず良い状態を保つことができます。逆に、いくら薬を使っても生活習慣が変わらなければ効果は不十分になります。

 

変えたくない理由

 ということで、「甘いものを食べすぎるな」「塩分は控えろ」「脂っこいものを取り過ぎるな」「運動しろ」「酒は飲み過ぎるな」「禁煙しろ」と毎日多くの人に指導しています。中には、なぜ必要かを説明して、するべきことを話すだけで、自発的に生活習慣を改善し、素晴らしい効果を上げる方がいます。こういう方にはそれ以上私が言うことはありません。努力を称賛し、今後も継続していただけるようお話しします。一方で、何回説明しても、生活習慣の改善の必要性を理解していただけない方もいます。あまりしつこく言いすぎると、通院を中断されてしまうこともあります。通院が続くことが第一と、厳しい指導ができなくなり次の打つ手はと悩むことが多いです。

 しかし、このような方はまれで、大多数の方は、自分の生活を変えなければいけないと良くわかっていただけます。変えたいと思って何とか努力しようとされます。
「運動しようと思うけど、毎日仕事で忙しくて時間がない」
「痩せようとご飯の量を減らしているんだけど、ストレスがたまるとついお菓子を食べてしまう」
「歩き始めたけれど、忙しくて休んだらいつの間にかやらなくなった」

 行動に移すことは大変だし、継続することはもっと大変です。
 「頑張っているけれど生活変えるのは難しい。まあ、今はどこが悪いわけではないし、とりあえずこのままでもいいか」と自分を納得させしまうひともいます。

 私としては、こういう皆さんの気持ちが一番よくわかります。なぜなら、自分自身同じようなことを繰り返しているからです。とてもよくわかるけど、それでよしとするわけにはいきません。日々の外来では、どうしたらうまくいくのか一緒に考えていこうと努力しています。

 

話を聞いて褒める

 そのために私がしていることはなにか?
 第一は、一人一人の生活について詳しくお話を聞くことです。

 生活を改善するためには、その方の生活のどこが問題なのかを把握しなければいけません。簡単なことのようですが、表面的な会話ではわかりにくいものです。糖尿病の方には、甘いものは食べすぎないようにお話しします。甘いものを食べていませんか聞くと「甘いものはほとんど食べていません」それでは、果物は? と聞くと「良く食べますよ。果物は甘いものにはいるのですか?」
飲み物はどんなものを飲みますか?
「甘い飲み物は飲みません。脱水にならないようにスポーツ飲料は飲みます」
 果物もスポーツ飲料も甘いものに入るということを十分に伝えられていなかったことが問題でした。細かなところまで話をしないと見えてこない問題もあるのです。

 第二には、褒めることです。
 多くの人は、叱られより褒められた方がやる気が出ます。大変な努力をして(他人から見たら当たり前かもしれませんが)生活習慣を改善したのに、当たり前でしょうと言われるとがっくりしませんか。やる気になった、行動した、結果が出た。その時々にその努力を認め褒めるようにしています。中には、そんな些細なことで褒めるな、医者にはもっと叱ってほしい。という人もいます。その意見は尊重しますが、生活指導の基本は一歩前に進んだことを褒めることだと思っています。ですから、生活改善に協力していただく御家族にもできるだけ褒めていただきたいと思います。そして、誰も褒めてくれなかったら、自分で自分を褒めてくださいとお伝えします。それが次の一歩につながっていくと思います。
 自分自身の生活も振り返りながら、今日も皆さんに生活指導をしています。

 

©ks_skylark

 

【筆者略歴】
 三輪隆子(みわ・たかこ)
 認定内科医、神経内科専門医、身体障害指定医(肢体不自由、音声言語、平衡機能障害)。西東京市医師会理事。
 静岡県清水市(現静岡市清水区)出身。信州大学卒業後、信州大学第3内科入局。佐久総合病院で地域医療を研修後、東京都立神経病院、狭山神経内科病院で神経疾患、難病の診療に従事。1995年(平成7年)国立身体障害者リハビリテーション病院神経内科医長。リハビリテーションのほか社会復帰、療養・介護など福祉的な問題にも取り組む。2007年(平成19年)1月「みわ内科クリニック」院長。2013年(平成25年)6月医療法人社団エキップ理事長兼務。2017年(平成29年)4月から理事長。

 

 

 

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