第5回 スポーツ施設は利用しやすいか


東由美子(建築家)


 

 今回はスポーツ施設を訪ねてみました。今やスポーツは若者だけのものではなく、高齢者や障害者も積極的に運動することを奨励されています。スポーツ施設はそれに答える設備なっているでしょうか。

 西東京市には体育館のあるスポーツ施設は3つあります。向台にある「総合体育館」、保谷庁舎の隣にある「スポーツセンター」、それと南町スポーツ・文化交流センター「きらっと」です。

向台の総合体育館(禁無断転載)

向台の総合体育館(禁無断転載)

 総合体育館が最も古く築32年になります。1階に大きな体育室、地階に小さめの体育室とトレーニング室があります。鉄道の駅から遠いのが難点ですが、周りには田無市民公園や市民公園グランド、向台運動場があり、広々とした環境は魅力です。公園やグランドにも車いすでアクセスできるようになっています。私が訪れた時も近所の高齢者施設のお年よりでしょうか、車いすで公園に散歩に来ていました。

 建物が古いので地下には「だれでもトイレ」が無く、トイレの入口にも段差があるなどバリアフリー度は低いです。しかし、指定管理者による運営には市民に開こうとする努力が見て取れました。例えば、1階に体育館に対する要望や質問とそれに対する答えが貼りだされているなど。

スポーツセンターの正面階段(禁無断転載)

スポーツセンターの正面階段(禁無断転載)

 2番目に古いのが1993年竣工のスポーツセンターです。ここには第1体育室、第2体育室、トレーニング室の他にプールがあります。

 まず驚くのは正面入口前の階段です。数えてみると8段ありました。建物の高さを計画する上で必要と判断されたのかもしれませんが、この巨大な階段はいただけません。プールでは歩行に困難がある人がリハビリ訓練をしたりもするのですから、これだけの階段は問題です。幅の広い階段ですから、せめて手すりは両側だけでなく真ん中にも設けるべきだと思います。

長いスロープ(禁無断転載)

長いスロープ(禁無断転載)

 この段差を解消するため脇に非常に長いスロープも設けてあります。規定にはそっていますが、これだけ長いと電動でない車いすの人は入口にたどりつく前に疲れてしまうでしょう。

入口が暗い「きらっと」

入口が暗い「きらっと」(禁無断転載)

 一番新しいのは田無市庁舎の並びにある「きらっと」です。2006年に竣工しています。
 第1体育室、第2体育室、多目的ホールの他に武道場もあります。比較的新しいのでトイレなども整備されバリアフリー度は高いのですが、入口の暗さが気になりました。道路から見ると、上部に建物が張り出していてその下がとても暗いのです。入口も奥まっていてわかりづらく、ここが正面入口かどうか迷います。安全面でも問題だと思います。通路だけ日中でも照明を点灯するとか、LED電球などを利用して照度をあげるとかした方がいいと思います。

 

 施設のバリアフリーだけでなくソフトの面でどのような施策がとられているかスポーツ振興課にも訊ねてみました。障がい者とのスポーツを通しての交流には、研修を受けたスポーツ推進委員がとりくみ、「ボッチャ」などの競技を共に楽しむ機会も設けているようです。また、高齢者のスポーツの推進のためシルバーウィークやシルバー月間を設け、その期間は無料で施設を利用できるそうです。

 今後、障がい者や高齢者のスポーツはますます盛んになると思われます。そのために、施設自体のバリフリー度を上げるだけでなく、施設に行きやすいように交通の便を整えたり、利用しやすいプログラムを導入することにももっと力をいれてもらえるといいなと感じました。
(写真はいずれも筆者提供)

 

【筆者略歴】
 東由美子(ひがし・ゆみこ)
 1948年生まれ。建築家。東設計工房主宰。住宅、障害者、高齢者のグループホームの設計などに携わる。女性建築技術者の会会員(1986-1990代表)。趣味は国際交流、太極拳。著書『もっと頭のいい収納―「かたづけ上手」のスッキリ生活術』のほか、共著『すまいのカルテット―春夏秋冬』、『いきいきさわやかーダイニング&キッチン』(女性建築技術者の会)『アルバムの家』(同)など。

 

 

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