第39回 現代版駆け込み寺―生活サポート相談窓口

 

4.絶対的貧困と相対的貧困

 

 一般に貧困は、2つの種類に分けて考えられている。ユニセフが対象としているように、食べ物がない、家がないなど人間としての最低限の生存条件を欠くような貧困のことを「絶対的貧困」。一方、世帯の所得が、その国の全世帯の所得の中間値の半分に満たない状態のことを「相対的貧困」と言っている。つまり、その国の文化水準、生活水準に比して、適正な水準での生活を営むことが困難な状態のことを指している。日本で問題視されているのは、後者である。

 

 厚生労働省の『国民生活基礎調査』2019年によれば、2018(平成 30)年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は 127 万円となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は 15.4%となっている(注3)。3年ごとに実施される調査の推移を見ると、1985年の12.0%から2012年の16.1%まで上昇しており、それ以降改善がみられるものの、15%前後で高止まりしている。なかでも、子どもがいる現役世代で大人が一人の世帯の貧困率は、1997年をピークに低下してきているものの、50%前後で推移しており、厳しい状況であることが伺える。

 

相対的貧困率(%)の推移

図5 相対的貧困率(%)の推移
(出所)厚生労働省『国民生活基礎調査』2019
 (1)1994年の数値は、兵庫県を除いたもの。(2)2015年の数値は、熊本県を除いたもの。

 

 このように、生活が苦しい人々が増大していることを受け、2013年12月に「生活困窮者自立支援法」が成立、2015年4月から施行された。その内容は、前述のように、生活に困窮している人に対し、就業など自立のための相談を行い、就業支援や住居確保給付金の支給、子どもへの学習支援などを行うというもので、雇用保険と生活保護の間に位置する「第二のセーフティネット」と呼ばれる。比喩として、困っている人に、「魚を与える」のではなく、「魚の釣り方を教える」ことが必要であると言われ、この法律は、後者を目指しているのだが、コロナ禍では、緊急に「魚を与える」必要に迫られている。

(注3)『国民生活基礎調査』にて用いられている相対的貧困率の定義は、世帯可処分所得(世帯内のすべての世帯員の所得を合算)を世帯人数で調整した値(等価世帯所得)の中央値の50%を貧困線として、これを下回る世帯可処分所得の世帯に属する人の割合。
 可処分所得とは、稼働所得、財産所得などから、所得税、住民税、固定資産税および社会保険料を差引き、公的年金、児童手当、生活保護などの社会保障給付を足した値。この方法は、OECDなどで用いられており、国際的に最も普及している相対的貧困率の推計方法。子どもとは17歳以下のもの、現役世代とは世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう。

次のページに続く

【目次】
1. 西東京市の福祉丸ごと相談窓口とは
2. コロナ禍で急増した相談件数
3. 日本における「貧困」の再発見
4. 絶対的貧困と相対的貧困
5. 弱いところへの打撃が大きい
6.コロナ後の暮らし

 

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