第39回 現代版駆け込み寺―生活サポート相談窓口

 

2.コロナ禍で急増した相談件数

 

 西東京市における生活サポート相談窓口への新規相談件数は、2016年には、351件であったが、新型コロナウイルス感染症による失業や減収により、2020年度には、前年度の2.6倍の1417件に急増した。離職・廃業、収入減に見舞われ、「収入が減ってしまい家計が苦しい」、「失業して家賃が払えない」、「債務の返済に困っている」といった、まさに明日の生活に困窮している人々に対する緊急性を帯びた相談が増えている。

 

生活困窮者自立支援法に基づく新規相談件数

図2 生活困窮者自立支援法に基づく新規相談件数 (出所)西東京市生活サポート相談窓口

 

 生活サポート相談窓口の相談件数のうち、「住まい・家賃・ローン」が762件と最も多く、次いで「収入・生活費」が639件。このため、最も利用された制度が「住居確保給付金」、次に多かったのが「生活福祉資金特例貸付(緊急小口資金・総合支援資金)」であった。

 

① 住居確保給付金
 「住居確保給付金」は、就職に向けた活動をすることを条件に、一定期間家賃相当額を給付する制度(返済の必要はない)。2020年4月に、それまで65歳未満であった年齢要件が撤廃された。また、それまで「離職・廃業から2年以内の方」との対象者の要件を拡大し、「休業等により収入が減少し、離職等と同程度の状況にある方」も含まれることになった。

 こうした制度の変更で利用しやすくなったこともあり、相談件数は、2018年度47件、2019年度53件であったところ、2020年度には5855件へとなんと100倍を超えた。支給決定数も、2018年度24件、2019年度22件であったのが、2020年度には1132件と50倍を超えた。家賃滞納で住まいを失う寸前であった人たちが、この制度により一定期間ではあるものの住み続けられることになった。

 

② 生活福祉資金特例貸付
 各都道府県社会福祉協議会は、これまでも低所得世帯等に対して、生活費等の必要な資金を貸し付ける制度を実施してきた。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、特例措置として、貸付の対象世帯を低所得世帯以外に拡大し、休業や失業等により生活資金で悩んでいる人を対象に、償還免除の特例を設けた緊急小口資金等の特例貸付を実施することになった。

 

生活福祉資金特例貸付

表1 生活福祉資金特例貸付
(出所)(社)西東京市社会福祉協議会のパンフレット

 

 全国のデータだが、令和元年度の貸付実績が、緊急小口資金9937件、総合支援資金470件であったところ、令和2年12月9日現在(速報値)では、緊急小口資金の申請総数が85万6218件、総合支援資金が51万7294件となっており、その急増が伺える(注1)。

(注1)厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室「生活困窮者自立支援制度の動向」(首相官邸「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」第15回配布資料3」より

 

 生活困窮者自立支援制度は、本来、自立のために就業を支援することを目指している。しかし、コロナ禍の下で、企業の経営が厳しく、求人は激減している。ちなみに、西東京市を管轄としているハローワーク三鷹の有効求人倍率は、2020年3月の2.18から、2021年3月には0.77、4月には0.64へと大幅に低下しており、新規求人数は、前年同月に比べ半減している。生活サポート相談窓口では、就業支援においても実績を上げているものの、制度が本来求めている就業による自立は、当面厳しい環境であり、当座の困窮をなんとかしのぐことに力を入れざるを得なくなっている。

 

ハローワーク三鷹の有効求人倍率

図3 ハローワーク三鷹の有効求人倍率
(出所)ハローワーク情報サイト

次のページに続く

【目次】
1. 西東京市の福祉丸ごと相談窓口とは
2. コロナ禍で急増した相談件数
3. 日本における「貧困」の再発見
4. 絶対的貧困と相対的貧困
5. 弱いところへの打撃が大きい
6.コロナ後の暮らし

 

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